棚卸資産の評価方法の届出は、期末在庫をどの方法で金額に直すかを税務署へ知らせる手続です。対象になるのは、材料、仕掛品、製品、商品など、決算で棚卸資産として残るものです。結論は、普通法人の新設では設立第1期の申告期限までに、評価方法を選んで届け出ます。
届出を出すか迷ったら、まず経理担当者や税理士と、いまの評価方法、届出の有無、在庫区分を同じ表で確認してください。現場側だけで「いつもの単価」を変える話ではありません。
この記事では、法人向けの国税庁手続と法人税法施行令をもとに、提出期限、選べる方法、未提出時の扱い、変更時の注意点を整理します。個別の税務判断は、顧問税理士または所轄税務署へ確認してください。

届出は「数量」ではなく「金額に直す方法」を選ぶ手続
棚卸しでは現物の数を確認します。評価方法の届出では、その数量を決算上の金額に直す方法を選びます。数量の調査と、評価方法の選定は分けて考えます。
国税庁の「棚卸資産の評価方法の届出」手続ページは、棚卸資産の評価方法を選定して届け出る場合の手続と説明しています。手続対象者は、棚卸資産の評価方法を選定して届け出る法人です。
法人税法施行令第29条第1項は、評価方法の選定単位を定めています。内国法人の行う事業の種類ごと、かつ資産の区分ごとに選ばなければなりません。
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| 確認項目 | 現場で見るもの | 経理へ聞くこと |
|---|---|---|
| 商品・製品 | 完成品、販売待ち品 | 同じ方法でまとめる範囲 |
| 半製品・仕掛品 | 工程途中のもの | 工程別に分ける必要性 |
| 主要原材料・補助原材料など | 材料、部品、貯蔵品 | 材料群ごとの方法 |
この表は届出書そのものの記載欄ではなく、社内確認用の整理です。実際の届出書は国税庁の様式と記載要領に従います。評価方法の選定では、第29条第1項に掲げる各区分を区別して確認してください。
棚卸差異のように、帳簿と現物の数量が合わない問題は別です。数量差の切り分けは、棚卸差異の原因を4つに分ける手順で扱っています。
普通法人の新設なら、設立第1期の確定申告期限まで
提出期限は、法人の状態によって変わります。一般的な新設の普通法人では、設立第1期の確定申告書の提出期限までです。
国税庁の手続ページは、普通法人を設立した場合の提出時期を、設立第1期の確定申告書の提出期限までとしています。ここで示す期限は、普通法人を新設した場合のものです。
同じページでは、公益法人等が新たに収益事業を開始した場合、公共法人が収益事業を行う公益法人等に該当することとなった場合、設立後に他の種類の事業を開始または変更した場合も分けて示されています。
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| 場面 | 期限の見方 | 確認相手 |
|---|---|---|
| 普通法人を設立 | 設立第1期の確定申告書の提出期限まで | 税理士・経理 |
| 収益事業を開始 | 国税庁の該当手続区分で確認 | 税理士 |
| 事業種類を追加・変更 | 国税庁の該当手続区分で確認 | 税理士・事業責任者 |
選定した評価方法は、国税庁の様式・記載要領を確認し、書面で納税地の所轄税務署長へ届け出ます。
現場で新しい製品群や材料群が増えたときは、棚卸表の列を増やすだけで終わらせないでください。事業の種類や資産区分として、評価方法の確認が必要になる場合があります。
選べる方法は原価法6種類と低価法に分かれる
法人税法施行令第28条第1項は、選定できる棚卸資産の評価方法を定めています。大きく見ると、原価法と低価法です。
原価法には、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法があります。第28条第1項は、原価法と低価法を定めています。
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| 方法 | ざっくり見る点 | 現場で用意する情報 |
|---|---|---|
| 個別法 | 個別の対応を確認 | 個品管理と原価の対応 |
| 先入先出法 | 取得時期を確認 | 入出庫と取得時期の記録 |
| 総平均法・移動平均法 | 平均計算の材料を確認 | 数量と取得価額の履歴 |
| 最終仕入原価法 | 直近取得の記録を確認 | 直近仕入の単価 |
| 売価還元法・低価法 | 販売価額や期末価額を確認 | 販売価額、値下がり情報 |
どの方法がよいかは、品目の性質、原価計算の粒度、帳簿やシステムで取れる情報によります。現場では、使いたい方法を先に決めるより、その方法を継続して支える記録があるかを確認するほうが実務的です。
在庫の金額を経営指標へつなげるなら、在庫回転率も一緒に見ます。計算式と棚卸資産の3区分は、在庫回転率を上げるときの見方にまとめています。
未提出時は、選定状況と法定評価方法を確認する
届出が見当たらない場合でも、すぐに一つの結論へ飛ばさないでください。まず評価方法を選定していたか、選定した方法で評価していたかを確認します。
法人税法施行令第31条第1項は、評価方法を選定しなかった場合などの扱いを定めています。その方法は、施行令第28条第1項第1号ホの最終仕入原価法により算出した取得価額による原価法です。
届出の有無と、実際に選んだ方法・申告で使った方法は分けて見ます。自社が実務上、別の平均単価で管理している場合は、税務上の評価方法と社内管理単価がずれていないかを確認してください。
ABC分析のように、金額の大きさで管理頻度を変える手法もあります。ただし、評価方法の届出とは別論点です。品目ごとの管理の厚みは、ABC分析で在庫管理を仕分ける考え方を参照してください。
変更したいときは、届出ではなく承認申請が基本になる
一度選んだ評価方法を変えるときは、最初の届出と同じ感覚で進めないでください。変更には承認が関わります。
法人税法施行令第30条第1項は、棚卸資産について選定した評価方法を変更しようとするとき、納税地の所轄税務署長の承認を受けなければならないと定めています。
同条第2項は、承認を受けようとする法人について、新たな評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、申請書を提出する、としています。
期末に利益や在庫金額を見てから、都合のよい方法へ変える運用はできません。変えたい理由があるなら、事業年度が始まる前に、現場の在庫管理、経理処理、税務上の手続を合わせて検討します。
変更時は、希望する方法に加え、品目の増減、原価計算の変化、システムで取れる履歴、管理単位の変更も伝えます。経理と税理士が、変更理由を説明できる材料として使います。
現場・経理・税理士で見るチェックリスト
届出の判断は、現場の棚卸表だけでは終わりません。次の順で確認すると、話が混ざりにくくなります。
- 対象在庫を分ける:製品、仕掛品、主要原材料、補助原材料などに分けます
- 評価方法を確認する:届出済みの方法、選定状況、申告で使った方法を確認します
- 記録が支えるかを見る:取得時期、数量、単価、販売価額などが継続して取れるかを見ます
- 期限を確認する:新設、事業追加、変更申請のどれに当たるかを分けます
この順序にすると、現場が決めることと、税務手続で決めることを分けられます。棚卸しの担当者は、評価方法の名前を暗記するより、必要な記録がどこにあるかを説明できる状態にしてください。
在庫・物流の論点は、在庫・物流のテーマページにまとめています。
よくある質問
届出を出していないと、すぐ違反になりますか
届出義務の有無と、適用される評価方法は分けて確認します。第29条第2項は該当法人に届出を求め、第31条第1項は未選定などの場合の法定評価方法を定めています。未提出時の具体的な対応は、自社の選定・届出・申告状況を税理士に確認してください。
製造現場で使う標準原価と同じですか
同じとは限りません。標準原価は現場管理や原価差異を見るために使うことがあります。一方、この記事で扱う評価方法は、法人税の期末棚卸資産の評価に関わる手続です。用途を分けて確認します。
評価方法を変えれば在庫金額を下げられますか
評価方法の変更は、所轄税務署長の承認が必要です。新しい方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに申請するのが基本です。期末の数字を見てから在庫金額を下げるために変える、という使い方はしないでください。
まとめ
- 棚卸資産の評価方法の届出は、在庫数量ではなく、期末在庫を金額に直す方法を選ぶ手続
- 普通法人の新設では、設立第1期の確定申告書の提出期限までに届け出る
- 評価方法は、事業の種類ごと、資産区分ごとに選ぶ
- 届出が見当たらないときは、選定状況と申告で使った方法を確認し、法定評価方法との関係を税理士へ確認する
- 評価方法を変更したいときは、原則として事業年度開始前の承認申請を確認する
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。