不具合対策書とは、出てしまった不良や不具合について、事実・原因・再発防止策をまとめて取引先に提出する文書です。社内の分析記録とは役割が違います。読む相手は現場を見ていません。書面だけで「もう起きない」と判断できる形にする必要があります。
差し戻される対策書には共通点があります。いま止めた処置と、原因を取り除く処置が1つの欄に混ざっていることです。この2つを分けて書くだけで、通らない対策書はかなり減ります。
ここでは、法定報告が要る事故の見分け方、7項目の骨格、暫定処置と恒久処置の分け方、原因欄の書き方、有効性の確認までを順に説明します。
書き始める前に、外部への報告が要る事故かを見分ける
対策書は取引先との書類ですが、事故の内容によっては、それとは別に国への報告義務が生じます。先に見分けておかないと、期限のある手続きを後追いすることになります。
根拠は消費生活用製品安全法です。e-Gov法令検索の同法第35条第1項は、消費生活用製品の製造または輸入の事業を行う者に、重大製品事故を知ったときの報告義務を課しています。報告する内容は、製品の名称と型式、事故の内容、製造または輸入した数量、販売した数量です。報告先は内閣総理大臣で、報告の期限と様式は同条第2項により内閣府令で定められます。実務では、所定の様式で消費者庁へ提出します。
判断は3段階です。自社の製品が「消費生活用製品」にあたるか、その事故が「製品事故」にあたるか、そのうえで「重大製品事故」の要件を満たすかの順に見ます。けがの重さだけで決まるものではありません。
以下は、消費者庁と経済産業省の「製品事故情報報告・公表制度の解説 事業者用ハンドブック2025」(2025年12月)にもとづきます。消費生活用製品は、同法第2条第1項の「主として一般消費者の生活の用に供される製品(別表に掲げるものを除く。)」です。
業務用として製造した製品でも対象になることがあります。同ハンドブックは、仕様や販路から一般消費者が容易に購入でき、一般家庭でも広く使える製品は消費生活用製品にあたるとしています。会社で使うパソコンのように、たまたま業務用に使った場合も対象です。
製品事故は同法第2条第6項の定義です。対象は、消費生活用製品の使用に伴い生じた事故のうち、一般消費者の生命・身体に危害が発生した事故か、製品が滅失・き損して危害のおそれがある事故です。ここから、製品の欠陥によるものでないことが明らかな事故は除かれます。欠陥によるものか不明な事故は、除かれません。
重大製品事故は、同法第2条第7項と施行令の要件で決まります。死亡事故、治療に30日以上を要する負傷または疾病、後遺障害事故、一酸化炭素中毒事故、消防が火災と認定した火災が挙げられています。後遺障害は、内閣府令で定める身体の障害にあたるかを確認します。
期限は重大製品事故を知った日を含めて10日以内です。土日・祝日も日数に数え、10日目が休日や年末年始閉庁日にあたる場合は翌日が期限になります。起算は原因究明が終わった日ではなく、事故が生じたことを知った日です。
一般的な寸法外れや外観不良が、ただちに重大製品事故になるわけではありません。不具合が安全性に影響する場合や、別の法令・契約上の報告対象になる場合があるため、対策書だけで完結すると一律には判断できません。
対策書の骨格は7項目
対策書に決まった全国共通の様式はありません。取引先の指定様式がない場合は、次の7項目を並べておけば必要な情報がそろいます。
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| 項目 | 書くこと | 足りなくなりやすい点 |
|---|---|---|
| 発生の事実 | いつ・どこで・何が・どれだけ | 数量と範囲がない |
| 影響範囲 | 出荷済み・在庫・仕掛の切り分け | 出荷済みの特定が抜ける |
| 暫定処置 | いま止めるために行ったことと実施日 | 恒久処置と混ざる |
| 原因 | 掘り下げて到達した、変えられる原因 | 「確認不足」で止まる |
| 恒久処置 | 原因を取り除く変更・担当・完了予定日 | 「教育を徹底」だけ |
| 有効性の確認 | いつ、何の数字で確かめるか | 期日と指標がない |
| 水平展開 | 同じ条件の他ライン・他製品への適用 | 欄そのものがない |
この7項目とは別に、文書番号、版数、対象品番やロット、発行日、作成者と承認者、クローズの判定といった文書管理の情報を、ヘッダーや承認欄に設けます。

図1のとおり、7項目は前から順につながっています。発生の事実が曖昧だと影響範囲が決まらず、影響範囲が決まらないと暫定処置の対象が決まりません。前の欄を埋めずに後ろだけ書くと、読む側に「調べていない」と伝わります。
暫定処置と恒久処置を分けて書く
暫定処置は不具合品の流出や被害の拡大を直ちに抑える処置、恒久処置は確認した原因を取り除く処置です。原因が固まる前でも、暫定処置は先に出せます。
この考え方は、経済産業省の「消費生活用製品のリコールハンドブック2022」にも示されています。同ハンドブックは、原因究明に時間を要すると予想される場合について、判明している事実関係をもとに再発防止策を実施するなど、必要な対応を行う必要があるとしています。原因が完全に特定されるまで何もしないと被害が広がるためです。
対策書もこの順序でよいことになります。1回目は暫定処置と、原因調査の完了予定日を書いて出します。2回目で原因と恒久処置を書き足します。1枚で完結させようとして提出が遅れるより、この形のほうが取引先の判断が早くなります。

図2の分け方をとる場合は、1回目の書面に2回目の提出予定日を必ず入れます。日付のない「調査中」は、放置と区別がつきません。
この2回に分ける方法は、同ハンドブックが定める提出方式ではありません。原因の確定前にも必要な対応を進めるという考え方を、取引先向けの対策書に応用した実務例です。
掘り下げた結果を「原因」欄にどう置くか
原因欄には、確認できた原因を事実どおりに書き、そのうえで自社が管理・変更できる対策につなげます。人の心がけに着地した原因は、対策も心がけになるため、読む側が再発しないと判断できません。
掘り下げの進め方そのものはなぜなぜ分析のやり方で、事象の絞り方と4Mの4軸に分けて説明しました。対策書で必要なのは、その掘り下げの到達点だけです。
置き方には3つの決まりごとがあります。第一に、1つの記載欄へ複数の原因を混ぜないでください。不具合が作り込まれた発生原因、工程内で見つからなかった流出原因、その状態を許した管理上の原因が複数あるなら、それぞれを恒久処置と組にして行を分けます。
第二に、原因の根拠になった事実を添えます。設定値の記録、現物、作業日報のように、確かめた対象を1行で書き添えておきましょう。第三に、その原因を選んだ理由が書面の中で追えるようにします。原因が仕入材料や顧客指定の条件など自社だけでは変えられない事項にある場合も、事実はそのまま書き、受入条件や仕入先管理といった自社で管理できる対策につなげます。
不良の件数や率をどう数えるかで迷う場合は、不良率の下げ方で層別と工程能力の見方を整理しました。品質に関する記事は、品質のテーマページからまとめて探せます。
有効性の確認と水平展開まで書いて終わる
恒久処置を書いた時点では、まだ効いたかどうかは分かりません。対策書は、確認の予定を定め、確認した結果を記録して初めて閉じられます。
有効性の確認欄には、確認する時期と、見る数字を書きます。「3か月後に同工程の不良率で確認する」のように、期日と指標を組にします。数字が取れない対策の場合は、記録の残り方で確認します。たとえば点検表の記入率や、設定値の変更履歴です。あわせて、確認する期間または数量、合格の基準、確認の責任者、基準に届かなかったときの再調査と追加対策まで決めておくと、対策を客観的に閉じられます。
水平展開の欄には、同じ4M条件を持つ他のラインや製品を挙げ、適用したか未適用かを書きます。未適用なら、いつまでに判断するかを添えます。挙げたうえで「対象なし」と書くのは適切ですが、欄ごと空けると検討していないと読まれます。展開の対象は、共通する図面、材料、仕入先、設備、治工具、検査方法から抽出し、適用後の完了確認まで記録します。
リコールハンドブック2022は、再発防止・未然防止の措置として2つの内容を挙げています。事故を起こした製品に関わる内容と、製品を市場に供給した事業者の組織体制に関わる内容です。どちらも、資源の確保を含めて検討して適用するとされています。設備や手順の変更に加えて、誰がいつ確認する体制にするかまで書けると、書面の説得力が変わります。
対策にどこまで費用をかけるかの考え方は、品質コストの考え方で、予防・評価・失敗の3つに分けて整理しています。
よくある質問
対策書はいつまでに提出すればよいですか
法律で決まった提出期限はなく、取引先との取り決めによります。初報を数日以内、対策書を2週間以内といった運用が多く見られますが、指定がある場合はそちらに従います。消費生活用製品安全法にもとづく重大製品事故の報告は、これとは別に知った日を含めて10日以内です。
「なぜ」は5回まで掘り下げる必要がありますか
回数の決まりはありません。自分たちで変えられるもの、つまり設備、用具、作業情報、管理方法に届いた時点が止めどころです。5回目まで無理に続けると、根拠のない推測が混ざります。ただし「変えられる」だけで止めず、記録や現物で裏づけられ、その原因を取り除けば今回の発生または流出を防げたと説明できることを確かめます。
教育と注意喚起だけの恒久処置でもよいですか
提出はできますが、同じ不具合が再発したときに説明が難しくなります。人の注意に頼る対策は、担当者が替わると効き目が落ちるためです。設備、用具、作業情報の変更を先に検討し、それでも残る部分を教育で補う順序にすると、書面の筋が通ります。
まとめ
- 対策書を書く前に、消費生活用製品安全法にもとづく重大製品事故にあたるかを確認する(該当すれば知った日を含め10日以内に国へ報告)
- 骨格は7項目。発生の事実、影響範囲、暫定処置、原因、恒久処置、有効性の確認、水平展開
- 暫定処置と恒久処置は欄を分け、原因調査に時間がかかるなら1回目と2回目に分けて出す
- 原因欄は1つの欄に複数を混ぜず、発生原因・流出原因・管理上の原因を行分けし、それぞれに根拠の事実を添える
- 有効性の確認は期日と指標を組にし、水平展開は対象を挙げてから適用の可否を書く
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。