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歩留まり改善はどう進める?ロスの数え方と原価で確かめる手順

歩留まり改善は定義の固定とロスの数え方から。データの取り方・条件管理・原価での効果確認まで手順で整理します。

テラコッタ色の背景に「歩留まり改善 ロスを数えて層別する」の文字と、金属板から抜き取られた6つの丸い部品のうち1つが不良として橙色で塗られ、端材部分に斜線が入った図版
16品質・歩留まり

歩留まりの定義や測定条件が揃っていない状態で目標値だけを決めても、改善につながらないことがあります。先に決めるのは、①歩留まりの定義(分母と分子)②廃棄不良・端材などの数量ロスを工程ごとに定義し、条件のばらつきで層別すること③どの工程の切れ目で測るか、の3点です。この順で揃えてから、はじめて改善策の比較ができます。

同じ「歩留まりが悪い」でも、規格を外れて不良になった分と、切りしろのように最初から製品にならない分では、打ち手が別ものです。1つの数字にまとめるだけでは、どこに手を入れるべきか判断しにくくなります。

この記事では、定義の固め方、ロスの数え方、データの取り方、条件管理、そして効果を原価で確かめるところまでを順に整理します。統計の数値は2026年8月時点で公表されているものです。

歩留まりは「分母と分子」を決めないと比べられない

歩留まりは、投入した量に対してどれだけが製品として残ったかを表す割合です。式は単純です。

歩留まり(%)= 良品として次工程へ渡せた量 ÷ 投入した量 × 100

難しいのは式ではなく、分母と分子に何を入れるかです。分母には重量・個数を使い、工程に応じて金額に換算する方法もあります。金額を使う場合は、投入側と産出側を同じ評価基準・単価で換算し、価格変動や加工による付加価値が歩留まりに混ざらないようにします。分子は分母と対応する同じ単位・評価基準で測り、購入した時点から見るのか、工程に投入した時点から見るのかという測定範囲も固定します。分子を「最終検査を通った量」とするか「手直しをして通った分を含む量」とするかでも数字は変わります。

混同しやすい指標に良品率と直行率があります。手直し分を分子に含めれば歩留まりは高く見えますが、その裏で工数と時間は余分に使われています。分母と分子の定義を1つに固定し、変更した日付を残すことが、比較できる数字をつくる最初の条件です。この記事では、手直しをして最終検査を通った分は分子(良品)に含める定義で統一します。

注意:工程ごと・製品群ごとに定義が違っていても構いませんが、同じ表に並べる数字は同じ定義で揃えてください。定義を変えた月は、前月と比較できないことを併記しておくと、後から読み違えずに済みます。

数量ロスは工程ごとに定義し、手直しは原価側で扱う

投入と良品の差のうち、まず数量ロスとして集計するのは、廃棄になった不良と端材です。手直しをして最終検査を通った分は前節の定義どおり良品に含まれ、そのぶん手直しの工数が発生し、工程によっては設備稼働時間も増えるため、これらは後段の「効果は原価で確かめる」で扱います。ここでは廃棄になった不良と端材を日・号機・作業者・材料ロットで層別し、条件のばらつきとの関係を確認します。数量として足し上げる項目は工程ごとに定義し、手直し品を良品と数量ロスの双方に重複計上しないことが基本です。検査試料や工程内残留、蒸発・切削による減量、棚卸差異が生じる工程では、自社の物量収支に合わせて項目を追加してください。条件のばらつきは原因側を見るための軸です。

投入した材料から生じる数量ロスの代表例として廃棄不良と端材を示し、残りが良品になる考え方と、そのロスを日・号機・材料ロットで層別することを示した図
図1 ロスを数え、条件で層別する

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見るもの現れ方記録すること確認する相手
不良(廃棄)規格を外れて廃棄になる(量として投入から減る)不良の内容、発生工程、ロット番号品質管理、製造の各工程
端材切りしろ・つかみしろ・余材として残る材料の取り方、1枚あたりの取り数設計、生産技術、購買
条件のばらつき日・号機・作業者で出来高が散らばる設備の号機、材料ロット、条件設定値設備保全、生産技術

工程上、端材を完全になくすことが難しい場合でも、材料の取り方や仕様の見直しで減らせる余地があります。中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21のビジネスQ&A「原価を下げたいのですが、どういう観点で進めればよいでしょうか?」は、製造原価の構成要素を材料費・加工費・投資に分けたうえで、製造部門の原価低減活動の具体例として材料歩留まりの改善やセット取り化、工程不良の改善を挙げています。設計段階での過剰機能・過剰仕様の削減や部品点数を減らす設計も原価低減の柱として挙げており、歩留まりは製造現場だけの指標ではありません。

データは「工程の切れ目」で取る

歩留まりが工場全体で1つの数字しかない状態では、改善対象を絞り込みにくくなります。投入から出荷までのどこで量が減ったのかを見るために、工程の切れ目ごとに数えます。手を付ける順序は次のとおりです。

  1. 測る場所を決める:投入時、主要な加工の後、最終検査の後を候補に、工程数やロスの出方に応じて増減します
  2. 単位を決める:比較する区間では同じ単位を使い、重量から個数へ変わる工程は換算条件を決めて記録します
  3. 記録の担当と時刻を決める:誰が、いつ、どの帳票に書くかを1つに決めます
  4. 一緒に残す情報を決める:ロット番号、材料ロット、号機、作業者、条件の設定値
  5. 集計の周期を決める:ロット数や異常の起き方に合わせ、週単位の集計から始める方法があります

4番目が抜けると層別ができません。不良が特定の号機に偏っているのか、材料ロットで増えているのかは、数字を分けて初めて見えます。

条件のばらつきを止める

条件のばらつきへの対応は、検査を厳しくすることではありません。同じ条件で同じものが出来ているかを、工程の途中で見る仕組みをつくることです。

J-Net21のビジネスQ&A「不良品を出さないための工程管理方法について教えてください。」は、全数検査は検査費用が大きくなるとしたうえで、抜き取りで得た数値を統計的に処理して工程の状態を見る方法を挙げています。全数検査が必要な工程もあるため、製品のリスクや顧客の要求に応じて使い分けることになります。管理図では、ばらつき(標準偏差)の3倍を管理限界とする方法が多く使われ、正規分布を仮定した場合、平均から±3標準偏差の範囲に約99.7%が入るとされています。これは工程が規格を満たす割合を直接示すものではなく、管理限界と顧客規格は分けて扱います。

工程能力を見るときに確認するのは、工程のばらつきが顧客の規格の範囲に収まっているかどうかです。いきなり管理図を導入しなくても、考え方は今日から使えます。日別・号機別の歩留まりを並べ、ばらつきの幅が広い日や設備を先に見る。同解説は、管理図を使う前に母集団の平均と分布を調べる標本数100〜400の調査を行うとしています。

効果は原価で確かめる

歩留まりの定義や製品構成などの条件が同じであれば、歩留まりが1ポイント上がると、同じ量の良品をつくるのに必要な投入量は減ります。減り方は次の式で出せます。

必要な投入量の削減率(%)=(1 - 改善前の歩留まり ÷ 改善後の歩留まり)× 100

歩留まりが92%から93%になった場合、1 - 92 ÷ 93 で約1.1%です。改善前と同じ量の良品をつくり、材料単価が変わらないと仮定して、改善前の年間投入材料費が1億2,000万円だとすると、必要投入量の減少分は年およそ129万円に相当します。実際の購入額の減り方は、生産量や在庫、材料単価にも左右されます。材料費の削減額と、減った手直し時間を労務費などに換算した額を並べると、改善効果を原価として確認できます。ただし手直し時間の減少がそのまま支出削減になるとは限らず、残業や外注の削減、生産能力の増加など、実際に生じた効果と分けて確認します。

歩留まりの差から必要投入量の差と材料費の差を求め、手直し時間を労務費に換算して原価で確認する流れを示した図
図2 歩留まりの差を原価に置き換える順序

費用の構造は部門によって違います。総務省ほか10府省庁が共同編集した「令和2年(2020年)産業連関表」(令和6年6月公表、令和7年7月再推計)によると、国内生産額に占める中間投入(生産のために経常的に購入する原材料・燃料等の財・サービス)の割合は全体で45.3%で、部門別には次の値です。

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部門(統合大分類)中間投入率
金属製品49.7%
生産用機械51.5%
飲食料品64.3%
鉄鋼72.9%
非鉄金属79.2%
補足:中間投入には原材料のほか燃料や外注などのサービスも含まれ、設備の購入費用は含まれません。産業全体の集計値でもあるため、この数値だけで材料歩留まりの効果額や加工費の比重は判断できません。歩留まり1ポイントの金額は、自社の対象材料費と改善前後の歩留まりで試算してください。

利益に対する大きさも見当が付きます。財務省の「年次別法人企業統計調査(令和6年度)」(令和7年9月1日公表)では、製造業の売上高が467兆7,952億円、経常利益が40兆3,588億円で、ここから売上高経常利益率を算出すると約8.6%です。売上高3億円の製造業企業にこの平均を機械的に当てはめると経常利益は約2,580万円となり、先ほどの年129万円相当はその約5%に当たります。ただし129万円がそのまま利益に乗るわけではなく、改善に要した費用や他の変動費を差し引いて確認することになります。

原価に効く数字を毎月同じ形で見る点は、材料以外の費目でも同じです。電気料金の明細を項目ごとに分解する手順は再エネ賦課金と燃料費調整額。工場の電気料金明細を4つの項目で読むで、再加工で設備の運転が増えたときに影響し得る契約電力の決まり方は契約電力はどう決まる?デマンド監視装置で工場の基本料金を下げる現場手順で整理しています。

よくある失敗

改善が続かない原因の一つとして、数字の定義や扱い方が揃っていないことがあります。

  • 分母を変えて数字だけ良くする:測る範囲を狭めれば歩留まりは上がります。定義を変えたら必ず併記します
  • 手直しで帳尻を合わせる:手直し品を分子に含めると歩留まりは高く見えますが、再加工の工数が発生し、工程によっては設備稼働時間も増えます
  • 取引先へ負担を移す:前掲のJ-Net21のQ&Aは、原価低減で仕入先にだけしわ寄せをすることを戒めています
  • 一過性で終わる:同Q&Aは、活動を止めると元の状態に戻るため、継続して積み上げることが必要だとしています
歩留まり改善の第一歩は、投入と産出の差がどこで生まれているかを、継続して同じ定義で説明できる状態にすることです。そのうえで、数量ロスや手直しを減らします。

品質・歩留まりに関する他の切り口は品質・歩留まりのテーマ一覧にまとめています。

よくある質問

歩留まりと良品率、直行率はどう使い分けますか

投入した材料に対する産出を見るのが歩留まり、完成した製品のうち基準を満たした割合が良品率、手直しをせずに一度で通った割合が直行率です。材料費への影響を見るときは、対象材料の重量を基準にした歩留まりを確認し、材料単価を掛けて金額に換算する方法があります。金額を直接基準にする場合は、投入側と産出側の評価方法を揃えます。手直しなど工数の無駄を見るときは、直行率と手直し時間を併せて確認します。

歩留まりの目標値はどのくらいが妥当ですか

本記事の調査範囲では、業種を横断して使える公的な標準値は確認できませんでした。製品・材料・工程によって達成できる水準が違うためです。定義を揃えた自社の実績を製品群や工程ごとに並べ、品種構成や生産条件を確認したうえで、再現できると判断した水準を当面の目標候補にする進め方が現実的です。他社の数値との比較は、定義が同じと確認できない限り成り立ちません。

データを取る人手が足りないときはどうしますか

法令や顧客要求などで測定が定められている品目を除き、改善目的で新たにデータを取る品目は、すべてを同時に始める必要はありません。投入金額や不良・廃棄額が大きい品目、品質リスクの高い品目などから、目的に応じて対象を絞ります。記録の頻度はロット数や異常の起き方によりますが、集計は週次から始める方法があります。投入・主要工程の後・最終検査の3点を候補とし、工程数やロスの発生箇所に応じて測定点を増減すれば、記録負担を抑えながら傾向を把握できる場合があります。

まとめ

  • 歩留まりの分母と分子を同じ単位で1つに固定し、変更した日付を残す
  • 数量ロスは廃棄不良・端材を中心に工程ごとに項目を定義し、手直しの工数は原価側で扱う
  • 工程の切れ目で測り、ロット・号機・材料ロットを一緒に残して層別できるようにする
  • 条件のばらつきは、日別・号機別の散らばりを見るところから着手する
  • 効果は材料費の削減額と手直し時間の換算額を分けて確かめ、実際の支出削減効果は自社の条件で確認する
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  • #材料歩留まり
  • #統計的品質管理
  • #工程能力

編集確認

株式会社恒電社 編集部

製造業の電気設備・自家消費型太陽光の現場に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。

読んだあと、実行へ

品質ロスと歩留まりの改善候補を、工程別に整理します。

不良・手直し・材料ロスを切り分け、改善の優先順位を考えるための相談導線です。詳細は今後更新します。

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