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滞留在庫対策。判定基準から処分・転用・値引きの判断、発注ルールの見直しまで

滞留在庫対策を判定基準から処分・転用・値引きの判断、発注ルール見直しまで一次情報で整理します。

麦色の背景を左右に分け、左側に時計の針が止まった棚の箱とオレンジの下向き矢印、右側に「滞留在庫対策」「判定・処分・再発防止の手順」の文字を配置したサムネイル画像
17在庫・物流

棚卸資産(「製品・商品」「仕掛品」「原材料」の総称)のうち、一定期間、出荷や消費が止まっている在庫が「滞留在庫」です。以下では、その滞留在庫をどう見つけて片づけるかを順に整理します。棚卸のたびに同じ棚の同じ箱が動いていない、という状態に心当たりがあれば、それは在庫の量の問題ではありません。「止まっている在庫」を見分ける仕組みがない、という問題です。

滞留在庫の対策は、次のような順序で進めていきます。

  1. まず、何をもって「滞留」とみなすかを数字で決める
  2. 次に、処分・転用・値引きのどれを選ぶかを判断する
  3. 最後に、同じ品目を積み上げない発注の仕組みに戻す

このうち、税務上の「評価損」については次のとおりです。税務上の扱いは制度が細かいため、ここでは公的な原典で確認できる範囲だけにとどめます。実際の処理については、税理士に確認する前提で読み進めてください。在庫・物流に関する他のテーマは在庫・物流にまとめています。

まず確認する数字——滞留の判定基準

直近の最終出荷、つまり最終出庫からの経過期間を目印にして、棚卸のたびに段階的な管理を行うという考え方です。ここで参照した公的資料を見るかぎり、すべての在庫に共通するような一律の滞留期間の定義は、特に見当たりません。ここでいう在庫、つまり棚卸資産は、財務省 財務総合政策研究所「キーワードで見る法人企業統計:在庫投資」の整理によるものです。「製品・商品」「仕掛品」「原材料」の総称を指します。

原材料の段階で止まっているのか、製品になってから動いていないのかによって、確認するべき部署が変わります。まず、どこで止まっているかを押さえてください。現場で使える判定基準としては、中小企業基盤整備機構(中小機構)「J-Net21」不動在庫の対処方法・回避策が参考になります。品目ごとに最終出庫日からの経過月数を記録しておき、一定の期間を超えたものから順に、扱いを変えていきましょう。

経過期間を測るには、その前提として「いつ・何が・何個動いたか」を記録しておく入出荷台帳が必要です。台帳がなければ経過期間も出せません。同機構のJ-Net21「現場での在庫管理の方法と適正な在庫量の考え方」は、在庫管理の基本について、次のような3つの段階で説明を行っています。

  1. 置き場所を明確に決める
  2. 入出荷のたびに記録する
  3. 生産のリードタイムを短くする

記録がなければ、最終出庫日を基準にした客観的な滞留判定は難しくなります。まだ台帳が紙やExcelで断片的にしか残っていない場合は、判断表に進む前に、この記録を揃える作業が先です。言葉で言うと、棚卸をした日から最終出庫日を引いた日数が、滞留日数の目安になります。品目ごとに算出し、経過月数で並べてください。

滞留日数の目安 = 棚卸日 - 最終出庫日(品目ごとに算出し、経過月数で並べる)

経過月数で並べた一覧ができたら、金額の大きい品目だけでなく、欠品のときに生産を止めてしまう部品や、調達に時間のかかる品目についても別枠で確認します。動きが止まっていても供給が不安定な品目については、廃棄や値引きの判断を急がず、生産技術・購買の双方で扱いを相談する対象として残しておくのが安全です。金額だけで並べ替えないでください。

品目の重要度そのものに応じて管理のやり方を分けたいという場合は、ABC分析で在庫管理を仕分ける方法もあわせて参考にしてください。

処分・転用・値引き、どう判断するか

経過期間で品目を並べたら、次は個々の在庫をどう処理するかを決めます。判断の軸は経過期間です。J-Net21が示す考え方は、期間が延びるほど保有数量の上限を段階的に引き下げていく方式です。たとえばJ-Net21は、次のような段階的な引き下げの例を示しています。

  1. 1年間出荷がなければ、在庫数量の上限を5個まで下げて超過分を廃棄する
  2. さらに1年出荷がなければ、上限をもう3個下げる(この例では残り2個)

複数年かけて段階的に保有数量を絞り込んでいく考え方です。一度にまとめて捨てるのではなく、経過期間に応じて機械的に上限を下げていく点が、実務ではやりやすいところです。J-Net21が示す数値はあくまで一例であり、自社の基準として採用する場合は、品目の特性に応じて期間・数量を決めます。

最終出庫からの経過期間を横軸にし、出荷なしのまま1年経過で在庫上限を5個に、さらに1年経過で上限を2個に段階的に引き下げていく考え方を示す図(J-Net21の数値例。自社基準は品目特性に応じて設定する)
図1 最終出庫からの経過期間に応じて保有数量の上限を段階的に引き下げる考え方

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選択肢向いている状況確認すること
転用仕様が近い別製品・別ラインで使える/代替品として使用できる設計・品質保証への確認、図面・仕様書との照合
値引き・売却市場性は残っているが定価では動かない/季節性が外れた販売条件の確認、取引先への打診、帳簿価額との差額の把握
廃棄転用先がなく、品質変化・型式陳腐化で通常の方法では販売・使用できない廃棄記録の保存、帳簿と現物を一致させる処理

どの選択肢を取るにしても、理由を「余った」で終わらせず記録に残すことが、次の再発防止につながります。「余った」だけでは次に活かせません。設計変更で不要になったのか、発注ロットが大きすぎたのか、需要が想定より落ちたのかを品目ごとに分類しておくと、後で発注ルールを直すときの材料になります。

注意:棚卸資産の評価損を法人税の計算上の損金に算入できる事実は、法人税法施行令第68条第1項第1号が定めています。国税庁 法人税基本通達「第2款 棚卸資産の評価損」は、この事実の解釈と例を次のとおり示しています(2026年8月時点の掲載内容)。

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区分該当する事実根拠(要旨)
イ災害による著しい損傷法人税法施行令第68条第1項第1号が定める事実
ロ著しい陳腐化通達9-1-4:経済的な環境の変化により価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態。季節商品が今後通常の価額で売れないことが実績から明らかな場合や、性能・品質の異なる新製品の発売で従来品が通常の方法で販売できなくなった場合が例
ハイ又はロに準ずる特別の事実通達9-1-5:破損・型崩れ・たなざらし・品質変化等により通常の方法で販売できなくなったこと
通達9-1-6は、単に物価変動、過剰生産、建値の変更で時価が下がっただけでは、この事実に当たらないと注意しています。値引き販売そのものが自動的に税務上の評価損になるわけではありません。具体的な計上時期や処理を含め、損金算入の可否は税理士に個別に確認してください。

再発防止——発注ルールと設計変更をつなぐ

処分・転用・値引きは、いわば対症療法にすぎません。同じ品目が繰り返し滞留してしまう場合は、発注数量や生産数量を調整する仕組みや、現場での管理、設計変更のときの連携などを、改めて見直しておく必要があります。J-Net21は、防止策として次の2つを挙げています。

  1. 生産部門・購買部門が需要動向を見て、発注数量・生産数量を迅速かつ柔軟に抑制する仕組み
  2. 倉庫だけでなく営業拠点・店舗を含めた、現場レベルでの管理徹底

まとめ買いによる数量割引や、欠品を避けるための多めの発注が、結果として滞留を生んでいないかを定期的に見直す仕組みが必要です。

  • 発注点の見直し:最終出庫日と発注数量をひもづけて記録し、動きの止まった品目の発注点を止める、または引き下げる
  • 設計変更との連携:設計変更や仕様統合が決まった時点で、旧仕様の残在庫数量を購買・生産管理に共有する手順を作る
  • まとめ発注の見直し:数量割引を理由にした発注ロットの拡大が、実際の消費ペースに対して過大でないか棚卸時に確認する

設計変更についての情報の共有が発注に間に合わないと、旧部品をまた追加で発注してしまうという食い違いが起こり得ます。口頭の連絡だけでは残りません。設計変更の決定と購買側の発注停止のタイミングを合わせる手順を、記録として残す形にしておくと、同じ滞留を繰り返しにくくなります。

生産計画の切り替え頻度が高い工程では、段取り替え時間を短縮する手順とあわせて発注のタイミングを見直すとよいでしょう。切り替えのたびに旧仕様の在庫が積み上がる状態を避けやすくなります。

発注、入庫、出庫記録、滞留マーカーの確認、発注点の見直しという5つの工程が円環でつながっているループ図
図2 発注ルールを見直すための記録のループ

現場で確認すること——誰に何を聞くか

滞留在庫の処理は一つの部署だけで完結しません。処分・転用・値引きの判断表を回すときは、次のように役割を分けて確認すると迷いにくくなります。

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確認先聞くこと
設計・品質保証転用の可否、仕様変更の履歴、代替品としての妥当性
購買返品・交換の可否、仕入先への相談余地、発注ロットの見直し余地
経理・税理士評価損として損金算入できる要件に当たるか、帳簿価額との差額の処理方法

特に経理・税務の判断は、社内だけで決めずに確認する前提で進めるのが安全です。自社だけで結論を出さないでください。個別の在庫が、上で見た法人税法施行令の定める事実に当てはまるかどうかを、実務のなかで判断する必要があるためです。

よくある質問

滞留在庫とデッドストックは同じ意味ですか。

ここでは、特に区別せずに扱っています。共通しているのは「一定期間、出荷や消費が止まっている在庫」を指すという点です。判定の目印として使うのは、J-Net21が示す最終出庫からの経過期間です。参照した公的資料には、すべての在庫に共通するような一律の滞留期間の定義は見当たりません。まず、経過期間の基準を自社で数字で決めてください。

滞留在庫を値引き販売すれば、税務上の評価損として処理できますか。

値引き販売だけでは、評価損になりません。国税庁の通達9-1-6は、単なる物価変動や過剰生産、建値の変更で時価が下がっただけでは、評価損計上ができる事実に当たらないとしています。税務上の評価損を検討できるのは、法人税法施行令第68条第1項第1号が定める事実に当てはまる場合に限られます。

当てはまる事実の詳しい中身については、前段の注意(イ・ロ・ハの3区分)で示したとおりです。具体的にいつ計上するか、どう処理するかを含め、損金に入れられるかどうかは税理士に確認してください。

滞留在庫の再発を防ぐには、まず何から手をつければよいですか。

まず、最終出庫日を正確に確認できる記録を整えてください。それが最初の一歩です。記録が揃ったら、動きの止まった品目については、発注点を止めたり引き下げたりします。設計変更の情報を購買・生産管理へ共有していく手順も、あわせて整えていきます。上で示した判断表・見直し項目に沿って、一つずつ進めるとよいでしょう。

まとめ

  • 滞留の判定は、最終出庫日からの経過期間を品目ごとに記録することから始める
  • 処分・転用・値引きは、設計・品質保証や購買を含めて確認先を分けて判断する
  • 税務上の評価損は自動的に成立するものではなく、法人税法施行令が定める事実に当てはまるかを税理士に確認する
  • 再発防止には、発注数量・生産数量を柔軟に調整する仕組み、現場管理の徹底、そして設計変更の情報を購買・生産管理へ届ける仕組み化が重要
  • #滞留在庫
  • #デッドストック
  • #在庫評価損
  • #発注点
  • #在庫管理
編

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