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運搬のムダを減らす。動線分析の手順から置き場ルール、回数を減らす4つの手まで

運搬のムダを減らす近道は、まず回数と距離を測ること。動線分析の手順・3定の置き場ルール・回数を減らす4つの手を、法令と国の数字で整理します。

運搬のムダと動線分析と置き場のルールを表す、テーマ色の背景に中央パネルの大きな文字と左右のモチーフを配置したサムネイル画像
28在庫・物流

運搬は、それ自体では付加価値を生まない作業です。原材料や仕掛品を右から左へ動かしても、製品の機能や品質は変わりません。ここでは、工場内でモノを運ぶときに生じる「運搬のムダ」を、数字で見つけて減らす手順をたどります。

それでも現場から消えないのは、置き場と工程の位置関係が離れているからです。運搬のムダを減らす近道は、いきなり配置を変えることではなく、まず「どこを・何回・何メートル運んでいるか」を数字で押さえることにあります。本稿では次の順に見ていきましょう。

  • 動線分析の手順
  • 置き場を決める「3定」のルール
  • 運搬回数を減らす4つの手
  • 効果の測り方

運搬は人が歩いて荷を持つ作業でもあります。動線を詰める前に安全面の最低ラインを共有しておくと、後工程の合意が早くなります。

数値・条文は2026年8月時点で公表・施行されているものです。

運搬は「付加価値を生まない」作業だという前提と安全

運搬は、製品に新しい価値を加えません。そのため他の条件が同じなら、回数と距離を減らすほど原価に効きやすいムダとされます。

生産管理の分野では、運搬・在庫・手待ち・加工そのもの・不良の手直し・作りすぎ・動作のムダを合わせて「7つのムダ」と呼びます。この整理が広く使われてきました。ただし、運搬を急いで減らそうとして通路や置き場を詰めると、今度は安全側のリスクが上がります。

厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」(令和7年5月30日公表)の数値は、次のとおりです。

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区分令和6年の人数
陸上貨物運送事業の休業4日以上の死傷者数16,292人(前年比0.5%増)
陸上貨物運送事業の死亡者数108人
全産業の休業4日以上の死傷者数135,718人(4年連続の増加)

この統計は輸送業の集計です。事故の型別の内訳までは示していません。工場内の構内作業の件数や事故の型を、この数値から直接推定することはできません。

それでも、荷を持って移動する作業には相応の安全管理が求められるという目安にはなります。

注意:労働安全衛生規則(労働災害を防ぐための具体的な決まりを定めた省令)第151条の3は、車両系荷役運搬機械等(フォークリフト等)を用いる作業に限り、場所の広さ・機械の種類・荷の形状に応じた作業計画(運行経路と作業方法)を定め労働者に周知することを事業者に義務付けています。これとは別の規定として、同規則第540条は作業場内の通路を常時有効に保持することを、第543条は機械間・設備間の通路幅を80センチメートル以上とすることを定めています(労働安全衛生規則・e-Gov法令検索)。

まず測る「回数×距離」——動線分析の手順

動線分析は、運搬に絞って「見える化」を行う手法です。

中小企業向けの経営支援サイトを運営する独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21「業務プロセスの見直しによる生産性向上」を見ます。生産性向上の基本を作業工程の「見える化」に置いています。移動時間などのムダを明確にすることが、最初の一歩です。

手順は次の3つです。

  1. 工場のレイアウト図を用意し、対象品目(原材料・仕掛品・完成品のいずれか)を決めます
  2. 担当者が実際に運搬した経路を、その図に線で描き込みます
  3. 同じ経路を往復した線、遠回りした線、交差した線が重なったところを探します

線が重なった図は「スパゲティ図」と呼ばれます。線の重なりが多いところほど、ムダが集中している候補地点です。スパゲティ図とあわせて、次の4つを記録します。

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記録する項目何のために測るか現場での測り方
運搬回数他の条件が同じなら、頻度が高い動きほど削減効果が大きい1日・1週間の作業を実際に数える
運搬距離1回あたりの移動時間の見積もりに使うレイアウト図上で経路の長さを測る
1回あたりの搬送量まとめ運びの余地があるかを見る台車・パレットの積載実績を記録する
待機時間手待ちがムダの主因のことがある搬入・搬出口での待ち時間を測る

言葉で言うと、1回あたりの移動時間に、1日の運搬回数と年間の稼働日数を掛け合わせ、分を時間に直すために60で割ったものが年間の運搬移動時間です。

年間の運搬移動時間(時間)= 1回あたりの移動時間(分)× 1日あたりの運搬回数 × 年間稼働日数 ÷ 60

1回あたりの移動時間が2分、1日30回、年間稼働日数240日だとします。この場合、年間の運搬移動時間は約240時間です。このうち短縮できた分だけが削減時間になります。

工場のレイアウト図の上に、担当者が運搬で歩いた経路を線で描き込んだスパゲティ図。線が何度も交差・往復している箇所に丸印でムダの候補地点を示している
図1 運搬経路を線で描き込むスパゲティ図

置き場を決める「3定」のルール

現場改善で使われる「3定」は、定位置・定品・定量の3つを指します。

ムダの候補地点が見えたら、次は置き場のルールを決めます。定位置はどこに置くか、定品は何を置くか、定量はいくつ置くかを決めることです。3つが揃うと、探す時間や余分な運搬を減らしやすくなります。

置き場の位置は、出荷や使用の頻度で変えます。中小企業基盤整備機構のJ-Net21のビジネスQ&A「煩雑な倉庫内の業務を効率化したいのですがどうすればよいですか」を見ます。回答は、中小企業診断士(国家資格を持つ経営コンサルタント)の大塚真太郎氏です。

このQ&Aが挙げているのは、次の2つです。

  • 入出庫口を分けて動線をU字型にする
  • 出荷頻度に基づいて保管場所を設定する

頻度が高い品目ほど近くに置く考え方は、ABC分析で在庫管理を仕分ける記事の分類とも重なります。

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ルール内容現場での確認
定位置置き場所を品目ごとに決める(複数箇所に置く場合は置き場ごとに明確化)床や棚にテープ・表示で区画を示しているか
定品その区画に置いてよい品目を決める品目名・図番を表示しているか
定量置いてよい上限・下限の数量を決める満量線・発注点を目視で分かる形にしているか

屋内の通路については、労働安全衛生規則第542条が「通路面から高さ1.8メートル以内に障害物を置かない」ことを定めています。区画線は、確保した通路幅の外側に引くのが原則です。

床に点線の区画枠を引いて定位置を示し、その区画に置く品目の箱を並べ、棚の段に数量の目安となる線を1本引いた置き場の図。区画の左側に通路幅を示す両矢印がある
図2 定位置・定品・定量を区画線と表示で示す
補足:置き場のルールが崩れて品目があふれると、動かない在庫が通路脇に積み上がりやすくなります。滞留の判定基準は滞留在庫対策の記事で扱っています。

運搬回数を減らす4つの手

  1. 入出庫口を分けて動線を一方向にする:入口と出口を分け、U字型または一筆書き型の動線にします。すれ違いや逆走を減らしやすくなります
  2. 出荷順を想定して生産・荷造りする:経済産業省・農林水産省・国土交通省「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(2023年6月策定)を見ます。このガイドラインは、出荷時の順序や荷姿を想定した生産・荷造りで荷役時間を短縮することを挙げています。生産順を出荷順に近づけると、仕分けのための再運搬を減らしやすくなります
  3. パレット・マテハン機器で1回あたりの搬送量を増やす:同ガイドラインは、パレットなどの活用と、平面サイズ1,100ミリメートル×1,100ミリメートルのパレットの標準化を挙げています。ローラーコンベア・オリコン・カゴ車などの併用は、前掲のQ&Aが挙げる方法です
  4. 搬入出の待機時間を可視化する:同ガイドラインは荷主事業者に対し、荷待ち・荷役作業などにかかる時間を合計2時間以内とすることを求めています(達成済みなら1時間以内が目標)。この考え方は構内の入出荷口でも応用できます。まず時間で手待ちを把握します
専門家への確認:動線や置き場を変更するときは、法令上必要な避難経路や消火設備の使用に必要なスペースを塞いでいないかを、防火管理者または所轄消防署へ確認してください。

効果はどう測るか

改善の前後は、運搬回数・運搬距離・移動時間の3つを比べます。比べるときの条件は、同じ品目・同じ生産量に揃えてください。

回数と距離が減っても、1回あたりの移動時間が伸びていれば相殺されます。三つを揃えて見ましょう。金額に換算するときは、削減できた運搬移動時間に、担当者の1時間あたりの人件費を掛けて求めます。

削減できる金額(円)= 削減できた運搬移動時間(時間)× 担当者の1時間あたりの人件費(円)

この形にすると社内で共有しやすくなります。

前掲のJ-Net21「業務プロセスの見直しによる生産性向上」は、問題発見・対策・成果評価・さらなる改善というPDCAを循環させることで、収益性が継続的に高まるとしています。動線分析も、一度で終える改善ではありません。担当を決めて記録を残し、レイアウトや生産計画が変わるたびに測り直します。

段取り替えの外段取り化も「動きを分解して記録する」改善です。手順は段取り時間を短縮する記事で扱っています。運搬・在庫・物流の論点は在庫・物流のテーマでまとめています。

よくある質問

スパゲティ図は誰が作ればよいですか

実際に運搬している作業者本人が描くと、記憶に頼らない実測の図になります。生産技術や保全の担当者が同席し、レイアウト図と時計を用意して記録してください。そうすると、後で見直すときの条件(対象品目・時間帯・生産量)を残しやすくなります。

3定と5Sの違いは何ですか

5Sは整理・整頓・清掃・清潔・しつけという活動全体の枠組みです。3定は、そのうち整頓を具体化する手法という位置づけになります。

3定を決めても清掃としつけが伴わなければ、区画表示が守られなくなります。両方を合わせて運用してください。

運搬回数を減らす投資はどこから始めるべきですか

入出庫口の分離や動線の見直しは、比較的小さな投資で着手できます。すでにある開口部や区画表示を使えるときです。ただし建屋改修や防火設備の変更を伴うときは、費用が変わります。

パレットやマテハン機器の標準化は初期費用がかかります。動線分析で運搬回数・距離が最も大きい経路から、優先順位をつけて検討します。

まとめ

  • 運搬は付加価値を生まない作業です。通路幅の確保と、フォークリフト等を用いる作業の作業計画・周知義務は、労働安全衛生規則の別々の規定です。安全の前提を先に確認します
  • 動線分析は「見える化」の一手法です。運搬回数・距離・搬送量・待機時間を実測し、スパゲティ図で交差・往復の多い箇所を洗い出します
  • 置き場は「定位置・定品・定量」の3定で決めます。区画線は原則として通路幅の外側に引き、出荷頻度で保管場所を決めます
  • 運搬回数を減らす4つの手は、動線の一方向化、出荷順を想定した生産・荷造り、パレット・マテハン機器の標準化、搬入出の待機時間の可視化です
  • 効果は運搬回数・距離・移動時間を同条件で比較し、担当を決めてPDCAとして測り直します
  • #運搬のムダ
  • #動線分析
  • #3定
  • #構内物流
編

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