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契約電力はどう決まる?デマンド監視装置で工場の基本料金を下げる現場手順

デマンド監視装置と契約電力の関係を整理。30分値1年分の読み方、同時起動をずらす3手、警報を運用に落とす手順を公開資料で解説します。

一日分の30分ごとの電力を並べた棒グラフ。中央付近の一本だけがオレンジで最も高く、その頂点から右へ水平の破線が伸びている
10エネルギー

高圧で受電している工場の基本料金は、契約電力と基本料金単価をもとに、力率による割引・割増などを反映して計算されます。このうち契約電力500kW未満の高圧契約では、30分単位で平均した使用電力(デマンド値)の月内最大値を当月と前11か月で比べ、最も大きかった値が契約電力になります(関西電力「高圧(契約電力500kW未満)」・2026年8月時点)。

ある30分の値が当月と前11か月の中で最大になると、より高い値が出ない限り、最大12か月にわたって契約電力に効きます

本メディア運営会社の電気設備工事の現場では、次の順で検討しています。30分値を1年分取り寄せてピークが立った日時と設備を特定する、同時に立ち上がっている負荷をずらす、警報が鳴ったときに止めるものを決めてからデマンド監視装置を使う——の3段です。

以下、30分値の読み方、ピークのずらし方、監視装置の使いどころと限界を、公開資料をもとに整理します。仕組みそのものの詳しい説明はデマンド(最大需要電力)とは?夏の30分で工場の基本料金が決まる仕組みにまとまっています。

契約電力は「当月と前11か月の最大値」で決まる

高圧受電では、電力量計が30分単位で平均した使用電力を記録します。その月の記録のうち一番大きかったものが、その月の最大需要電力です。関西電力「高圧(契約電力500kW未満)」は、この方式を「過去1年間(その月と前11ヶ月)の最大需要電力により、契約電力を決定する制度」と説明しています(2025年4月1日実施の料金表にもとづく解説)。

基本料金(円/月)= 契約電力(kW)× 基本料金単価(円/kW・月)(力率による割引・割増を加減)

500kW以上では扱いが変わります。東北電力「契約電力について」は、最大需要電力が500kW以上となる場合は同社と協議のうえ決定するとしています。中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、500kW以上では協議で契約電力を決め、最大需要電力がそれを超えると割増の違約金を支払うことになると説明しています。具体的な扱いは契約先の約款で確認する項目です。

力率も基本料金に効きます(詳しくは力率割引で基本料金は何%変わる?進相コンデンサの点検で工場が確認したいこと)。関西電力の計算例では、力率85%を基準に基本料金を増減させる形が示されています。条件は契約先で異なります。

最初に揃えるのは、30分値1年分と明細12か月分

先に触れた現場の段取りでは、省エネや設備投資の検討に入る前に30分値1年分を先に取り寄せることを標準にしています。年間の使い方が30分刻みで並ぶため、いつ負荷が立つかを数字で確認できます。

30分値の提供可否や依頼先は契約によって異なるため、まず契約中の小売電気事業者に確認します。契約先から月次の「デマンドカレンダー」が提供されている工場もあり、その場合は日別の記録が月単位で残っています。年間分を表計算ソフトに集約すると、月をまたいだ比較ができます。

30分値データ・電気料金明細・デマンドカレンダー・稼働記録の4資料と、年・月・日・時限の中の順に見ていく流れを並べた図
図3 検討前に揃える資料と、見ていく順序

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揃える資料入手先読み取れること
30分値データ(直近1年)契約先に確認(提供主体・取得方法は契約による)ピークの日時と立ち上がりの形
電気料金明細(12か月)社内の経理・請求書控え記載がある場合の契約電力・最大需要電力・力率の推移
デマンドカレンダー契約先から提供がある場合日別の最大値と発生時刻
設備の稼働記録・運転計画生産管理・設備保全ピーク時に動いていた工程

明細のどの行を見るかは再エネ賦課金と燃料費調整額。工場の電気料金明細を4つの項目で読むで整理しています。

30分値は4つの問いで読む

データを開いただけでは打ち手になりません。次の順で絞ると、ピークが立った日時と、そのとき動いていた設備の組み合わせまで到達できます。

  1. 年で見る:500kW未満の実量制では、12か月ぶんの月内最大値を並べ、いまの契約電力の基準になっている月を特定する
  2. 月で見る:その月の最大値が単発の突出か、何日も同じ水準で出ているかを見る
  3. 日で見る:立ち上がりの時刻を押さえる。始業直後、昼休み明け、空調の起動時間など、複数設備の運転が重なる時間帯と照合する
  4. 時限の中を見る:30分値のデータからは時限内の推移は分からない。前半に負荷が寄っているかどうかは、監視装置や別途の計測で確認する

4番目が実務では効きます。関西電気保安協会の解説には、ある時限の前半15分が500kW・後半15分が100kWなら、その30分の平均は300kWになるという例が示されています。

デマンド値は瞬間値ではなく30分の平均です。平均を下げるには、負荷の一部を別の時限へ移す、稼働時間を短くする、使う電力そのものを抑える、のいずれかが要ります。同じ時限の中で順序を入れ替えるだけでは、その時限で使う電力量が同じなら平均は変わりません。

12か月分の最大需要電力を棒グラフで並べ、ある月の最大値が、より高い値が出ない限り最大12か月にわたって契約電力に影響することを示した図
図1 30分値の最大が契約電力を決める

ピーク時刻が分かったら、生産管理と設備保全に「その時間に何が動いていたか」を確認し、稼働記録から同時稼働していた設備の組み合わせを絞り込みます。

ピークをずらす3手——起動時刻・時限の分散・止める順番

重なりが特定できたら、大きな設備更新の前に検討できる運用上の手が3つあります。同時に立ち上げないという原則を、時刻・時限・優先順位の3方向から実装します。制御の方法によっては、タイマーや制御盤の改修、配線工事が必要になる場合があります。

ピークをずらす3手として、起動時刻をずらす・別の時限へずらす・止める順番を決める、の3つを負荷の図とともに並べた図
図2 ピークをずらす3手

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やること確認すること相談する相手
起動時刻をずらす空調・圧縮機・加熱設備の立ち上げ時刻を分散する立ち上げ待ちが出る工程はないか生産管理・設備保全
別の時限へずらす同種設備の稼働を異なる30分時限に分ける移動先の時限で新たなピークを作らないか設備保全・電気主任技術者
止める順番を決める警報時に落とす設備と順序を決めて掲示する品質・安全に影響する工程を外してあるか工程責任者・電気主任技術者

始業時に空調と圧縮機と加熱設備が同時に立ち上がる工場では、起動時刻を分散するだけで山の高さが変わることがあります。圧縮機については、エア漏れや吐出圧力の設定もあわせて、運転状況を確認します。

止める順番は、事前に決めておかないと機能しません。中小企業基盤整備機構のJ-Net21 省エネQ&A「契約電力と30分デマンド値の関係について教えてください。」には、監視装置を設置して超過しそうなときに管理者の指示で生産設備を短時間止めていた工場が、最大電力を記録した日に管理者が不在で超過してしまった例が紹介されています。

同記事は、設備停止の優先順位をマニュアル化し、現場だけで対応できるようにすることを挙げています。

デマンド監視装置の使いどころと限界

北海道電力「デマンド監視制御装置による省エネ・節電のご紹介」は、目標値をあらかじめ設定し、警報や設備の自動しゃ断などにより最大需要電力を抑制する装置と説明しています。警報だけの製品と、制御まで行う製品があります。

同社の説明では、紹介されている装置の設置には、接続のための配線工事と、需要電力を計測するための計量信号(パルス)が必要とされています。配線や接続の対象は機種・制御方法によって変わるため、電気主任技術者と電気工事会社に確認する範囲です。

中部電気保安協会は、デマンド監視装置の活用でデマンド値(契約電力)が10kW下がった場合の基本料金メリット試算例として、業務用電力で約20万円/年、高圧電力で約16万円/年を示しています(同協会「電力デマンド監視システム」)。金額は契約種別と単価で変わります。

J-Net21の省エネQ&Aには、契約電力320kW・目標電力300kW・基本料金単価1,269円/(kW・月)・受電力率100%という原資料の条件で、年間約259千円という試算例も載っています。いずれも前提つきの例です。自社の単価と契約電力に置き換えて確かめます。

関西電気保安協会「デマンド料金制とは」は、装置を設置するだけではデマンド値は低減せず、設備の効率的運用のために負荷の制限が必要だとしています。警報が鳴ったときに何を止めるかを先に決めることが、装置を入れるかどうかより前に来ます。

警報型なら警報が出たあとに何を止めるかを、自動制御型なら制御の対象と優先順位を、設置より先に決めておく必要があります。

— 編集部

手続きの確認も要ります。北海道電力は、同社の制度において、デマンド監視制御装置の設置による契約電力の減少には申し込みや協議が必要としています。扱いは契約先・契約種別によって異なります。

補足:本メディアの運営会社は電気設備工事会社であり、受変電設備の改修や計測機器の設置に関わる立場です。料金の計算方法・力率の扱い・契約電力の変更手続きは契約種別によって異なります。自社の条件は、契約中の電力会社の料金表・約款と、選任または委託している電気主任技術者に確認してください。

よくある質問

デマンドの「30分平均」とは、どの30分のことですか

毎時0分から30分、30分から60分という固定の区切りです(関西電気保安協会の解説)。瞬間の電力値ではなく、その30分に使った電力量から求めた平均値を指します。

契約電力は過去1年のどの範囲で決まりますか

契約電力500kW未満の高圧受電では、当月と前11か月の最大需要電力のうち最も大きい値です。通常の実量制では、その値が比較対象から外れるまで、それより低い契約電力にはなりません。500kW以上は電力会社との協議で決まります(東北電力「契約電力について」)。

ピークカットで生産に影響が出ませんか

生産への影響は、設備の特性・工程条件・止める対象と時間によって変わります。中部電気保安協会は、ピーク時の電力を他の時間帯に移行・停止することで、生産量を落とさずに負荷率を向上できる場合があると説明しています。個別の設備で保証されるものではないため、止める設備と順番を先に決め、品質・安全に関わる工程を外しておくことが前提です。

まとめ

  • 基本料金は契約電力と単価をもとに力率調整を反映して決まる。500kW未満の高圧受電では、当月と前11か月の月内最大値のうち最大のものが契約電力になる(関西電力・2026年8月時点)
  • 着手は30分値1年分と明細12か月分の取り寄せから。年・月・日・時限の中、の順に絞る
  • 大きな設備更新の前に検討できるのは、起動時刻をずらす・別の時限へずらす・止める順番を決める、の3手
  • デマンド監視装置は警報型・自動制御型とも、設置するだけでなく、停止・制御する負荷と優先順位を設定し、実際に負荷制限が働く運用にする必要がある(関西電気保安協会)
  • 効果の目安や契約電力の減少手続きは契約先で異なるため、料金表・約款で確認する

エネルギー分野のほかの論点はエネルギーのテーマページにまとめています。

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株式会社恒電社 編集部

製造業の電気設備・自家消費型太陽光の現場に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。

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