共同購買は、複数の事業者が同じ資材や物品をまとめて購入する仕組みです。1社あたりの購入量が少なくても、数量をまとめて仕入条件を交渉できます。規格を共通にできる品目について検討する方法です。
共同購買では、誰が取りまとめ、どの条件で行うかにより、独占禁止法上の評価が変わります。法律に基づいて設立され、独占禁止法第22条の要件を満たす事業協同組合が一定の範囲で行う共同購買は、原則として適用が除外されます。
一方、任意に集まった企業グループが事業者団体にあたる場合、その共同購買は公正取引委員会の指針で「違反となるおそれがある行為」に挙げられています。
この記事では、共同購買を行う主体の違い、組合を作る要件、禁止行為に関する注意点、始める前の確認順序を説明します。
共同購買は協同組合の共同事業として定められている
事業協同組合が行える事業は、中小企業等協同組合法の第9条の2第1項に列挙されています。その第1号が「生産、加工、販売、購買、保管、運送、検査その他組合員の事業に関する共同事業」です。ここでいう購買が、共同購買にあたります。組合がまとめて買い、組合員へ供給する形です。
関心が高まる背景には仕入価格があります。日本銀行の企業物価指数(2026年7月速報)では、国内企業物価指数が前年比+7.2%、円ベースの輸入物価指数が前年比+29.1%でした。2020年平均を100とした水準は次のとおりです。
企業物価指数の水準(2020年平均=100)
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| 指数 | 2026年7月の水準 |
|---|---|
| 国内企業物価 | 135.8 |
| 輸出物価(円ベース) | 163.0 |
| 輸入物価(円ベース) | 199.7 |
輸入物価の上昇が調達コストに響く工場では、単価だけでなく数量の束ね方を見直す契機になります。数量をまとめて条件を動かすのが、共同購買の発想です。発注量そのものの見直しは、発注ロットの損益を試算する考え方をまとめた記事で扱っています。
協同組合と任意の企業グループで扱いが異なる
ここが共同購買のいちばん大事な分岐です。独占禁止法の第22条は、一定の要件を備えて法律の規定に基づいて設立された組合の行為には、この法律を適用しないと定めています。公正取引委員会の「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」も、協同組合等が一定の範囲で行う共同経済事業は原則として適用が除外される、と書いています。
一方、任意の事業者団体になると扱いは別です。共同購買では、対象となる商品の価格や数量、取引先といった重要な競争手段が、共同事業の中で決まります。そこで指針は「他の種類の共同事業に比べて独占禁止法上問題となる可能性が高い」とし、共同購買を行うこと自体を「違反となるおそれがある行為」に挙げています。
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| 主体 | 独占禁止法上の扱い | 外れる条件 |
|---|---|---|
| 第22条の要件を満たす事業協同組合 | 一定の範囲の共同経済事業について原則として適用除外 | 同条ただし書(不公正な取引方法/不当な対価の引上げ)に触れる場合、他の組合や事業者と共同して価格・数量の制限を行う場合 |
| 事業者団体にあたる企業グループ | 指針で「違反となるおそれがある行為」 | 参加事業者の市場シェアの合計が、競争に影響を与えない程度に低い場合は原則として違反とならない |
| 事業者団体にあたらない企業間の共同行為 | 指針の事業者団体の基準ではなく、独占禁止法第3条などで個別に評価 | — |
参加事業者の市場シェアは、市場全体に占める割合です。指針は、その合計が高いほど問題となる可能性が高いとしています。また適用除外は、組合の全活動をまとめて対象外にするものではありません。組合の要件と個々の行為を確かめて判断します。

表の「不当な対価の引上げ」は、一定の取引分野の競争を実質的に制限することによって生じる場合を指します。
組合の設立・規模・利用範囲の要件を確認する
組合という名称だけで適用除外になるわけではありません。独占禁止法第22条は、次の4つの要件を定めています。
- 小規模の事業者または消費者の相互扶助を目的とすること
- 任意に設立され、組合員が任意に加入し、または脱退できること
- 各組合員が平等の議決権を有すること
- 組合員に利益分配を行う場合は、その限度が法令または定款に定められていること
組合員である事業者の規模にも判断基準があります。第22条第1号の小規模事業者という要件との関係で、中小企業等協同組合法の第7条が置いている基準です。資本金の額または出資の総額が3億円を超えない法人、または常時使用する従業員の数が300人を超えない事業者が挙げられています。
業種による区分もあります。卸売業は1億円または100人、小売業は5,000万円または50人、サービス業は5,000万円または100人です。
上記の規模に当てはまらない事業者を組合員に含む場合、小規模事業者の要件を満たすかどうかを判断する権限は、公正取引委員会にあります。
組合の設立には、組合員になろうとする4人以上が発起人となり、行政庁の認可を受ける必要があります。設立後も、1事業年度の組合員以外の利用分量は、組合員の利用分量の20%を超えられません。これは第9条の2第3項の原則です。対象事業と利用分量の算定方法は、所管行政庁に確認してください。
個別取引の価格統一や参加の強制を避ける
組合でも任意のグループでも、次の行為は問題になり得ます。共同購買の対象だけでなく、各社が個別に行う取引への制限も確認します。
- 団体が、組合・団体自身が行う共同購買とは別に、各構成事業者が個別に行う取引の仕入価格を決定・統一すること
- 団体が、各構成事業者とそれぞれの取引相手との個別の取引価格を決定・統一し、または共同して交渉させること
- 共同事業への参加や利用を構成事業者に強制すること、参加しない事業者を差別的に取り扱うこと
- 団体が参加企業に他の仕入先との取引を禁じるなど、排他的な取決めで非参加企業や他の仕入先の取引機会を妨げること
指針には、共同購入を実施する団体が、地区内の原材料を一切管理し、団体以外から購入しないと決めた事件が紹介されています。この行為は、事業者団体の禁止行為に当たるとされています。
各社が単独でも別の仕入先からでも購入できる自由を残すかが、実務上の確認事項の一つです。共同購買以外で買えない状態を作ると、独占禁止法上の問題となるおそれが高まります。ただし単独購買を認めるだけで適法になるわけではありません。市場シェア、数量・取引先の制限、参加企業間の情報交換も合わせて評価します。

品目・参加者・主体を整理して専門家へ確認する
最初に、各社で仕様を共通にでき、品質のばらつきが結果を左右しない品目を選びます。副資材、梱包材、消耗工具、燃料などが候補です。主要な原材料は仕様や検査条件が異なるため、まとめにくくなります。
- 共通で使える品目を洗い出す。各社の仕様書を突き合わせ、同一品として扱える範囲を決める
- 参加する顔ぶれの市場での位置を確認する。同じ製品市場で競合が集まるなら、指針の考え方に照らして慎重に見る
- 主体を決める。組合を設立するのか、既存の組合の事業を使うのか、任意の取りまとめにとどめるのか
- 決めてよいことと決めてはいけないことを文書にする。販売価格・生産数量・取引先の制限には触れない
- 参加も脱退も自由であることを明文化する。単独購買を禁じない
- 弁護士または公正取引委員会の相談窓口に、決めた内容を当てて確認する
仕入先との条件交渉そのものの進め方は、値上げ要請への対応手順を整理した記事が参考になります。
よくある質問
共同購買と共同購入は何が違うか
法律の条文では「購買」という語が使われます。中小企業等協同組合法の第9条の2第1項第1号が「購買」を組合の共同事業として挙げています。公正取引委員会の指針でも「共同購買」が用いられます。一般に見かける「共同購入」は同じ内容を指す言い方です。
組合を作らず数社で始められるか
実行前に、参加者の市場シェアと共同購買の内容を専門家へ確認してください。始めること自体を禁じる条文はありませんが、指針は任意の事業者団体による共同購買を、違反となるおそれがある行為に挙げています。一方、市場シェアの合計が競争に影響を与えない程度に低い共同事業は、原則として違反とならないとしています。
共同で値下げを交渉すると問題になるか
共同購買の主体が、その共同購買の仕入条件を仕入先と交渉すること自体まで一律に禁じられてはいません。問題になるのは、団体が各参加企業の個別の取引価格を統一したり、共同購買の範囲を超えて価格交渉を共同化したりする行為です。共同購買では、数量や仕様、発注方法などを束ねた共同購買分について仕入条件を交渉します。調達・材料費テーマの記事一覧では、単価交渉に頼らない改善の論点も扱っています。
取りまとめの形と競争への影響を確認して進める
- 共同購買は、中小企業等協同組合法が組合の共同事業として認めている「購買」にあたります
- 第22条の要件を満たす組合が一定の範囲で行う共同購買は、原則として適用が除外されます
- 事業者団体にあたる企業グループの共同購買は、指針で違反となるおそれがある行為に挙げられています
- 第22条の小規模事業者要件との関係では、資本金3億円以下または従業員300人以下などの規模基準があります
- どの形でも、各社の個別取引価格の統一、参加の強制、競争を阻害する排他的な取決めは問題になり得ます
- 品目の洗い出し、顔ぶれの確認、主体の決定、文書化、専門家への確認の順で進めます
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
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