Xbar-R管理図(エックスバー・アール管理図)は、同じ工程で測った寸法や重さを時間順に見て、平均の動きと群内のばらつきを分けて確認する二枚組のグラフです。Xbarは一群の平均、Rは一群の最大値と最小値の差を表します。不良品の個数は別です。使う管理図も変わります。
最初に同条件の測定値を群に分け、各群の平均とRを求めます。管理限界を引いたらRを先に見て、安定している場合にXbarを確認します。管理限界は工程の変化を調べる線であり、製品の合否を決める規格値ではありません。
まず、Xbar-R管理図が対象とするデータを選ぶ
Xbar-R管理図は、長さや重さなど連続して測れる「計量値」に使います。JEED基盤整備センター掲載の機械検査の品質管理教材は、群の平均をXbar、群の範囲をRとして、二つの管理図で平均と分布範囲を見ます。不適合品の個数や不良率は計数値で、p管理図やnp管理図など別の方法を選びます。
測定値が一回に一つしかない場合も、Xbar-Rをそのまま当てはめません。米国NISTの統計ハンドブックのXbar-R管理図の説明は、少数の測定値を一群にする方法を示しています。測定のタイミングや群の大きさを先に決め、変わったときは記録してください。群の条件を揃えることが出発点です。
←→ 横にスクロールできます
| 記録したいもの | 最初に選ぶ考え方 |
|---|---|
| 同じ工程の寸法・重さを一度に数個測る | Xbar-R管理図で群平均と群内の幅を見る |
| 一度に一個だけ測る | 個々の値を扱う管理図を検討する |
| 不良個数・不良率を数える | 計数値用の管理図を検討する |
工場長は「何の工程の、何の測定値を、いつ、いくつ取るか」を品質担当と先に決めます。混ざった製品や測定器の値を一枚の図に載せる前に、同じ条件として比較できるかを確認します。
例えば切削ラインの外径を追うなら、品番、加工設備、測定位置、測定器を揃えます。品番ごとに狙い寸法が異なる値を一つの線に重ねると、工程の揺れと品番差の区別が難しくなります。仕様が切り替わった時間を記録し、必要なら図を分けます。まず品番を見ます。
一群の取り方を決め、時間順に測定値を並べる
群とは、同じタイミングや条件で集めた測定値のまとまりです。例えば同じ設備で一時間ごとに製品五個の外径を測り、その五個を一群とします。日科技連の管理図の活用資料には、一日五個を一群として25日分を集める例があります。群をどう作るかで、見える変動が変わります。
一日を一群にするなら、採取時刻が一日の変動を代表できるか確かめます。特定の時刻付近で五個採るだけでは、日内全体の変動は見えません。群と群の間では、日間の変化を調べます。設備が違う値を無造作に同じ群へ入れると、調べたい工程の変化が隠れます。製品、設備、測定器、測定位置、時刻を記録し、条件を変えた境目に印を付けます。
日科技連の資料は、群の大きさを二〜六個、できれば四〜五個、群の数を20〜25以上の目安としています。この数字は同資料の作図例に沿った指針です。自社の測定頻度や工程の切り替わりに合わせ、品質担当と運用条件を決めてください。
一群の中で材料や設定値が変わると、Rは通常の短い時間のばらつき以外も含みます。逆に長い期間のデータを無理に同じ群にすると、変化した時点が見えなくなります。群は「どの条件を同じとみなすか」という現場の判断なので、記録票にもその定義を残します。ここが肝心です。

各群の平均とRを計算し、管理限界を引く
一群に五個の測定値があれば、その合計を五で割ったものが群平均です。Rは、その群の最大値から最小値を引きます。例えば架空の外径が9.98、10.00、10.01、10.02、10.04mmなら、群平均は10.01mm、Rは0.06mmです。この一群だけで管理限界は決めません。
基準に使う複数群から、群平均の平均「総平均」と、Rの平均「R平均」を求めます。管理限界は、工程の通常のばらつきから外れた変化を調べるための上下の線です。係数A2、D3、D4は一群に含む測定値の数で変わります。NISTは、次の計算式と群サイズ別の係数表を示しています。
まず過去の工程データから暫定の管理限界を引き、限界を越えた群や条件変更を調査します。明らかに異なる条件の期間を混ぜたまま基準を固定すると、線そのものが判断に使えません。基準期間、除外や再計算の根拠、適用開始日を品質担当が記録してから運用します。
←→ 横にスクロールできます
| 管理図 | 中心線 | 上・下の管理限界 |
|---|---|---|
| Xbar | 総平均 | 上限=総平均+A2×R平均/下限=総平均−A2×R平均 |
| R | R平均 | 上限=D4×R平均/下限=D3×R平均 |
NISTの表では、一群五個の場合、A2は0.577、D3は0、D4は2.115です。例えば安定した複数群から総平均10.02mm、R平均0.08mmを得たと仮定すると、Xbarの上限は約10.066mm、下限は約9.974mmです。Rの上限は約0.169mm、下限は0mmになります。これは式を読むための架空の計算例で、実際の工場の管理値ではありません。
表計算ソフトなら、行に群番号と日時、列に五つの測定値、群平均、Rを並べます。群平均はAVERAGE、RはMAXからMINを引いて計算できます。元データの保存が原則です。後で点と記録を照合できるよう、測定値を消さずに残します。管理限界の係数と基準期間も、表の上部に明記します。
例えばC列からG列の第2行が一群の五個の測定値なら、群平均は「=AVERAGE(C2:G2)」、Rは「=MAX(C2:G2)-MIN(C2:G2)」で計算できます。行を下へコピーする前に、空欄や文字が測定値として混ざっていないか確認します。グラフでは横軸を群番号とし、日時との対応を保ちます。この表では群番号が目印です。
判定はR管理図から始め、次にXbarを見る
Rの点が管理限界を越えたり、点の並びに不自然な変化が出たりしたら、先に群内のばらつきを調べます。日科技連の資料も、R管理図が安定しているかを先に見て、安定していればXbar管理図へ進む順番を示しています。Rが不安定なままXbarだけを見て、工程全体を安定と判断しないでください。
管理限界を越えた点は、測定値の転記ミス、測定器の状態、材料ロット、設備条件、作業時刻と照らします。点が限界内でも、同じ側に続くなどの並び方を、運用で決めた判定ルールに従って確認します。異常の印を付けた群について、まず元の測定値と工程記録を読み返します。
原因が特定できる前に、都合の悪い点を削除して管理限界を引き直しません。異常が出た時間帯と、その前後の設備条件やロットを比較します。候補を絞れたら、なぜなぜ分析で事象と確認記録を整理する手順へ進めます。
Rが安定しているのにXbarが限界を越えた場合は、群内の幅ではなく、群と群の平均が動いた時点を探します。逆にRだけが大きくなった場合は、一群の中で何が変わったかを見ます。どちらも、図が原因名まで教えてくれるわけではありません。測定値と工程の変化を結び付けて調べます。
現場の記録と処置を管理図に残す
管理図を作る担当、日々の判定担当、異常時に設備と材料を確認する担当を分けて決めます。点が外れた群番号、調べた測定値、同時に変わった条件、行った処置、再確認した結果を一行で残せば、次の勤務帯へ引き継げます。
管理限界を決めた基準期間に設備変更や測定方法の変更が含まれていないかも確認します。変更があるなら品質担当が基準期間を見直し、旧条件と新条件を分けて扱います。不具合対策書で暫定処置と恒久処置を分ける方法を使うと、調査中と確定後の対応を混同しません。
品質管理の記事一覧は品質・歩留まりのテーマにまとめています。管理図の異常と不良率の変化を同時に確認する場合は、不良率の分母と層別を揃える手順も参照してください。
よくある質問
管理限界の中なら製品は全部合格ですか
いいえ。管理限界は工程の安定を、規格値は製品の合否を判断するための別の線です。管理図が安定していても規格外の製品はあり得るので、製品検査は別に続けます。
一群に測定値が一個しかない場合も使えますか
Xbar-Rは群の平均と範囲Rを使います。一個ではRが常に0となり、群内のばらつきを推定できないため、通常のXbar-R管理図は使いません。測定方法を変えられるか検討し、一個ずつの測定を続けるなら個々の値用の管理図を品質担当と選びます。
管理限界を越えた点を除いて計算し直してよいですか
理由なく除くのは避けます。転記ミスか、実際の工程変化かを元の測定値と記録で調べます。基準期間を変更する場合は、理由と変更前後の限界を残してください。
まとめ
- 同じ条件の計量値を時間順に群へ分け、平均と範囲Rを計算する。
- 基準となる複数群から中心線と管理限界を決め、Rを先に見る。
- 管理限界と製品規格を分け、異常時は元データと工程記録を確認する。
- 処置と再確認の結果を管理図の群番号に結び付けて残す。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。