外注先の評価表は、点数表を作る前に、何を数えて評価するかを決めます。先に決めるのは、良し悪しを判断する基準と、その事実を記録する場所です。
外注先を「あそこは品質が良い」「あそこは遅い」と感覚で語っていると、改善してほしい点を具体的に伝えられません。手順は、検査基準と作業標準をそろえ、受入検査の結果と納期を外注先別に記録し、その記録から率を数える順です。受入検査とは、外注先から納品された品物が決めた基準に合っているかを、受け取る側が確認する作業を指します。
この記録は、取適法の対象取引では委託事業者が作成・保存する記録の一部と重なるため、その部分は評価と法令対応で共用できます。取適法(中小受託取引適正化法)は、下請法が2026年1月1日施行の改正で名称を改めた法律です。基準、記録、率の数え方、取適法との接点、進める順序の順に整理します。
評価の前に、検査基準と作業標準書をそろえる
評価表の出発点は、合否を判断する基準が外注先に渡っていることです。何が合格で何が不合格かが外注先に伝わっていなければ、不良率を数えても、どちらの責任の数字なのか分かりません。
J-Net21(中小機構)のビジネスQ&Aは、外注先の品質管理を社内の品質管理の一部と捉え、品質保証を「基準」と「事実」に基づいて構築すると説明しています。基準の例は検査基準や作業標準書、保管基準書、作業指導書です。事実の例は検査成績書、作業報告書、クレーム発生対応報告書など、記録として残るものです。出典はJ-Net21「外注先に対する品質管理指導の進め方について教えてください。」です。
検査基準とは、合否を何で判断するかを定めた文書です。作業標準書は、作業の手順や条件を定めた文書です。検査成績書は、検査で測った結果を品目やロットごとに記した書類です。ロットとは、同じ条件でまとめて作った、または納品された品物の単位を指します。
外注品の品質が悪いと、手直しによる加工費の増加、クレーム対応の交換費用や通信費、出張旅費がかかり、最悪の場合は得意先から取引を止められるおそれがあると、同じQ&Aは述べています。外注先の評価は、こうした損失を事前に減らすための記録です。

同じQ&Aが示す手順は次の流れです。
- 外注先チェックリストで、品質管理が有効に働いているかの実態を調べる。
- 実態から課題を洗い出す。
- 基準が無ければ、作成を指導する。
- 基準が守られているかを検証できるよう、事実の記録を指導する。
- これを繰り返して、自主的な品質保証体制を作る。
評価も同じ順で進めます。基準が無い、または外注先に渡っていない場合は、評価より先に作って渡します。合否の境目が言葉で伝えにくい外観不良などは、限度見本の作り方の記事にある限度見本で共有できます。
受入検査の結果と納期を、外注先別に記録する
評価に使うのは、受け入れた日ごとに残した事実です。口頭の印象は後から確かめられません。記録は、外注先別・品目別に、受け取った日の記録として残します。
記録する項目は次の6つです。これは記事の整理で、公的な様式ではありません。
- 日付と品目:納品(受領)日、検査を完了した日、何を受け入れたか。
- 数量:ロット数または個数。どちらで数えるかを決めて固定する。
- 合否:検査の結果。
- 不合格品の取扱い:返品、手直し、選別など、どう扱ったか。
- 納期の遅れ:期日どおりか、遅れた場合は何日遅れか。
- 遅延の理由:外注先の都合か、発注側の計画変更や設計変更か。
遅延の理由を分けるのは、発注側の変更で遅れた分を外注先の評価に入れないためです。理由が空欄だと、後で集計するときに分けられません。発注側の計画変更や設計変更が原因の遅延は、外注先の遅延とは別の列で数えます。
記録は、事実が生じたときに速やかに残します。月末にまとめて思い出して書くと、不合格品の取扱いや遅延の理由が抜けやすくなります。担当者が替わっても同じ記録が残るよう、様式は一つに決めます。受入検査の担当者が書ける簡単な様式にして、購買担当が外注先別に集めます。様式が複雑だと現場が書かなくなるため、最初は上の6項目から始めます。
記録から数えるもの、確認して書くもの
評価表の項目は、記録から数えるものと、確認して書くものに分けます。ここからは記事の整理です。
数えるものは4つあります。受入不良率、納期遵守率、やり直し・手直しの件数、得意先からの苦情につながった件数です。確認して書くものは、検査基準と作業標準の有無、検査成績書の提出状況、不良が出たときの対策書の提出と再発の有無です。前者は割り算や件数で比べられ、後者は有る・無いと経過を文章で残します。
不良が出たときに外注先へ求める書類は、不具合対策書の書き方の記事で整理しています。対策書が出ているか、同じ不良が再発していないかは、評価表の「確認して書く」欄で追えます。
数える2つの率の式は、次のとおりです。ロット単位か個数単位かは、記録の段階で決めた単位に合わせます。
6か月分の記録で、3社を数えて比べる
架空の3社の記録を6か月分数えると、外注先ごとに直したい点が違うことが分かります。次の数字は記事の例で、実在の外注先のものではありません。
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| 外注先 | 受入ロット(不合格) | 納入件数(遅延) | 不良率/遵守率 |
|---|---|---|---|
| A社 | 120(2) | 120(3) | 1.7%/97.5% |
| B社 | 80(4) | 80(1) | 5.0%/98.8% |
| C社 | 40(0) | 40(4) | 0.0%/90.0% |
A社の受入不良率は2÷120で1.7%、納期遵守率は117÷120で97.5%です。B社は4÷80で5.0%、79÷80で98.8%、C社は0÷40で0.0%、36÷40で90.0%です。
外注先別の受入不良率(%)
データを表で見る
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| 外注先 | 受入不良率(%) | 納期遵守率(%) |
|---|---|---|
| A社 | 1.7 | 97.5 |
| B社 | 5.0 | 98.8 |
| C社 | 0.0 | 90.0 |
受入不良率が最も高いのはB社の5.0%で、納期遵守率はB社が最も高い98.8%です。B社には品質、C社には納期、というように、改善してほしい項目が外注先ごとに分かれます。
数字の読み方は、母数と項目ごとの並びで決まる
率は、母数が違うものを同じ重みで比べられません。C社は不合格が0件ですが、受入ロットは40と少なく、A社の120やB社の80とは数えた量が違います。0.0%という数字だけでC社の品質が最も良いとは言えず、母数が増えたときも0件が続くかを次の期間で見ます。
点数を合計して1つにまとめる前に、項目ごとに並べるのが原則です。B社は不良率が高く遅延は少なく、C社は逆です。合計点にすると、この違いが消えてしまいます。たとえばB社に「不良率を下げる対策を」、C社に「納期の遅れの原因を」と、外注先ごとに別の依頼ができます。評価表は順位をつけるより、何を直してほしいかを外注先と話す材料にします。
点数や重み、合格点の公的な基準は確認できませんでした。自社で配点を決める場合は、一例として扱い、基準を変えたら変更日を記録に残します。
受入検査の記録は、取適法の記録にも使える
取適法の対象取引では、受入検査の記録を外注先別に残すと、評価の元データと、7条記録のうち該当する事項を一度で兼ねられます。取適法の対象になるかどうか(資本金や従業員数の区分、取引の種類)は、ここでは扱いません。取適法の受領拒否の記事と、公正取引委員会・中小企業庁の中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)で確認してください。
取適法テキストでは、委託事業者は製造委託等をした場合、記録事項を記載した書類または電磁的記録を作成し、2年間保存しなければならないとされています。この義務に基づく記録が7条記録です。受入検査に関連する記録事項には、受領した給付の内容と受領した日、検査をした場合は検査を完了した日、検査の結果、検査に合格しなかった給付の取扱い、変更又はやり直しをさせた場合はその内容と理由があります。
記録は中小受託事業者別に残します。発注時に書面等で示す事項(4条明示)では検査完了の予定期日を示し、7条記録では実際の検査完了日と結果を残す、という違いがあります。

電磁的記録で残す場合の要件は、訂正・削除の事実と内容が確認できること、画面表示や書面出力ができること、事業者名や発注日で検索できることです(取適法テキスト)。表計算ソフトで管理するときは、上書きの履歴が残るかを確認します。
評価のために基準を後から厳しくすることは避けます。取適法テキストは、発注後に検査基準を恣意的に厳しくし、従来の基準で合格とされたものを不合格とする場合を、受領拒否・返品が認められない場合に挙げています。基準を変えるときは、発注前に外注先と合わせて書面等に残します。
検査を省略している場合も注意が必要です。同じテキストは、給付に係る検査を省略する場合を、返品が認められない場合に挙げています。検査結果を記録する習慣は、この点の確認にもなります。
質問106では、受入検査で不良品とされたものは、受領後速やかな返品に限られます。一旦合格品として扱ったもののうち直ちに発見できない不適合は、受領後6か月以内なら返品できます。一般消費者に6か月を超える保証期間を定めている場合は、それに合わせて最長1年です。出典は公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」です。
評価表を進める順序
最初から全外注先を対象にせず、取引の多い外注先と品目に絞って始めます。進める順序は次のとおりです(記事の整理)。
- 対象を決める:外注先と品目を絞る。
- 基準を確認する:検査基準、限度見本、作業標準が渡っているか見る。無ければ先に作る。
- 記録する:日付、品目、数量、合否、不合格の取扱い、遅延理由を外注先別に残す。
- 数える:3か月または6か月で率を出す。
- 共有する:外注先と結果を見て、改善してほしい項目を1〜2つに絞る。
- 次の期間を同じ方法で数える:前の期間と比べる。
聞く相手は、基準と検査の実態は品質保証・受入検査の担当、納期と遅延理由は購買担当です。取適法の確認は、社内の法務担当か、公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口が相談先です。価格の比べ方は評価表とは別の話で、相見積もりの取り方の記事にまとめています。購買の他の記事は調達・材料費の記事一覧が入口です。
よくある質問
小さな外注先にも評価表は要りますか
取引が少ない外注先でも、受入検査の結果と納期の記録は残します。母数が小さいうちは率で比べず、不合格の内容と遅延の理由をそのまま見ます。率で数えるのは件数が増えてからです。
評価の結果を外注先に見せてよいですか
共有する前提で作るものです。項目ごとの数字を見せ、改善してほしい項目を1〜2つに絞って話すと、次の期間の変化を同じ方法で数えられます。基準を変える場合は、結果の共有とは別に、発注前に合わせて書面等に残すのが原則です。
取適法の対象でない取引でも記録は要りますか
評価のための記録は、法令上の義務とは別に必要です。受入検査の日付、結果、不合格品の取扱いを外注先別に残す方法は、対象かどうかにかかわらず同じです。対象になるかの判断は、公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口に確認します。
まとめ
- 評価表は、基準をそろえ、記録し、数える順で作ります。
- 数えるのは受入不良率、納期遵守率、やり直し・手直しの件数、苦情につながった件数です。
- 母数の違う率を同じ重みで比べず、点数を1つにまとめる前に項目ごとに並べます。
- 受入検査の検査完了日・結果・不合格品の取扱いは、取適法の対象取引では7条記録の一部の事項と重なります。
- 評価のために基準を後から厳しくせず、変えるときは発注前に外注先と合わせて書面等に残します。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。