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棚卸差異の原因はどこにある?数え方・タイミング・記録・モノの動きで切り分ける手順

棚卸差異の原因を4つの型に切り分ける手順をまとめました。期末の数量を確定する枠組み、調査の順序、差異率の見方、帳簿を直す前の確認まで。

棚卸差異の記事のサムネイル。上段に5つの四角、下段に4つの四角が並び、数が1つ足りないことを示している図
47在庫・物流

棚卸差異(たなおろしさい)とは、帳簿の在庫数と、実際に現物を数えた在庫数が食い違うことです。期末や月末の棚卸しで「システムでは120個なのに、棚には117個しかない」という形で表に出ます。差異を確認しないまま決算を締めると、棚卸資産の評価額を通じて売上原価や利益に影響する可能性があります。

原因を探すときは、思いつく順に現場を当たらないでください。最初の切り分けとして、「数え方」「タイミング」「記録」「モノの動き」の4つに整理します。型を決めてから、その型に対応する場所を見にいくと早い。

以下では、まず法令が期末の棚卸資産の評価について何を定めているかを確認します。そこから区別した実務上の手順として、4つの型、確認する順序、差異率の見方、帳簿を直す前の手順を整理します。

棚卸差異の初期調査で確認する代表的な原因を4区分に整理した図。数え方(棚卸表と単位)、タイミング(前後の伝票)、記録(品番と入力)、モノの動き(仮置き場と返品棚)の4つの枠が並んでいる
図1 棚卸差異を初期調査するための実務上の4区分

まず確かめるのは、期末時点で自社が有していた棚卸資産の範囲

法人税法第29条第1項は、棚卸数量の確定手順を定めた条文ではありません。ただし、期末時点で有する棚卸資産の価額を適切に評価するためには、その前提として、対象となる在庫の範囲と数量を実務上確認することになります。

差異が出たとき、実地と帳簿のどちらかを、確認せずに正しいものとして扱うことはできません。決算では、期末時点で自社が有していた棚卸資産の範囲と数量を確認し、それを基礎に価額を算定します。再計数、単位、計上時点、所有関係、外部に預けた分を確かめたうえで確定します。

法人税法第29条第1項は、損金に算入する売上原価などの計算の基礎になる棚卸資産の価額について定めた条文です。その対象を「当該事業年度終了の時において有する棚卸資産」と書き、選定した評価方法により評価した金額とする、としています。製造業では、商品、製品、仕掛品、原材料などが棚卸資産として扱われる代表例です。具体的な範囲は、自社の取引内容と適用される会計・税務上の取扱いに照らして確認します。

これは期末時点の保有在庫を適切に評価するための規定であり、実地棚卸の方法や差異の調査順序を直接定めた規定ではありません。条文が対象にしているのは「終了の時において有する」ものです。帳簿にそう書いてあるもの、とは書かれていません。

そのため実務では、現物を数えた結果を重要な手がかりとしながら、帳簿、入出庫記録、外部保管分、預り品もあわせて照合します。原因と期末時点の数量を確認し、その結果に応じて、数量、品番、計上時点その他の必要な訂正を会計記録に反映する、という順序です。

もう一つ、会社法第432条第1項は、株式会社に対し、法務省令で定めるところにより、適時に正確な会計帳簿を作成するよう求めています。原因調査の手順まで定めた条文ではありません。ただし正確な会計帳簿にするための実務としては、実地の数量を機械的に入力せず、差異の原因と期末時点の数量を確認してから反映します。

法人が期末に商品、製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を有する場合、数量と価額の確定が決算に影響します。なお、法人税法第29条は内国法人、会社法第432条は株式会社についての規定です。個人事業者や他の法人形態では、適用される規定を別途確認してください。

原因は4つの型に分かれる

差異の原因は数え切れないほどありそうに見えます。ただ、最初の切り分けとしては4つの型に整理できます。型を先に決めると、確認する場所が絞れます。

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起きていること最初に見る場所
数え方数え漏れ、二重計上、単位の取り違え(箱と個、kgとm)棚卸表の単位欄と、二人で数えた区画の突き合わせ
タイミング締めた後に入出庫した分が、どちらか一方にだけ入っている棚卸日の前後の入出庫伝票(まず前後3営業日程度)
記録伝票の起票漏れ、品番の打ち間違い、システムへの入力遅れ差異の出た品番と似た品番の在庫数
モノの動き無記録の払い出し、返品の戻し忘れ、廃棄や不良の処理漏れ、置き場違い現場の仮置き場、返品棚、不良品置き場

まず棚卸表や伝票を確認すると、調査の対象を絞れます。机の上でできるところから始めて、そのあと現場を歩くのが順序です。ただし、数え方の確認には再計数が必要なことがあり、記録上の原因でも追加資料やシステムの履歴を見る必要があります。

この4つに当てはまらない場合は、所有関係、外部保管分、品番や単位のマスタ設定、システム連携も確認してください。

置き場違いは差異の総数を見ると気づきにくい型です。ある品番がプラス、別の品番がマイナスで、金額では相殺されてしまいます。品番ごとの符号を見てください。

単位の取り違えも見つけにくい型に入ります。1箱10個の材料を、棚卸表に箱数で書く人と個数で書く人が混ざると、その品番だけ10倍または10分の1の差異になります。差異が桁違いに大きい品番が1つだけあるなら、まずここを疑ってください。

差異が出たときに見る順序

順番を決めておくと、調査のばらつきや確認漏れを減らせます。次の4段で進めます。

  1. 差異の概算金額が大きい品番から並べる:限られた時間で影響の大きい品番から確認するため、差異数量に社内で統一した管理単価などを掛けて優先順位を付けます。この金額は調査順位を決めるための概算であり、決算上の棚卸評価額とは一致しない場合があります
  2. その品番の棚卸表を見る:単位、区画、記入者、二人で数えたかを確認します
  3. 棚卸日の前後の伝票を見る:まず前後3営業日程度を確認し、未処理や入力遅れが残る場合は期間を広げます。入荷、出荷、社内移動、返品、廃棄など、自社で使う在庫移動の記録をすべて見ます
  4. 現場を歩く:仮置き場、返品棚、不良品置き場、他部署へ貸し出した分

机の上で特定できなければ、現場の確認に加えて、所有関係、外部保管分、マスタ設定、システム連携も調べます。逆に、毎回2で見つかるなら、探すべきは個別の差異ではなく棚卸しの手順そのものです。品番ごとに数える頻度を変える考え方はABC分析で在庫管理を仕分ける。金額と停止影響で見る分類基準と棚卸しの実務で扱っています。

補足:ここで挙げた4つの型と確認の順序は、初期の切り分けのための実務上の整理であり、公的な基準として定められたものではありません。所有関係の誤認、外部倉庫や委託先の在庫、マスタ設定、システム連携の不具合など、この4つに収まらない原因もあります。また、記事の法令の説明は内国法人である株式会社を想定しています。差異の会計処理や税務上の扱いは、顧問税理士または所轄税務署に確認してください。

差異率の出し方と、目安の置き方

差異の大きさは率で見ます。計算は難しくありません。

符号付き棚卸差異率(%)=(実地在庫数量 − 帳簿在庫数量)÷ 帳簿在庫数量 × 100

影響の大きさを比べるときは差異数量の絶対値を使い、原因の方向を見るときは符号を残します。帳簿在庫数量がゼロの品番は、この式では計算せず別枠で並べます。

分母を帳簿在庫にするか実地在庫にするかで数字が変わります。どちらを分母にするかを社内で先に決めて、毎回同じにすることのほうが、どちらを選ぶかより大事です。金額ベースの差異率も並べて出しておくと、数は少ないが単価の高い品番の影響が見えます。

差異率は、自社の前月・前年同期・品番グループ別の実績と比較します。特定の数値を基準にする場合は、自社で対象範囲と算定方法を決め、継続して比較できるようにします。

符号も一緒に記録してください。実地が帳簿より少ない状態が続く場合は、未記録の払い出し、廃棄、紛失などが候補になります。多い状態が続く場合は、入荷や返品の入力漏れなどが候補です。ただし、品番や単位の誤り、所有関係でも同じ向きの差異が出ます。符号だけで原因を確定しないでください。

帳簿を直す前に踏む手順

原因を確認し、期末時点で自社が有していた数量を確定したら、必要に応じて帳簿をその確定数量に修正します。その前に2つ確認してください。

1つ目は、差異の理由を品番ごとに書き残すことです。修正した数量だけを入力して理由を残さないと、翌月に同じ差異が出ても再発なのか別件なのか分かりません。

会社法第432条第2項は、会計帳簿とその事業に関する重要な資料を、会計帳簿の閉鎖の時から10年間保存するよう株式会社に求めています。ただし、個々の棚卸表や差異の調査記録が同項の「重要な資料」に当たるかは、確認した資料だけでは一律に判断できません。保存期間は経理担当者や税理士に確認してください。

2つ目は、評価方法に手を付けないことです。棚卸資産の評価方法は法人税法施行令第28条第1項が列挙しています。6種類の原価法と、そのいずれかによる原価法の価額を期末価額と比較する低価法です。

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評価方法取得価額の決め方(施行令の定義の要旨)
個別法期末在庫の全部について、その個々の取得価額を使う
先入先出法期末在庫を、期末に最も近い時に取得したものから順に構成されるとみなす
総平均法期首在庫と当期取得分の取得価額の合計を、総数量で割って単価を出す
移動平均法取得のたびに平均単価を改定し、期末に最も近い時点の単価を使う
最終仕入原価法期末に最も近い時に取得したものの単価を使う
売価還元法期末在庫の通常の販売価額の総額に、原価の率を掛けて計算する
低価法上の原価法で評価した価額と、期末時点の価額のうち低いほうを使う

自社に適用されている評価方法は、届出の有無を含めて経理担当者や税理士に確認してください。方法を選定していない場合などには、法人税法第29条第1項により政令で定める方法で評価する扱いがあります。棚卸しの担当者が知らないまま調査を進めると、金額の突き合わせで話が噛み合いません。

この評価方法を変えるには手続きがあります。同施行令第30条は、選定した評価方法を変更しようとするときは納税地の所轄税務署長の承認を受けなければならない、と定めています。承認を受けようとする場合は、新しい方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに申請書を提出しなければなりません。

評価方法は、棚卸差異を合わせるために担当者の判断で変更できるものではありません

差異が大きい品番の中には、そもそも動いていない在庫が混じっていることがあります。滞留の判定と処分の考え方は滞留在庫対策。判定基準から処分・転用・値引きの判断、発注ルールの見直しまでにまとめました。

差異を減らすために先に直す3つ

調査を毎月繰り返す前に、発生源を減らします。効くのは次の3つです。

  • 締めの時刻と移動記録の方法を決める:棚卸しの基準時刻を決め、その前後の入出庫を停止するか、停止できない場合は移動を識別して記録する方法を、経理方針に合わせて全部署で統一します。タイミングによる差異を減らせます
  • 置き場を明確にする:可能な品番は置き場を集約し、仮置きが必要な場合は棚卸しの対象区画として番号を振ります
  • 数える単位を棚卸表と現物ラベルで揃える:箱で数えるのか個で数えるのかを、品番ごとに1つに決めます

3つとも、システムを入れ替えなくても着手できます。在庫量そのものの決め方は適正在庫とは?下限と上限の幅で決める計算手順と、在庫率での確かめ方で、在庫のテーマ全体は在庫・購買管理のテーマページから見られます。

よくある質問

棚卸差異率は何%以下なら合格ですか

本文のとおり、今回確認した法令資料からは公的な基準値を確認できませんでした。判断の材料になるのは自社の実績です。前月・前年同期・品番グループ別に並べ、上がっているのか下がっているのかで見てください。分母を帳簿在庫と実地在庫のどちらにするかは、社内で1つに決めます。

差異が出た分は、そのまま経費にしてよいのですか

会計処理と税務上の扱いは、差異の中身や金額によって変わります。ここで挙げた法令は、期末に有する棚卸資産を評価する枠組み(法人税法第29条)と、評価方法の変更手続(法人税法施行令第30条)です。個別の処理は顧問税理士または所轄税務署に確認してください。記録として残すのは、品番・数量・金額・原因の型・調査した人です。

棚卸しの回数を増やせば差異は減りますか

回数を増やすと発見は早くなります。ただし、原因そのものが減るわけではありません。締めの時刻、置き場、単位の3つを直さずに回数だけ増やすと、同じ差異を毎回見つけて毎回調べることになります。回数を増やすなら、金額の大きい品番から先に増やすほうが効率的です。

まとめ

  • 法人税法第29条第1項が評価の対象とするのは「事業年度終了の時において有する棚卸資産」。実地の数量を無条件に正とせず、再計数・記録・所有関係を確かめて期末の数量を確定する
  • 原因を「数え方」「タイミング」「記録」「モノの動き」に分け、棚卸表・伝票などの記録の確認と、再計数・置き場確認などの現場確認を組み合わせる
  • 調査は概算金額の大きい品番から始め、棚卸表、棚卸日前後の伝票、現場の順に確認する
  • 差異率は分母を統一し、自社の実績と比べる
  • 修正時は、社内管理のため品番ごとに理由を残す。会社法第432条第2項は会計帳簿と事業に関する重要な資料の10年保存を株式会社に求めるが、個々の棚卸表や調査記録の保存期間は経理担当者や税理士に確認する
  • 棚卸資産の評価方法の変更には所轄税務署長の承認が要る(法人税法施行令第30条)。差異を合わせるために担当者の判断で変えられるものではない
  • #在庫管理
  • #棚卸
  • #決算
  • #原価管理

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株式会社恒電社 編集部

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