歩留まりを感覚ではなく比較できる数字として管理し、改善の効果を原価で確かめる進め方を整理します。似た指標に良品率と直行率があり、見ている範囲が違います。歩留まりは投入した量に対する産出の割合、良品率は完成した製品のうち基準を満たした割合、直行率は手直しをせず一度で通った割合です。
歩留まりの定義や測定条件が揃っていない状態で目標値だけを決めても、改善につながらないことがあります。先に決めるのは、次の3点です。
- 歩留まりの定義(分母と分子)
- 廃棄不良・端材などの数量ロスを工程ごとに定義し、条件のばらつきで層別すること
- どの工程の切れ目で測るか
この順で揃えてから、はじめて改善策の比較ができます。
同じ「歩留まりが悪い」でも、規格を外れて不良になった分と、切りしろのように最初から製品にならない分では、打ち手が別ものです。1つの数字にまとめるだけでは、どこに手を入れるべきか判断しにくくなります。
以下では、定義の固め方、ロスの数え方、データの取り方、条件管理、そして効果を原価で確かめるところまでを順に整理します。統計の数値は2026年8月時点で公表されているものです。
歩留まりは「分母と分子」を決めないと比べられない
歩留まりの値は、分母と分子に何を入れるかによって変わります。歩留まりは、投入した量に対してどれだけが製品として残ったかを表す割合です。式は単純です。
難しいのは式ではなく、分母と分子に何を入れるかです。分母には重量・個数を使い、工程に応じて金額に換算する方法もあります。
金額を使うときには、投入側と産出側を、同じ評価基準・単価で換算してください。そうすると、価格変動や加工による付加価値が、歩留まりに混ざらずに済みます。
分子は、分母と対応する同じ単位・評価基準で、測ってください。測定範囲も、次のどちらかに固定します。
- 購入した時点から見る
- 工程に投入した時点から見る
分子を「最終検査を通った量」とするか、「手直しをして通った分を含む量」とするかでも数字は変わります。混同しやすい指標に、良品率と直行率があります。手直し分を分子に含めれば歩留まりは高く見えますが、その裏で工数と時間は余分に使われています。
分母と分子の定義を1つに固定し、変更した日付を残すことが、比較できる数字を作る最初の条件です。以下では、手直しをして最終検査を通った分は分子(良品)に含める定義で統一します。
数量ロスは工程ごとに定義し、手直しは原価側で扱う
数量ロスとして最初に数えるのは、廃棄になった不良と端材です。端材は、切りしろ・つかみしろ・余材として残る部分です。投入と良品の差のうち、まず数量ロスとして集計するのは、これらです。
手直しをして最終検査を通った分は、前節の定義どおり良品に含まれます。そのぶん手直しの工数が発生し、工程によっては設備稼働時間も増えるため、これらは後段の「効果は原価で確かめる」で扱います。ここでは、廃棄になった不良と端材を日・号機・作業者・材料ロットで層別し、条件のばらつきとの関係を確認してください。
足し上げる数量の項目は、工程ごとに決めます。手直し品を良品と数量ロスの双方に重複計上しないことが基本です。次のような差異が生じる工程では、自社の物量収支に合わせて項目を追加してください。
- 検査試料
- 工程内残留
- 蒸発・切削による減量
- 棚卸差異
条件のばらつきは、原因側を見るための軸です。

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| 見るもの | 現れ方 | 記録すること | 確認する相手 |
|---|---|---|---|
| 不良(廃棄) | 規格を外れて廃棄になる(量として投入から減る) | 不良の内容、発生工程、ロット番号 | 品質管理、製造の各工程 |
| 端材 | 切りしろ・つかみしろ・余材として残る | 材料の取り方、1枚あたりの取り数 | 設計、生産技術、購買 |
| 条件のばらつき | 日・号機・作業者で出来高が散らばる | 設備の号機、材料ロット、条件設定値 | 設備保全、生産技術 |
工程上、端材を完全になくすことが難しい場合でも、材料の取り方や仕様の見直しで減らせる余地があります。
中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21のビジネスQ&A「原価を下げたいのですが、どういう観点で進めればよいでしょうか?」は、製造原価の構成要素を材料費・加工費・投資に分けています。
そのうえで、製造部門の原価低減活動の具体例として、次を挙げています。
- 材料歩留まりの改善
- セット取り化
- 工程不良の改善
設計段階での過剰機能・過剰仕様の削減も、原価低減の柱として挙げています。部品点数を減らす設計も同じ柱です。つまり、歩留まりは、製造現場だけの指標ではありません。
データは「工程の切れ目」で取る
工場全体で1つの数字しかない状態では、投入から出荷までのどこで量が減ったのかを絞り込みにくくなります。
歩留まりが工場全体で1つの数字しかない状態では、改善対象を絞り込みにくくなります。投入から出荷までのどこで量が減ったのかを見るために、工程の切れ目ごとに数えます。手を付ける順序は次のとおりです。
- 測る場所を決める:投入時、主要な加工の後、最終検査の後を候補に、工程数やロスの出方に応じて増減します
- 単位を決める:比較する区間では同じ単位を使い、重量から個数へ変わる工程は換算条件を決めて記録します
- 記録の担当と時刻を決める:誰が、いつ、どの帳票に書くかを1つに決めます
- 一緒に残す情報を決める:ロット番号、材料ロット、号機、作業者、条件の設定値
- 集計の周期を決める:ロット数や異常の起き方に合わせ、週単位の集計から始める方法があります
4番目が抜けると、層別ができません。不良が特定の号機に偏っているのかは、数字を分けてみて初めて見えてきます。材料ロットで増えているのかも同じです。
条件のばらつきを止める
条件のばらつきは、工程の途中で確かめます。対応は、検査を厳しくすることではありません。同じ条件で同じものができているかを、工程の途中で見る仕組みを作ることです。
J-Net21のビジネスQ&A「不良品を出さないための工程管理方法について教えてください。」は、全数検査は検査費用が大きくなるとしたうえで、抜き取りで得た数値を統計的に処理して工程の状態を見る方法を挙げています。全数検査が必要な工程もあるため、製品のリスクや顧客の要求に応じて使い分けることになります。
管理図では、ばらつき(標準偏差)の3倍を、管理限界(工程が安定しているかどうかを判断する目安の線)とする方法が多く使われます。正規分布を仮定したとき、平均から±3標準偏差の範囲に約99.7%が入るとされています。
これは、工程が規格を満たす割合を直接示すものではありません。管理限界と顧客規格は、分けて扱います。工程能力を見るときに確認するのは、工程のばらつきが顧客の規格の範囲に収まっているかどうかです。
いきなり管理図を導入しなくても、考え方は今日から使えます。日別・号機別の歩留まりを並べ、ばらつきの幅が広い日や設備を先に見てください。同解説は、管理図を使う前に、母集団の平均と分布を調べる標本数100〜400の調査を行うとしています。
効果は原価で確かめる
歩留まりの定義や製品構成などの条件が同じであれば、歩留まりが1ポイント上がると、同じ量の良品を作るのに必要な投入量は減ります。減り方は次の式で出せます。
歩留まりが92%から93%になったとき、1 - 92 ÷ 93 で約1.1%です。
改善前と同じ量の良品を作り、材料単価が変わらないと仮定します。改善前の年間投入材料費が1億2,000万円だとします。そうすると、必要投入量の減少分は、年およそ129万円に相当します。
実際の購入額の減り方は、生産量や在庫、材料単価にも左右されるものです。材料費の削減額と、減った手直し時間を労務費などに換算した額を並べると、改善効果を原価として確認できます。ただし、手直し時間の減少がそのまま支出削減になるとは限らず、残業や外注の削減、生産能力の増加など、実際に生じた効果と分けて確認します。

費用の構造は、部門によって違うものです。総務省ほか10府省庁が共同編集した「令和2年(2020年)産業連関表」(令和6年6月公表、令和7年7月再推計)があります。これによると、国内生産額に占める中間投入の割合は、全体で45.3%です。
中間投入とは、生産のために経常的に購入する原材料・燃料などの財・サービスのことを指します。部門別の値は、次のとおりです。
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| 部門(統合大分類) | 中間投入率 |
|---|---|
| 金属製品 | 49.7% |
| 生産用機械 | 51.5% |
| 飲食料品 | 64.3% |
| 鉄鋼 | 72.9% |
| 非鉄金属 | 79.2% |
利益に対する大きさも、見当が付きます。財務省の「年次別法人企業統計調査(令和6年度)」(令和7年9月1日公表)が、参考になります。これによれば、製造業の実績は次のとおりです。
- 売上高:467兆7,952億円
- 経常利益:40兆3,588億円
ここから売上高経常利益率を算出すると、約8.6%になります。売上高3億円の製造業企業にこの平均を機械的に当てはめると、経常利益は約2,580万円です。先ほどの年129万円相当は、その約5%に当たります。
ただし、129万円がそのまま利益に乗るわけではありません。改善に要した費用や他の変動費を差し引いて確認します。
原価に効く数字を、毎月同じ形で見ていくという点は、材料以外の費目でも同じことが言えます。
電気料金の明細を、項目ごとに分解していく手順については、再エネ賦課金と燃料費調整額。工場の電気料金明細を4つの項目で読むで整理しています。
再加工で設備の運転が増えたときに影響し得る契約電力の決まり方については、契約電力はどう決まる?デマンド監視装置で工場の基本料金を下げる現場手順で整理しています。
よくある失敗
改善が続かない原因の一つとして、数字の定義や扱い方が揃っていないことがあります。
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| よくある失敗 | 内容 |
|---|---|
| 分母を変えて数字だけ良くする | 測る範囲を狭めれば歩留まりは上がります。定義を変えたら必ず併記します |
| 手直しで帳尻を合わせる | 手直し品を分子に含めると歩留まりは高く見えますが、再加工の工数が発生し、工程によっては設備稼働時間も増えます |
| 取引先へ負担を移す | 前掲のJ-Net21のQ&Aは、原価低減で仕入先にだけしわ寄せをすることを戒めています |
| 一過性で終わる | 同Q&Aは、活動を止めると元の状態に戻るため、継続して積み上げることが必要だとしています |
歩留まり改善の第一歩は、投入と産出の差がどこで生まれているかを、継続して同じ定義で説明できる状態にすることです。そのうえで、数量ロスや手直しを減らします。
品質・歩留まりに関する他の切り口は品質・歩留まりのテーマ一覧にまとめています。
よくある質問
歩留まりと良品率、直行率はどう使い分けますか
- 歩留まり:投入した材料に対する産出を見る指標
- 良品率:完成した製品のうち、基準を満たした割合
- 直行率:手直しをせずに一度で通った割合
材料費への影響を見るときは、対象材料の重量を基準にした歩留まりを確認してください。そのうえで、材料単価を掛けて金額に換算する方法があります。金額を直接基準にするときには投入側と産出側の評価方法を揃え、手直しなど工数の無駄を見るときには、直行率と手直し時間を併せて確認します。
歩留まりの目標値はどのくらいが妥当ですか
今回の調査範囲では、業種を横断して使える公的な標準値は確認できませんでした。製品・材料・工程によって、達成できる水準が違うためです。
現実的な進め方は、定義を揃えた自社の実績を製品群や工程ごとに並べることです。そのうえで、品種構成や生産条件を確認します。再現できると判断した水準を、当面の目標候補にします。
他社の数値との比較は、定義が同じと確認できない限り成り立ちません。
データを取る人手が足りないときはどうしますか
法令や顧客要求などで測定が定められた品目は別です。改善目的で新たにデータを取る品目は、すべてを同時に始める必要はありません。次のような品目から、目的に応じて対象を絞ります。
- 投入金額や不良・廃棄額が大きい品目
- 品質リスクの高い品目
記録の頻度はロット数や異常の起き方によりますが、集計は週次から始める方法があります。測定点は、投入・主要工程の後・最終検査の3点を候補にしてください。工程数やロスの発生箇所に応じて増減すれば、記録負担を抑えながら、傾向を把握できることがあります。
まとめ
- 歩留まりの分母と分子を同じ単位で1つに固定し、変更した日付を残す
- 数量ロスは廃棄不良・端材を中心に工程ごとに項目を定義し、手直しの工数は原価側で扱う
- 工程の切れ目で測り、ロット・号機・材料ロットを一緒に残して層別できるようにする
- 条件のばらつきは、日別・号機別の散らばりを見るところから着手する
- 効果は材料費の削減額と手直し時間の換算額を分けて確かめ、実際の支出削減効果は自社の条件で確認する
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。