取適法とは、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」の通称で、2025年までは下請法と呼ばれていました。2026年1月1日に名称が変わっています。この法律の返品の禁止は、受託先に責任がないのに、受領した後の物を引き取らせることを禁じる決まりです。
自社が対象になるかは、取引の内容と会社の規模で決まります。部品や製品の製造を他社に委託する製造委託は、取引の内容にあたります。発注側は委託事業者、受け取る側の協力工場は中小受託事業者(受託先)です。会社の規模にも要件があります。なお、受領とは、納品された物を発注側が受け取ることです。
受入検査で不良と判定した物は、受領後速やかに返品します。受入検査とは、納入品が委託内容や検査基準に合っているかを確かめる検査のことです。一度合格にした物は、直ちに発見できない不適合に限り、受領後6か月以内なら返品できます。一般消費者向けに6か月を超える保証期間を定めている場合は、その期間に応じて延び、最長1年です。直ちに発見できる不適合は、合格にした後は返品できません。
この線引きを確かめる材料は、発注時の明示と、検査基準、検査の記録です。品質に関する他の記事は品質・歩留まりのテーマページにまとめています。
返品の禁止は、受託先に責任がないのに受領後の物を引き取らせることを禁じている
返品の禁止は、取適法5条1項4号が定めています。条文は、受託先の責めに帰すべき理由がないのに、給付を受領した後、その給付に係る物を引き取らせることを禁じています。条文はe-Gov法令検索の取適法で確認できます。
公正取引委員会の運用基準では、この禁止の考え方は次のとおりです。受領拒否、減額、返品、不当なやり直しの禁止は、発注時に取り決めた条件を、受託先に責任がある場合を除いて誠実に守ることを求めるものです。そのため、発注時の条件を明らかにする4条の明示を徹底することが、違反の未然防止になります。
4条の明示とは、製造委託をしたら直ちに、給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを、書面または電磁的方法で受託先に示すことです。
この禁止のねらいを、公正取引委員会中部事務所は旧法時代の解説で説明しています。委託品は発注側の仕様に基づく特殊なものが多く、返品されると他社へ転売しにくいためです。出典は公正取引委員会 中部事務所「下請法 知っておきたい豆情報 その14(不当な返品の禁止)」です。
受領前に受け取らない行為は、返品ではなく受領拒否という別の禁止行為です。違いは取適法の受領拒否の解説で整理しています。
返品が認められるのは、納入品が明示した委託内容と異なる場合に限られる
返品が認められるのは、受託先の給付が、明示された委託内容と異なる場合などに限られます。しかも、受領後速やかに引き取らせる場合か、抜取検査の継続取引で定めた場合の2つだけです。
運用基準の4(2)は、責めに帰すべき理由があるとして引き取らせられる場合を、2つに絞っています。1つ目は、給付を受領後速やかに引き取らせる場合です。2つ目は、給付の検査をロット単位の抜取りで行っている継続的な取引で、代金の最初の支払時までに引き取らせる場合です。2つ目は、事前の合意などが必要で、後の節で扱います。
この2つに当たっても、次の場合は、委託内容と異なることを理由に引き取らせることができません。運用基準の4(3)が挙げています。
- 委託内容が明示されておらず、または検査基準が明確でないため、委託内容と異なることが明らかでない場合
- 検査基準を恣意的に厳しくして、委託内容と異なるとする場合
- 検査を省略する場合
- 検査を自社で行わず、かつ、受託先に文書で委任していない場合
検査を受託先に文書で明確に委任した場合も、その検査に明らかな過失がある給付を、受領後6か月を過ぎてから返品することは認められません(運用基準4(3)ウ)。
運用基準には、違反行為事例も載っています。以前は問題にしなかった色むらを指摘して引き取らせた例(事例4-3)や、検査を行っていないのに不良品だと言って引き取らせた例(事例4-5)があります。
検査基準が明確でなければ、納入品が委託内容と異なるかどうかを確かめられません。基準を明示しておくことで、相違を確かめられる状態になります。基準づくりの実務は限度見本の作り方で整理しています。
この節で確認する相手は、購買担当者です。発注書面に検査基準が結び付いているかを、購買担当者に聞きます。
受入検査で不良と判定した物は、受領後速やかに返品する
受入検査で不良と判定した物は、受領後速やかに返品する場合に限り認められます。しばらく放置してから返品すると、違反になります。
公正取引委員会のよくある質問コーナーの質問106が、この扱いを示しています。出典は公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」です。受入検査で不良とされた物は、受領後しばらく放置した後に返品すれば、本法違反になります。
現場に引き直すと、検査で不良と分かった日と、受託先へ通知して引き取らせる日を離さないことになります。判定した不良品を検査棚に置いたまま、月末にまとめて返す運用は合いません。これは記事の例です。
この節で確認する相手は、受入検査の担当者です。不良と判定した日と、受託先へ通知した日を記録で確かめます。
一度合格にした物は、直ちに発見できない不適合に限り、受領後6か月以内に返品できる
合格にした後に返品できるのは、直ちに発見できない不適合に限られます。期限は受領後6か月までです。
質問106は、受入検査を行い、一旦合格品として取り扱った物について、次のように答えています。直ちに発見することができない不適合があったものは、受領後6か月以内であれば返品できます。一般消費者に6か月を超える保証期間を定めている場合は、その保証期間に合わせて最長1年です。直ちに発見することができる不適合があったものは、返品すると違反になります。
期限を過ぎた場合の例も、運用基準にあります。機械部品を受領して10か月後に、委託内容と異なるとして引き取らせた例が、違反行為事例です(事例4-4)。この事例では、受領後6か月を過ぎてからの返品が違反とされています。
質問107は、抜取検査でロット合格した物が、顧客に渡った後に使用上重大な不適合として見つかった事例を扱っています。納入後1か月を経過していても、直ちに発見できない不適合であれば、受領後6か月以内なら返品できます。直ちに発見できる不適合であれば、返品は認められません。
個々の不良が直ちに発見できる不適合かどうかで迷うときは、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に、不良の内容と発見の経緯を伝えて確認します。

図1は、本文で見てきた扱いを、受領から順に並べたものです。受入検査で不良と判定した物と、合格後に直ちに発見できない不適合が見つかった物は返品でき、直ちに発見できる不適合は返品できません。
この節で確認する相手は、受入検査の担当者と購買担当者です。6か月を超えて保留している不良品がないかを、2人に確認します。
抜取検査の継続取引は、事前の書面合意があれば最初の代金支払時まで返品できる
抜取検査の継続取引では、事前に書面で合意していれば、直ちに発見できる不良も最初の代金支払時まで返品できます。抜取検査とは、ロットの一部を取り出して調べ、その結果でロット全体の合否を決める検査です。
質問107は、この例外の条件を3つ挙げています。
- 給付の検査を、ロット単位の抜取りの方法で行っている継続的な受託取引であること
- 発注前にあらかじめ、直ちに発見できる不良品の返品を認めることが、書面等で合意されていること
- その書面等と、4条の明示との関連付けがなされていること
3つがそろえば、物品を受領した後、その受領に係る最初の代金の支払時までは、返品が認められます。
代金の面でも条件がかかる例外です。質問107は、合格ロット内の不良品を返品する前提で、代金の額を十分に協議することを求めています。委託事業者が一方的に従来と同じ単価を設定すれば、買いたたきに当たるおそれがあります。
この節で確認する相手は、購買担当者です。抜取検査で受け入れている取引先について、返品条件の書面合意があるかを聞きます。
返品できるかを決める4つの問いと、発注時に決める3点
返品できるかは、発注時の明示、検査の有無、不適合が見つかった時期、受領からの経過の4つで決まります。以下は、運用基準とQ&Aの内容を工場の場面に並べ替えた記事の整理で、公的な基準ではありません。
- 発注時の明示:委託内容と検査基準を、4条の明示で示していたか。基準を後から厳しくしていないか
- 検査の有無:受入検査を行ったか。自社で行わないなら、文書で委任したか
- 見つかった時期:受入検査で見つけたのか、合格にした後に見つけたのか。直ちに発見できる不適合か
- 経過期間:受領から何か月たっているか
この4つの問いを、場面ごとに並べると次の表になります。これも記事の整理です。
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| 場面 | 返品 | 根拠 |
|---|---|---|
| 受入検査で不良と判定 | 受領後速やかに返品 | 質問106・運用基準4(2)ア |
| 全数検査で合格にした後、直ちに発見できる不適合が判明 | 返品不可 | 質問106 |
| 合格後、直ちに発見できない不適合が判明(受領後6か月以内) | 返品可 | 質問106・運用基準4(3)エ |
| 同上で、適用される返品期限(受領後6か月。延長がある場合はその期限)を経過 | 返品不可 | 運用基準4(3)エ・事例4-4 |
| 抜取検査のロット合格後、直ちに発見できる不良(事前合意・明示・関連付けあり) | 最初の代金支払時まで返品可 | 質問107・運用基準4(2)イ |
| 検査を省略、または自社で検査せず文書委任もなし | 返品不可 | 運用基準4(3)オ・カ |
返品できるかを確かめられるように、発注時に整えておくことを3点に絞ります。これも記事の整理です。
- 検査基準を4条の明示に結び付ける:検査方法(全数か抜取か)と検査基準(限度見本や測定項目)を、発注書面に結び付けます
- 抜取検査の継続取引では返品条件を書面で合意する:直ちに発見できる不良品の返品条件を書面で合意し、発注書面と関連付け、単価も協議します
- 検査の記録を残す:検査日、ロット、判定、受託先への通知日を残します
取適法7条は、給付、受領、代金の支払などを記載した書類または電磁的記録を作成し、保存するよう求めています。検査の記録は、この書類とあわせて保管できます。評価への使い方は外注先の評価表に書いています。

明日から確認する順序は、次の4つです。これも記事の整理です。
- 直近の返品や減額の事案で、受領日、検査日、不適合の発見日、通知日を並べる
- 発注書面に、検査基準が書いてあるかを見る
- 抜取検査の取引先で、返品条件の書面合意があるかを見る
- 6か月を超えて保留している不良品がないかを見る
聞く相手は、受入検査の担当者、購買担当者、そして迷うときの公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口です。
よくある質問
取引先が「返品してもいい」と言っていれば、返品できますか
取引先の了解だけでは返品できません。取適法5条1項4号の要件は、受託先の責めに帰すべき理由の有無で、取引先の了解は要件に含まれていません。質問105では、将来再び受け取ることを約束して一旦返品しても、違反になるとされています。
返品した分の代金はどうなりますか
委託内容と異なることなどがあり返品が認められる場合、支払日前(受領後60日以内)の返品なら代金を支払わなくてよく、支払後の返品なら代金相当額の返却を求めても違反ではありません(質問100)。
支払期日前に委託内容との相違が見つかって返品するときは、再納品の受領日が支払期日の起算日になります(質問76)。責任がないのに返品して代金を払わなければ、速やかに引き取ることのほか、状況に応じて代金や遅延利息の支払などが勧告されます(質問139)。
返品の代わりに、不良品の分を代金から差し引いてよいですか
受託先の責めに帰すべき理由があって減額が認められる場合は、減額として問題になりません。ただし、受領後に遅滞なく検査をせず、不適合が分かっても直ちに通知せず、自社で持ち続けて差し引くと、減額として問題になります(質問104。自社所有の物品を預けて加工を委託した例)。
まとめ
- 返品の禁止は、取適法5条1項4号が定める。受託先に責任がないのに、受領後の物を引き取らせることができない
- 受入検査で不良と判定した物は、受領後速やかに返品する。放置してからの返品は違反になる
- 合格にした後は、直ちに発見できない不適合に限り、受領後6か月以内に返品できる。直ちに発見できる不適合は返品できない
- 抜取検査の継続取引は、書面の事前合意と4条明示との関連付けがあれば、最初の代金支払時まで返品できる
- 返品できるかを確かめられるように、検査基準を4条の明示に結び付け、検査の記録を残す
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。