倉庫のレイアウトとは、棚・通路・荷の置き場をどう配置するかの決め方です。自社の工場に資材置場や製品倉庫があり、フォークリフトや台車が入るなら、この記事の対象に入ります。
改善というと、棚の並べ替えや棚番の振り直しから入りがちです。順序は逆です。先に法令上の要件と建物の制約を確認し、その条件に沿って保管と作業へ面積を配るほうが、図面の描き直しが減ります。通路の幅、通路の上の空間、荷を積むときの要件、床の設計上の荷重条件。この4つの条件を満たすことを前提に、配置を検討します。
ここでは、確認すべき要件を条文から拾い、そのうえで残る面積を保管と作業へ配る順序を追います。最後に、図面を引く前に揃える4つの情報を置きます。
先に確認する要件——通路と床は条文に基準がある
通路に必要な条件は、棚を並べる前に確認できます。労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。働く人の安全と衛生の具体的な基準を定めた省令です)が、屋内の通路について3つのことを求めています。
第542条は、屋内に設ける通路を「用途に応じた幅」とし、通路面をつまずき・すべり・踏抜の危険のない状態に保つことを求めます。もう1つ、見落とされやすいのが第3号の規定です。e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」の同号は、通路面から高さ1.8メートル以内に障害物を置かないことを求めています。床の面積だけでなく、通路の上の空間も空けておく必要があります。
第543条は数値を1つ示します。機械と機械の間、または機械と他の設備との間に設ける通路は、幅80センチメートル以上です。ここは最低線です。
迷いやすいのは第542条の「用途に応じた幅」です。数値がないので、現場ごとに決めることになります。決め方の手がかりは、その通路を何が通るかです。人だけが歩くのか、台車が入るのか、フォークリフトがすれ違うのか。通路ごとに通る対象を書き出すと、幅の根拠を残せます。
事故の型別の死傷者数(休業4日以上・全産業)
※ 集計条件と編集部による算出方法は記事末の注記を参照
データを表で見る
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| 事故の型 | 死傷者数(人) |
|---|---|
| 転倒 | 36,378 |
| 動作の反動・無理な動作 | 22,218 |
| 墜落・転落 | 20,699 |
| その他 | 56,423 |
厚生労働省が2025年5月30日に公表した令和6年の労働災害発生状況では、休業4日以上の死傷者数は135,718人でした。上の3類型を足すと79,295人で、全体の約58パーセントを占めます。集計の条件と算出方法は記事末の注記にまとめました。
床の荷重条件も先に確認する
棚を高くして単位面積あたりの保管量を増やすと、床にかかる重さが増えます。建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第85条は、建築物の各部の積載荷重を「実況に応じて計算する」と定めています。そのうえで第3項に、倉庫だけの規定があります。
倉庫業を営む倉庫の床は、実況に応じて計算した数値が1平方メートルにつき3,900ニュートン未満でも、3,900ニュートンとしなければならない。ここで注意したいのは「倉庫業を営む倉庫」という限定です。営業倉庫が対象であり、自社の工場内にある資材置場は、この第3項ではなく第1項の実況に応じた計算によります。
ニュートンのままでは現場で使いにくいので、質量に直します。
この式で計算すると、3,900N/m²は質量換算で約398kg/m²に相当します。第1項の表にある事務室の床の構造計算用の値は1平方メートルにつき2,900ニュートンで、質量換算では約296kg/m²です。
これらは構造計算用の値で、そのまま保管できる重量を示すものではありません。既存床への配置の可否は、棚や荷の重量と荷重のかかり方を含めて、設計図書をもとに設計者へ確認してください。
積み方の要件——高さ・作業内容・荷姿で変わる
荷を積むときの要件は、高さだけでは決まりません。ここで使う「はい」とは、倉庫・上屋・土場に積み重ねられた荷の集団のことです。小麦・大豆・鉱石のようなばら物は含まれません。パレット積みの製品や原材料も、はいに該当する場合があります。
1つ目の線が1.5メートルです。労働安全衛生規則第427条は、はいの上で作業するとき、作業箇所の高さが床面から1.5メートルを超えるなら、安全に昇降できる設備を設けることを求めます。はいを構成する荷で安全に昇降できる場合は除かれます。
2つ目の線が2メートルです。労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第6条第12号は、高さが2メートル以上のはいの、はい付けまたははい崩しの作業を、作業主任者を選任すべき作業に挙げています。これを受けて同規則第428条が、はい作業主任者技能講習を修了した者から、はい作業主任者を選任することを求めます。ただし、荷役機械の運転者のみによって行われる作業は第12号から除かれています。
3つ目が、はいとはいの間隔です。同規則第430条は、床面からの高さが2メートル以上のはいについて、隣接のはいとの間隔を、はいの下端で10センチメートル以上とすることを求めます。ただしこの条文の対象は、容器が袋・かます・俵である荷で構成されるはいだけです。
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| 適用条件 | 根拠 | 必要になること |
|---|---|---|
| はいの上での作業箇所が床面から1.5メートル超(荷で安全に昇降できる場合を除く) | 安衛則第427条 | 安全に昇降するための設備 |
| 高さ2メートル以上のはいの、はい付け・はい崩し作業(荷役機械の運転者のみの作業を除く) | 安衛令第6条第12号・安衛則第428条 | はい作業主任者の選任 |
| 高さ2メートル以上で、容器が袋・かます・俵である荷で構成されるはい | 安衛則第430条 | 隣接のはいとの間隔を下端で10センチメートル以上 |
この3つが、レイアウトの検討に直接効いてきます。積み高さを上げれば、同じ床面積で置ける量は増える計算です。一方で、昇降設備の置き場所、主任者を置ける作業体制、はいの間の隙間が必要になります。そのため、高く積むほど得だとは言い切れません。
適用は高さだけで決まらず、上表の作業内容・荷姿・除外条件を組み合わせて判断します。自社の荷がどれに当たるかを確かめる手がかりは、作業のしかたと荷の容器です。棚割りを変えるたびに調べ直さずに済むよう、荷姿ごとに当てはまる条件を一覧にしておくと扱いやすくなります。

残った面積をどう配るか
保管スペースと作業スペースは、同じ面積を分け合います。通路と積み方の要件を確認すると、配分を検討できる面積が見えてきます。その面積を棚に回すか通路に回すかを、条件を並べて比べることになります。
どちらへ寄せるかの分かれ目は、その倉庫が何で詰まっているかです。通路への仮置きや歩数の増加について、まず原因を確認してから配分を決めます。仮置きの原因は保管面積の不足だけではありません。入出荷の集中や滞留が背景にある場合もあります。
判断材料になるのは、品目ごとの出庫頻度です。出庫の多い品目を出口の近くへ寄せる分類の基準は、ABC分析で在庫管理を仕分ける方法にまとめました。
歩数や運搬回数をどう測るかは、動線分析の手順として運搬のムダを減らす動線分析と3定のルールで扱いました。現状の動線を数字にしないまま図面を引くと、変わったかどうかを後から確かめられません。先に測ってください。
順序としては、配る前に減らせないかを見ます。長く動いていない在庫について、処分・転用の可否を判断し、実際に空けられる面積を確かめます。判定の基準と処分・転用の判断は、滞留在庫対策の進め方で扱いました。在庫・物流のテーマ全体は在庫・物流の記事一覧から追えます。
配分をどこで止めるかも先に決めておくと、議論が長引きません。通路を削って棚を足す案は、必ず第542条と第543条に戻して確かめます。要件を割り込んだ時点で、その案は候補から外れます。安全の要件は、保管量との取引材料ではないからです。
面積の配分にはトレードオフが生じる場合がありますが、在庫削減や配置変更で保管効率と作業効率を同時に改善できる場合もあります。
レイアウトの自由度は、図面を引く前にすでに絞られています。絞られた条件を確認せずに配ると、描き直しにつながるおそれがあります。
- 通路の幅と、通路面から1.8メートルまでの空間を確保する
- 設計図書をもとに、予定する保管重量と配置の可否を設計者に確認する
- 積み高さと作業内容と荷姿から、昇降設備・主任者・はいの間隔の要否を確認する
- 在庫の処分・転用によって実際に空けられる面積を、配分の対象に反映する
- そのうえで、出庫頻度の高い品目から出口の近くへ配置する
図を描く前に揃える4つの情報
図面ではなく、現場で確かめた情報から始めます。竣工図の通路幅と、実際に歩ける幅は違います。棚の脚、仮置きのパレット、消火器、キャスター付きの台。これらが入って、実測値は図面より狭くなります。
次の4つを先に揃えると、レイアウト案を比べられるようになります。通路幅と積み高さは現場で測り、床の荷重条件と出庫頻度は図書や実績データで確認します。
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| 揃える情報 | 取り方 | 誰に聞くか |
|---|---|---|
| 通路の実測幅と、通路面から1.8メートル以内の障害物 | メジャーで最も狭い箇所を測る。配管・照明・棚の張り出しも見る | 安全衛生の担当者 |
| 床の設計上の積載荷重(N/m²)と設計条件 | 建物の設計図書で確認する。転用した建物は特に確認する | 建物の所有者・設計者 |
| 現在と変更案の積み高さ、はいの上での作業箇所の床面からの高さ、作業方法、荷の容器 | 現状を実測し、変更案の高さと作業方法を記録する。適用条件は前掲の表と照合する | はい作業主任者・現場責任者 |
| 品目別の出庫頻度(直近12か月) | 出庫実績を品目ごとに集計する | 生産管理・出荷担当 |
4つ目は現場では測れません。出庫実績のデータが要ります。集計の粒度は品目単位で十分です。金額ではなく回数で数えると、動線の議論に直接つながります。
測るタイミングにも気をつけたいところです。入出荷の少ない日に測ると、仮置きが出ていない状態の幅を拾ってしまいます。荷が最も溜まる曜日や時間帯を選んで、そのときの実測幅を記録します。繁忙時の最小実測幅を、用途に応じて必要と判断した幅と比べ、不足する箇所を改善の対象にします。
情報が揃ったら、案を2つ以上作って比べます。1案だけでは、保管と作業のどちらへ寄せたのかが見えません。比較のときは、確保した通路幅と、置ける総量の両方を並べてください。

よくある質問
通路幅は80センチメートルあれば足りますか
労働安全衛生規則第543条の80センチメートル以上は、機械と機械の間などに設ける通路についての規定です。屋内に設ける通路一般について、第542条は「用途に応じた幅」と定めており、数値は示していません。フォークリフトを通す通路の幅について、これらの条文は一律の数値を定めていません。使用車両・荷姿・運用条件を整理し、メーカー資料や現場での走行・旋回の確認をもとに必要な幅を検討します。
高さ2メートルまでなら、はい作業主任者は要りませんか
労働安全衛生法施行令第6条第12号の対象は、高さが2メートル以上のはいのはい付け・はい崩し作業です。2メートルちょうどは「2メートル以上」に含まれます。主任者の選任対象となる作業と除外条件は、本文の「適用条件」表で確認してください。2メートル未満でも、同表の別の条件により昇降設備が必要になる場合があります。
自社の工場内にある資材倉庫も、床は1平方メートルあたり3,900ニュートンで考えるのですか
建築基準法施行令第85条第3項は「倉庫業を営む倉庫」を対象にした規定です。自社で使う資材置場は、同条第1項の実況に応じた計算によります。実際にどの条件で設計されているかは建物ごとに違うため、設計図書または所有者に確認してください。
まとめ
- 通路は、幅だけでなく通路面から1.8メートルまでの空間も空ける(安衛則第542条)。機械間などの通路は幅80センチメートル以上(同第543条)
- はい作業は、高さ・作業内容・荷姿に応じて必要な対応を確認する。昇降設備、はい作業主任者、はいの間隔で条件がそれぞれ違う
- 床の積載荷重は実況に応じた計算が原則。1平方メートルにつき3,900ニュートンの下限は倉庫業を営む倉庫の規定で、既存床に置ける重量は設計者に確認する
- 要件を確認した後の面積は、保管と作業で分け合う。原因を確かめてから、出庫頻度を判断材料にする
- 図面ではなく実測と資料から始め、案は2つ以上作って通路幅と総保管量の両方で比べる
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。