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品質コストとは?予防・評価・失敗コストの考え方と工場での使い方

品質コストとは何か。予防・評価・内部失敗・外部失敗の4分類と、既存科目からの数字の拾い方、予防配分の判断手順を整理します。

テラコッタ色の背景に「品質コスト 予防・評価・失敗で見る費用」の文字、左に台帳とチェックマークのアイコン、右に4本の棒グラフ(3本目のみオレンジ)を配した図版
24品質・歩留まり

工場でかかっている品質に関する費用を、数字として見える形にする話です。

品質コストとは、不良を防ぎ、検査し、それでも出てしまった不良に対応するためにかかる費用の総称です。工場ではこの費用が、材料費や労務費、外注費といった既存の科目に含まれ、品質関連費用として区分して集計されていない場合があります。整理する順序は次の3つです。

  • 品質コストを予防・評価・内部失敗・外部失敗の4つに分けて捉える考え方
  • 既存の記録から自社の数字を拾う方法
  • 予防にどこまで配分するかを判断する順序

品質管理の専任部署を持たない中小規模の工場でも取り組める内容です。検査・手直し・クレーム対応にかかる時間や費用を、担当者の感覚ではなく数字で押さえてください。その手順を順に整理します。

品質コストは「予防・評価・失敗」の4つで考える

品質にかかる費用を整理する考え方の一つに、「予防コスト」「評価コスト」「失敗コスト」の3つに分ける方法があります。失敗コストは、さらに2つに分かれます。「内部失敗コスト」と「外部失敗コスト」です。

不良を未然に防ぐための費用が予防、不良の有無を確かめるための費用が評価、出てしまった不良に対応する費用が失敗です。この順に並べると理解しやすくなります。

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区分内容工場でよくある費目現場での例
予防コスト不良の発生を未然に防ぐための費用教育訓練費、作業標準書の整備費、品質不良の予防に関係する範囲の設備保全費作業手順書の改訂、検査担当への教育
評価コスト不良の有無を確かめるための費用検査要員の人件費、検査設備の維持費受入検査、工程内検査、出荷前検査
内部失敗コスト出荷前に社内で見つかった不良への対応費用手直し工数、廃却材料費、再検査費手直し、スクラップ、再加工
外部失敗コスト出荷後・納品後に発覚した不良への対応費用クレーム対応費、返品・回収費、代替品の再製作費返品対応、取引先への説明、信用回復にかかる時間
注意:品質コストの分類方法や集計範囲は業種・企業によって幅があり、統一された公的な計算基準があるわけではありません。ここでの分け方は、自社の数字を整理するための出発点として使ってください。
品質コストの4分類(予防・評価・内部失敗・外部失敗)を、発生のタイミングが出荷前か出荷後かで並べた図
図1 品質コストの4分類と発生タイミングの関係

自社の数字は既存の記録から拾う

会計の記録の中に、品質コストがすでに紛れて存在していることがあります。必ずしも新しい勘定科目を設ける必要はありません。既存科目の内訳から拾う方法もあります。

中小企業実態基本調査(中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構、政府統計の総合窓口e-Stat)の統計表では、製造業の費用が次のように区分されています。

  • 売上原価:商品仕入原価・材料費・労務費・外注費・減価償却費・その他の売上原価
  • 営業費用:給料賃金・地代家賃・水道光熱費・従業員教育費・その他の経費など

品質関連費用は、これらの科目に含まれている場合があります。どの科目に何が入り込んでいるかを、次のように対応づけて拾い出してください。

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既存の科目そこに含まれている品質関連費用の例
材料費(売上原価)不良品として廃却した材料費、規格外品を値引きして処分した際の差額
労務費(売上原価)検査要員の人件費、手直し作業にかかった工数
外注費(売上原価)外注先への品質管理指導にかかる費用、外注不良の手直しを委託した費用
その他の売上原価・営業費用(従業員教育費、その他の経費など)クレーム対応にかかる費用、返品時の送料、教育訓練費

検査にかかる費用も、同じ考え方で拾えます。中小機構のJ-Net21「不良品を出さないための工程管理方法について教えてください」では、全数検査はコストの増加につながると説明されています。そのうえで、工程の数値を記録し、統計的な管理図で異常を早期に見つける方法が紹介されています。

検査要員の人件費や設備維持費を洗い出すときは、全数検査と抜取検査への人員・時間の配分もあわせて確認してください。そうすると評価コストの内訳が見えてきます。

材料費・労務費・外注費・その他経費という既存の会計科目の中から、品質コストに該当する費用を拾い出す手順を示したフロー図
図2 既存の科目から品質コストを拾い出す流れ

比率ではなく「失敗コストの内訳」を見る

比率の目安には根拠となる公的な統計が見当たらないため、ここでは比率よりも金額の内訳を優先します。品質コストの分類を紹介する資料には、予防コストと失敗コストの比率の目安が示されることもあります。ただし、その目安の根拠となる公的な統計は確認できませんでした。

比率の目安を追うより、まず自社の失敗コストの内訳を数字で並べることを優先してください。

失敗コスト(円/月・簡易集計例)= 内部失敗コスト(手直し工数×時間単価+廃却材料費+再検査費)+ 外部失敗コスト(クレーム対応工数×時間単価+返品・回収費)+その他の関連費用

内部失敗コストと外部失敗コストを分けて並べると、どちらに費用が偏っているかが見えます。内部失敗は社内で完結するぶん、対応の範囲を把握しやすくなります。外部失敗は取引先への説明や代替品の再製作などがあり、関係する部署や時間が広がりやすい傾向があります。

予防への配分は「どこで失敗しているか」から決める

失敗コストの内訳が見えたら、次に予防コストをどこへ配分するかを決めてください。判断の軸になるのは、失敗の発生源です。

  • 社内工程が原因の内部失敗が多い場合:作業標準書の整備や、品質不良の予防に関係する範囲の設備保全に予防コストを配分する。検査基準・検査方法の設計見直しも予防コストにあたる。ただし検査を実施する費用そのものは、評価コストとして別に管理する
  • 外注先が原因の不良が多い場合:外注先の品質管理指導に配分する
  • 出荷後の外部失敗が多い場合:出荷前の検査体制と、設計・仕様の見直しの両方を検討する

外注先が原因の不良が多いときは、中小機構のJ-Net21「外注先に対する品質管理指導の進め方について教えてください」の考え方が参考になります。外注先の品質管理を、自社の品質管理の一部と位置づける進め方です。まずチェックリストで実態を把握したうえで、次の2種類の記録を指導します。

  • 「基準」の記録:検査基準、作業標準書
  • 「事実」の記録:検査成績書、作業報告書

不良が見つかったときに、その場で手直しするだけで終わらせないという考え方があります。原因を取り除いて再発を防ぐという考え方です。これは、品質マネジメントシステムの要求事項を定めるJIS Q 9001:2015にも表れています。

同規格は、不適合(要求事項を満たさない状態)が見つかったときの是正処置を求めています。再発、または他の箇所での発生を防ぐための取り組みです(箇条10.2)。予防コストの配分先を決めるときは、「今回の不良を直す」費用と、「同じ不良を繰り返さない」費用を分けて考えると整理しやすくなります。

組織の持続的な成功のための指針を示すJIS Q 9004:2018も、改善活動の便益に触れています。改善活動はコスト・時間・エネルギー及び無駄の削減などの便益をもたらし得るとしています(箇条11.2)。

品質コストは、一度だけ集計して終えるものではありません。継続的に数字を確認してください。その運用も、予防コストの検討対象になります。

歩留まり・不良率の記事とのつながり

品質コストは、歩留まりや不良率の改善と切り離して考えるものではありません。3つの指標は、次のように役割が分かれています。

  • 歩留まり:投入した材料や工数に対して、どれだけ良品が得られたかを表す指標
  • 不良率:検査数や生産数に対する不良の発生割合を表す指標(工程ごとに層別して集計すると、どの工程で発生しているかが見えてきます)
  • 品質コスト:予防・評価・失敗にかかる費用を金額で整理する枠組み

この3つを別々に管理していると、どれも「悪化した」ことは分かります。しかし、どれから手を付けるべきかの優先順位が付けにくくなります。

歩留まりの改善から着手するときは、歩留まり改善の進め方を参考にしてください。ロスの分解と条件管理の手順が、内部失敗コストの材料費部分を減らす検討の手掛かりになります。

不良の発生原因を工程までさかのぼって特定したいときは、不良率を下げる原因分析の手順を確認してください。層別・工程能力・なぜなぜ分析が使えます。失敗コストの発生源を分析する方法です。

品質コストの4分類は、この2つの記事で扱う改善活動を、金額という共通のものさしに乗せるための枠組みです。品質・歩留まりのテーマページでは、このほかの関連記事もあわせて確認できます。

よくある質問

Q. 内部失敗コストと外部失敗コストは、何が一番違いますか

A. 不良が見つかる場所です。次のように分類します。

  • 出荷前・社内で見つかった不良:内部失敗コスト
  • 出荷後・納品後に発覚した不良:外部失敗コスト

外部失敗コストで見落としやすいのが時間です。返品・回収の費用に加え、取引先への説明や信用回復にかかる時間も含めて考えてください。

Q. 評価コストを減らすと品質は下がりませんか

A. 評価コストを一律に減らすことと、検査の方法を見直すことは別の話です。中小機構のJ-Net21では、全数検査はコストの増加につながると説明されています。そのうえで、工程の数値を記録し、統計的な管理図で異常を早期に見つける方法が紹介されています。

検査方法は、顧客仕様・契約・法令や規格で指定されている場合があります。指定があるときは、それを満たしてください。管理図による工程監視が、全数検査をそのまま代替できるとは限りません。

Q. 品質管理の専任者がいない工場でも品質コストは把握できますか

A. 既存の記録に必要な内訳が残っていれば、専任者がいないときでも集計に着手できます。新しい集計の仕組みを最初から作る必要はありません。既存の材料費・労務費・外注費・その他の経費の中から、手直しや廃却、クレーム対応にあたる費用を月次で拾い出すところから始められます。

担当は経理と現場で分担する方法も考えられます。まずは把握できる範囲の月次実績を並べてください。内訳の傾向を確認することが先です。

まとめ

  • 品質コストは、予防・評価・内部失敗・外部失敗の4分類で整理すると、費用の所在が見えやすくなる
  • 新しい帳簿を作らなくても、既存記録に必要な内訳が残っていれば、材料費・労務費・外注費・その他経費の中から品質コストを拾い出せる
  • 比率の目安を追うより、まず失敗コストの内訳(内部か外部か、どの工程か)を数字で並べる
  • 予防コストの配分先は、失敗の発生源(社内工程・外注先・出荷後)から判断する
  • 歩留まり改善・不良率の原因分析と組み合わせることで、品質コストは改善活動を金額で評価するものさしになる
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  • #品質管理
編

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