不良率を下げようとして対策会議を開いても、同じ議論を繰り返してしまうことがあります。原因が、対策の中身ではなく、その手前にあることも少なくありません。手前とは、数え方と絞り込みの順序です。基本的な進め方の一例として、次の4つの視点を順に整理します。
- 不良率の分母と、手直しの扱いを固定すること
- 原因を1つの数字のまま終わらせず、層別すること
- 工程能力とばらつきの関係を確認すること
- 真因を「なぜを5回」で掘り下げ、対策を歯止めまでセットにすること
順序が先です。この順序を揃えないまま数字だけを追うと、打ち手を定めにくくなります。同じ「不良率が高い」でも、特定の設備に偏っているのか、材料ロットに偏っているのか、時間帯に偏っているのかで、確認すべき相手も対策も変わります。1つの平均値だけを見ていると、どこに手を入れるべきかの判断は難しいままです。
出典ページおよび本文の記載内容は、2026年8月に確認したものです。
不良率は「分母」と「手直しの扱い」を決めてから数える
不良率の値は、分母をどこに置くか、手直しをどう扱うかで変わります。不良率は、生産した(または検査した)数のうち、不良と判定された数の割合を表します。式は単純です。
たとえば生産数1,000個のうち不良品が15個であれば、不良率は15÷1,000×100で1.5%です。ここでは、製品単位で不良と判定された個数の割合を不良率と呼び、分母は目的に応じて生産数か検査数のいずれかに固定します。分母の測り方には、次の3つの候補があります。どれを選ぶかで、同じ不良の発生でも数字は変わります。
- 工程の入り口で数える
- 最終検査の数で数える
- 出荷した数で数える
比較する期間や工程では、分母の取り方を1つに固定してください。分子の扱いにも判断が要ります。規格を外れて廃棄になった分と、手直しをして最終検査を通った分を同じ扱いにすると、手直しの工数が見えません。
品質・歩留まりのテーマでは、歩留まりの数え方を歩留まり改善の進め方で整理しており、そこでは手直しをして最終検査を通った分を良品側に含める定義で統一しています。ここでの不良率も同じ考え方に合わせます。
手直し後に最終検査を通った分は不良率の分子に含めず、手直しが発生したこと自体は別の記録として残します。この不良率だけでは、手直しで救済した分が見えません。次の2つも分けて記録すると、工程品質の実態を確認しやすくなります。
- 初回不合格になった数の割合(初回不合格率)
- そのうち実際に手直しを実施した割合(手直し実施割合)
原因の絞り込みは層別から始める
層別(数字を条件ごとに分けて見ること)を使うと、対策すべき対象を絞り込みやすくなります。見る単位を変えるだけです。不良率が工場全体や1つの製品群で1本の折れ線になっている状態では、対策すべき対象を十分に絞り込めないことがあります。まず、工程・設備(号機)・材料ロット・時間帯・作業者など、原因の仮説に合わせた軸で数字を分け、偏りがどこにあるかを確認してください。

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| 層別の軸 | 見えてくること | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 工程 | どの工程の後で不良が現れるか | 品質管理、製造の各工程 |
| 設備・号機 | 特定の設備に発生が偏っていないか | 設備保全、生産技術 |
| 材料ロット | 特定の仕入れ・ロットに偏っていないか | 購買、受入検査 |
| 時間帯・交代 | 始業直後や交代の前後に偏っていないか | 製造の各工程、労務管理 |
| 作業者 | 手順に個人差が出ていないか | 教育担当、現場リーダー |
層別した結果、複数の軸にまたがって偏りが出ることもあります。その場合は、影響の大きい軸から順に条件を1つずつ揃えて比較すると、どの組み合わせで不良が増えているかが見えやすくなります。作業者ごとに差が出た場合も、個人の責任と決めつけず、担当していた製品・設備・時間帯・教育条件などをあわせて確認してください。
工程能力で「ばらつきと中心のずれが規格に対して十分か」を見る
層別で対象を絞り込んだ後は、その工程が安定しているかどうかを確認します。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21のビジネスQ&A「不良品を出さないための工程管理方法について教えてください。」は、工程を安定した状態に保つために、上方と下方に管理限界(工程が安定しているかどうかを判断する目安の線)を設ける管理図の手法を紹介しています。
もっとも多く使われる管理限界は、ばらつき(標準偏差。ばらつきの大きさを表す記号はσです)の3倍(3シグマ)を基礎とした値です。算出方法は、管理図の種類などで異なります。
測定値が正規分布に従う場合、平均から±3σの範囲には、理論上約99.7%が入るとされています。まず、工程が統計的に安定していることを、管理図などで確認してください。そのうえで、ばらつきの幅と中心の位置を、規格限界(顧客要求・設計仕様・社内基準などによる規格値)と比較し、工程能力を判断します。
同解説は、抜き取り検査で得た各ロットの平均値と範囲をグラフにする「Xバー-R管理図」を、代表的な手法として挙げています。
この考え方を指数にしたものが工程能力指数です。工程が統計的に安定していることを前提に、規格に対するばらつきの大きさを、次の2つの指数で判断します。
- Cp(両側規格の場合):規格の幅を、工程のばらつきで割った値。値が大きいほど、規格に対してばらつきが小さいことを示します
- Cpk:工程の中心が規格の中心からずれているときに使う指標。規格上限までの距離と規格下限までの距離を計算し、小さいほうの値を採用します
①(規格上限-工程平均)÷(標準偏差の3倍)
②(工程平均-規格下限)÷(標準偏差の3倍)
どの水準を目標にするかは、製品・工程・顧客要求によって異なります。今回確認できた公的資料には目安となる基準値の記載がないため、具体的な数値の目安は示しません。
管理図や工程能力指数を計算しなくても、日別・号機別の不良率を並べ、ばらつきの幅が広い日や設備を確認することは、詳しく調べる対象を絞る初期確認として今日から始められます。これは初期確認の域にとどまり、工程能力の評価そのものにはなりません。
- 工程の安定性:管理図などで確認
- 規格に対する工程能力:工程能力指数などで確認
この2つを分けて見るのが一般的です。
真因は「なぜを5回」で掘り下げ、対策は「歯止め」までセットにする
層別と工程能力の確認で対象を絞ったら、次は原因の掘り下げです。同じくJ-Net21のビジネスQ&A「同じような失敗を繰り返さないような方法や、その留意点を教えてください。」は、再発防止に必要な要件を2点に絞って挙げています。1点目は真因の特定です。「なぜを5回繰り返す」(5回は目安です)ことで、通り一遍の要因分析では届かない本質に迫る方法です。
この掘り下げは、個人よりもグループ・職場単位で行うことが望ましいとされています。複数人の知恵を重ねることで、真因を探り出しやすくなるとしています。
- 層別で絞り込んだ対象から、影響の大きい不良の型を1つ選ぶ
- 「なぜ発生したか」を、現場の事実や記録で確かめながら繰り返し掘り下げる(5回は目安)
- 個人ではなくグループ・職場単位で行い、複数人の視点を重ねる
- 特定した真因に対する対策を立てる
- 対策が元に戻らないよう、次項の「歯止め」を設計する
2点目は歯止めです。同解説は、真因を特定して対策を打っても永続性がなければ再び不具合が発生するとし、対策を日常業務の中に織り込むことを歯止めと呼んでいます。具体的な方策として、担当者・担当部署内でのセルフチェック体制の構築とマニュアル化、および、関与部署以外による定期的な業務監査体制の2つを挙げています。重要な事項ほど、この2つを重ねて確認することが必要だとしています。

対策は、原因への手当てに加えて、その対策が元に戻らないための歯止めを重要度に応じて設けることで、再発防止の実効性が高まります。
原価に効く数字を毎月同じ形で確認する考え方は、他の費目でも同じです。電気料金の明細を項目ごとに分解して確認する手順は再エネ賦課金と燃料費調整額。工場の電気料金明細を4つの項目で読むで整理しています。
よくある質問
不良率と歩留まりはどう違いますか。手直し品はどちらの数字に入れますか
- 不良率:生産(検査)した数のうち、不良と判定された数の割合
- 歩留まり:投入した量に対して、良品として残った量の割合
手直し品の扱いは1つに揃えます。ここでは、歩留まり改善の進め方と同じ定義に合わせます。手直しをして最終検査を通った分は良品として扱い、不良率の分子には含めません。手直しが発生したこと自体は、別の記録として残してください。手直しにかかった工数や稼働時間の増加は、原価側で確認します。
工程能力指数(Cp・Cpk)の目安はどのくらいですか
今回の調査範囲では、業種を横断して使える公的な目安値は確認できませんでした。目標とする水準は、製品の規格・工程のばらつき・顧客要求によって異なるためです。水準は自社で決める前提です。規格・顧客要求・品質リスク・社内基準を優先して、必要な水準を定めてください。そのうえで、安定した工程から算出した自社のCp・Cpkの実績と比較し、その差を確認する進め方が現実的です。
人手が少ない工場でも「なぜなぜ分析」はできますか
なぜなぜ分析は、個人ではなくグループ・職場単位で行うことが望ましいとされています。少人数の職場でも、影響の大きい不良の型から対象を1つ選び、可能な範囲で複数の関係者の視点を入れて掘り下げることはできます。掘り下げた内容と対策、歯止めの方法を、記録に残すことを優先してください。そうすれば、少人数の職場でも、歯止めを含む基本的な考え方を再発防止の検討に活用できます。
まとめ
- 分母(生産数か検査数か)と手直しの扱いを最初に固定し、歩留まりの記事と矛盾しない定義で運用する
- 原因は1つの数字で終わらせず、工程・設備・材料ロット・時間帯・作業者など複数の軸で層別する
- 工程能力は、管理図などで工程が安定していることを確認したうえで、そのばらつきの幅と中心の位置を規格限界と比較して判断し(ばらつきの幅はCp、中心のずれを含めた状態はCpkなどで確認)、目標水準は規格・顧客要求・社内基準から定める
- 真因は個人ではなくグループ・職場単位で、現場の事実や記録を確かめながら「なぜ」を必要な範囲で繰り返す(5回は目安)
- 対策はセルフチェック体制や関与部署以外による定期監査といった「歯止め」まで設計し、重要度に応じて組み合わせて元に戻らないようにする
品質・歩留まりに関する他の切り口は品質・歩留まりのテーマ一覧にまとめています。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。