内示(ないじ)は、製造の取引で、先々の数量や時期の見込みを伝える情報として使われます。受け取ったら、まず数量の見込みと、材料手配・製造着手の依頼を分けて確認します。書類の名前だけで扱いを決めないことが出発点です。
「来月は1,000個の予定」と聞いても、1,000個分の材料を今すぐ買ってよいかは別の確認です。発注する側と受ける側で、この点を合わせます。実際に製造を委託する段階では、対象取引に必要な条件の明示も欠かせません。
確認する順序は、届いた情報の版、着手する範囲、未定事項、変更時の扱いです。以下は2026年9月8日に確認した公正取引委員会の資料に基づきます。法令上の義務と、社内で使う確認表の提案を分けて整理します。
内示と発注は、名前より「何を頼んだか」を確認する
内示を受けたときは、見込みの共有なのか、具体的な手配や製造を求めているのかを相手に確かめます。名前だけでは判断できません。数量表に書かれた納期と、実際の作業開始日も並べて見てください。
たとえば納入予定が来月でも、材料の調達には時間がかかる場合があります。そこで発注側が先行手配を求めるなら、対象の材料や数量を具体的にします。「いつもの内示だから」という理解だけで進めると、どこまで依頼したかが残りません。
←→ 横にスクロールできます
| 確認する情報 | 相手と揃える内容 | 社内で見る担当 |
|---|---|---|
| 数量の見込み | 対象品番、対象期間、更新日 | 営業・生産管理 |
| 先行手配の依頼 | 材料、数量、手配の開始時期 | 購買・生産管理 |
| 製造着手の依頼 | 対象工程、仕様の版、納期 | 製造・営業 |
| 未定の条件 | 未定の理由、確定予定日、連絡担当 | 営業・購買 |
この表は、届いた情報を読み合わせるためのものです。契約が成立したかを自動判定する表ではありません。判断が食い違う取引は、やり取りと基本契約を揃えて、法務担当や契約を確認する専門家に見てもらいます。
製造を委託する段階では、条件の明示を後回しにしない
取適法の対象取引では、発注内容などを発注時に直ちに明示する必要があります。取適法は、中小受託事業者への代金支払などを定める法律です。すべての企業間売買が同じ条件で対象になるわけではありません。
公正取引委員会の「取適法の概要」では、資本金規模または従業員基準と、取引の内容で対象を定めています。まず適用の確認です。自社が発注する取引と受注する取引を分け、購買・法務で確認します。
同委員会の「委託事業者の義務」は、書面または電磁的方法による明示を説明しています。電磁的方法とは、電子的に情報を伝える方法です。給付の内容、受領する期日・場所、代金、支払期日などを示します。
給付の内容は、相手に作ってもらうものや行ってもらう仕事の内容です。品番だけで仕様を特定できないなら、図面の版なども確認します。必要な明示事項の全体は公式資料で照合してください。社内の管理表と相手への明示は、用途が違います。
公取委の「よくある質問コーナー(取適法)」Q49・Q50は、電話注文や契約書の完成が遅れる場合も扱っています。契約書が後になることを理由に、発注時の明示まで待たせない点が要所です。電話で急ぎの製造を頼むときも、条件を伝える担当を決めます。
単価や仕様が未定なら、理由と確定予定日を管理する
未定事項があっても、発注内容のすべてを後日に回してよいとはいえません。正当な理由の確認が必要です。公取委Q54・Q55では、未定の理由や確定予定期日を明示し、確定後に直ちに補充する扱いを説明しています。
たとえば、どの仕様が決まらず、いつ誰から回答を受ける予定なのかを分けて記録します。「調整中」だけでは追えません。確定予定日は、担当者が次の確認日を決められる具体的な日として管理してください。

顧客にいくらで売れるかと、委託先にいくら払うかも分けて考えます。公取委Q59では、委託する給付内容が定まっている場合、顧客への引渡代金が未定でも、委託代金を定められない正当な理由にならないとしています。売価待ちを、そのまま単価未定の説明にしないことです。
未定事項の管理には、当初の依頼と後の連絡を結び付ける番号が役立ちます。品番だけでは足りない場合があります。同じ品番を複数回頼むなら、対象期間や発注番号も添え、どの依頼を補ったか追える形にします。
確定後は、社内表を埋めるだけで終わらせません。相手への補充の明示も必要です。営業・購買が送った内容と、生産管理が工程へ反映した内容を照合すると、連絡済みなのに現場が旧版を見ていたというずれを確認できます。
材料の先行手配は、見込み数量と分けて記録する
先行手配をする場合は、内示の総数とは別に、今回手配する材料の数量を記録します。上限を思い込まないことです。費用負担や数量変更時の扱いも、相手との協議内容を残します。
説明用の例として、製品の見込みが1,000個、先行して買う材料が600個分だとします。その後の製品数量が400個になった場合、差として確認する材料は200個分です。内示と確定数量の差600個を、そのまま材料余りとは数えません。
材料が別の製品に使えるか、まだ購入を取り消せるかでも対応は変わります。金額の確定は次の段階です。購買が材料の手配状況を調べ、営業が相手との合意内容を確認してから、負担の協議に必要な事実を揃えます。
まとめ買いの単価だけで手配量を決めないことも大切です。数量による費用の変わり方は、発注ロットと購買コストの試算で確認できます。内示の確かさと、材料をまとめて買う経済性は分けて検討します。
数量が変わったら、旧版を残して変更理由を追う
内示や発注内容を更新するときは、元の情報を残して変更箇所を追えるようにします。上書きだけでは比較できません。変更日、対象品番、変更前後の数量、理由、相手へ伝えた日を一組にします。
取適法の対象取引では、公取委の「委託事業者の義務」に、変更内容と理由、代金の増減とその理由も記録事項として示されています。社内の変更表は、その確認にも使える形にします。保存すべき事項の全体は、担当者が公式資料と照合してください。
変更連絡を受けた営業だけで処理を閉じると、材料の購入や製造が進み続けるおそれがあります。そこで関係する工程を確認します。購買は注文済みの材料、製造は着手済みの数量、生産管理は残りの計画をそれぞれ返す運用です。
- どの版からどの版へ変わったかを示す
- 手配済み・着手済み・未着手を分ける
- 費用負担の協議結果と未解決事項を残す
- 相手と社内の関係担当へ同じ変更を伝える
数量差の把握と、費用負担の合意は別の作業です。余った材料の処分を先に決めず、転用の可否と契約条件を確認します。すでに滞留したものの整理は、滞留在庫の判定と対応手順を参照してください。
よくある質問
内示書なら、取り消しても費用はかかりませんか
書類の名前だけでは決められません。依頼の内容、実際の着手、相手との合意などを確認する必要があります。無償で取り消せると自己判断せず、やり取りを揃えて契約を確認する担当へ渡します。
未定と書けば、単価は後から決めてもよいですか
未定という記載だけで済むものではありません。対象取引では、未定の正当な理由や確定予定期日、確定後の補充などを確認します。具体額が未確定でも、発注時に算定方法を明示できる場合は、その方法を明示する必要があります(公取委Q56)。
管理表を作れば、発注書は不要になりますか
社内で管理する表を作っただけでは、相手への明示を済ませたことにはなりません。必要な事項を、適切な方法で相手に明示する必要があります。管理表は確認の補助です。実際の明示方法は購買・法務担当で照合します。
まとめ
- 内示の見込み数量と、手配・着手の依頼を分けて確認する
- 取適法の適用を確認し、対象取引は発注時の明示を後回しにしない
- 未定事項は理由・確定予定日・補充まで追う
- 先行材料の数量と、変更時の協議結果を残す
- 変更前後の版を保存し、営業・購買・製造で同じ内容を見る
まずは、いま届いている内示1件と、材料の手配状況を並べるところから始めます。曖昧な依頼を具体化する作業です。条件の確認を広げるときは、調達・材料費のテーマページから関連する判断手順を確認できます。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。