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材料費を下げる代替材・仕様見直し。過剰品質の見つけ方から仕入先調整までの進め方

材料費を下げる代替材・仕様見直しの進め方。過剰品質の見つけ方から評価手順、仕入先調整で守る取適法の注意点まで整理します。

大きな箱から矢印で小さな箱へと変わり、小さな箱の穴の1つがオレンジ色で強調された、仕様見直しで材料費を下げる比較イラスト
19調達・材料費

材料費を下げる代替材・仕様見直しは、安い材料へ闇雲に切り替えることではありません。まず今の仕様が満たすべき機能を洗い出しましょう。過剰な品質や余分な仕様がないかを、しっかり確認します。そのうえで候補材を試作し、評価します。

評価が終わったら、設計・購買・現場で合意を取ります。必要に応じて、顧客の承認を得てください。そのうえで仕入先にも事前に説明を行い、費用や条件について話し合うことが重要です。こうした段階を踏んだ確認は、品質のトラブルや取引上の摩擦を抑える、一つの進め方です。

この考え方は、経済産業省が所管する独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が示すVE(バリューエンジニアリング・価値工学)という枠組みに沿っています。VEでは、製品やサービスの価値を「機能」と「コスト」の関係でとらえます。一つ一つの機能がコストに見合っているかを点検する考え方です(中小機構「マンガでわかる『原価低減』」)。

2026年版ものづくり白書(経済産業省・厚生労働省・文部科学省、2026年5月29日閣議決定)が、2025年度の状況について伝えています。原材料価格やエネルギー価格が上がったことや、人材や労働力が不足していることを挙げる事業者が多い、という内容です。直近3年間で見ると、約8割の事業者が価格転嫁を行ったとも報告しています(経済産業省「2026年版ものづくり白書」)。

仕入価格が上がった分を、すべて販売価格へ転嫁できるとは限りません。だからこそ、社内でできる原価低減策も要ります。その一つとして、代替材・仕様見直しを検討する余地があります。以下では、過剰品質の見つけ方、評価の手順、社内の合意の型、仕入先調整で守るべき点の順に整理していきましょう。

値上げ要請への対応など、調達・材料費に関するほかの記事は調達・材料費のテーマページにまとめています。

まず仕分けるのは「機能」と「コスト」——過剰品質の見つけ方

代替材を探す前に、棚卸しが必要です。今の仕様が本当に必要な機能かどうかを、一つずつ確かめてください。中小機構は、設計の面から原価を引き下げるアプローチとして「製品の構造・形状の見直し」「過剰な品質の見直し」「材質・加工方法の見直し」の3つを挙げています。

過剰品質とは、どのような状態を指すのでしょうか。顧客が求める機能・性能の水準を超えて、社内の基準や慣習で厚めに設定されている仕様のことです。

具体的には、次の表で確認していきます。

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確認する項目見るポイント現場・設計への質問
要求仕様顧客図面・仕様書に明記された機能・公差この数値の根拠は顧客要求か、社内の安全代か
実装仕様現在使っている材質・板厚・表面処理いつ、なぜこの仕様に決めたか記録はあるか
差分要求と実装の間にある余裕分余裕分を削っても機能・安全・法令要求を満たすか
注意:安全基準・法令・規格で定められた仕様(強度計算の前提となる公差、法定の材料等級など)は、過剰品質の見直し対象に含めません。見直しの対象になるのは、あくまで社内の慣習や過去の経緯で厚めに設定されている部分に限ります。

差分が見つかったら、理由を確かめます。なぜその仕様になったのかを、設計変更履歴や図面の改訂履歴で確認してください。理由が分からないまま仕様だけを緩めると、想定していなかった不具合につながります。代替材・仕様見直しの候補として次の工程に進めるのは、差分の理由が説明できる項目だけです。

要求仕様と実装仕様を並べ、差が大きい箇所に印を付けた比較図
図1 要求仕様と実装仕様の差分から過剰品質を見つける

代替材・仕様見直しの評価手順——試作から切替判断まで

候補が絞れたら、発注量をいきなり全量切り替えるのではなく、段階を踏んで、じっくり評価していきます。

  1. 候補抽出:機能を満たせそうな代替材・仕様を2〜3案に絞る。仕入先の技術担当にも相談し、候補漏れを防ぐ
  2. 試作・評価:小ロットで試作し、機能(強度・耐久性など)、外観、加工性、コストを同じ条件で比較する
  3. 量産条件での検証:試作条件と量産条件(温度・湿度・連続稼働など)が異なる場合は、量産に近い条件でも再確認する
  4. 切替判断:評価結果を設計・購買・現場で共有し、可否と移行時期を決める

言葉で言うと、こうなります。現行材と代替材の単価差に年間使用数量をかけた額から、評価・切替にかかる費用を引いた金額です。

想定コスト削減額(年間・円)=(現行材の単価-代替材の単価)× 年間使用数量-評価・切替にかかる費用

この式は簡易な試算です。現行材と代替材とで、製品1個あたりに使う数量が同じであるときに使えます。歩留まり〈ぶどまり〉(投入した材料のうち、製品として使える量の割合)や不良率、加工費、物流費に差があるときは、その増減した分の金額も加味してください。評価や切替にかかる費用を差し引くときは、主に切替をした初年度の試算になります。

単価の差だけで判断してしまうと、見落としてしまうことがあります。試作にかかる費用や、量産へ切り替えるときの型・治具の変更費用、在庫の切替にかかるコストです。削減額を試算するときは、切替にかかる費用も差し引いて、残る額で比べることが必要です。切替の判断では、現行材の在庫をどう扱うかも、あわせて決めます。

金額への影響や使用する頻度が大きい品目から、優先して、じっくり見直していきましょう。ここでの分け方は、ABC分析で在庫管理を仕分ける記事で扱っている分類の基準と共通しています。

候補抽出、試作・評価、量産条件での検証、切替判断の4段階を矢印でつないだフロー図
図2 代替材評価の4段階の進め方

設計・購買・現場で合意する型

代替材・仕様見直しは、購買部門だけで決めてしまうと、量産の段階でトラブルになりやすくなります。設計部門だけで決めてしまうと、今度は調達のコストや納期が置き去りになりがちです。そこで、設計・購買・製造・品質保証などの関係部門で評価の結果を共有します。切替を判断する前に、合意する場を設けてください。

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役割確認すること記録に残すもの
設計機能・強度・公差を満たすか、図面変更が必要か評価結果と図面改訂の要否
購買単価・供給安定性・切替費用試算根拠と仕入先との調整状況
現場加工性・組立性・検査基準への影響試作品での作業性・不良の有無
評価結果を1枚の表にまとめ、設計・購買・現場が同じ数字を見て合意したという記録を残すことは、判断経緯を追跡しやすくし、後から仕様を戻すリスクを抑えるうえで有効です。

顧客の図面・仕様書で材質や仕様が指定されているときは、社内の合意だけで切り替えられません。顧客への申請・承認を得るまでは量産に反映しません。このルールを、合意の型に含めておきます。

仕入先との調整で守ること

代替材への切替や仕様見直しは、自社だけの判断では、そのまま進められません。仕入先を巻き込んでいくことで、初めて形になっていきます。ここで気をつけたいのが、公正取引委員会が示す取適法(中小受託取引適正化法。旧・下請代金支払遅延等防止法)です。

取適法には、禁止行為がいくつも定められています。発注する側の立場から、仕様を変更していくときには、気をつけたい項目がいくつか含まれています(公正取引委員会「委託事業者の禁止行為」)。

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禁止行為取適法上の扱い仕様見直しでの注意
買いたたき類似品・市価に比べ著しく低い代金を不当に定めること代替材へのコストダウン要請を、根拠のない一律値下げにしない
購入・利用強制正当な理由なく指定する製品・原材料等を強制的に購入させること特定の代替材・仕入先を理由なく指定・強制しない
不当な給付内容の変更及び不当なやり直し中小受託事業者に責任がないのに、費用を負担せず発注内容を変更したり、受領後にやり直しをさせたりすること発注側の都合による仕様変更に伴う合理的な試作・治具費用等を、仕入先だけに負担させない
協議に応じない一方的な代金決定価格協議の求めに応じない、必要な説明をしないこと単価の見直し理由を説明し、協議の場を設ける
補足:ここに挙げた内容は取適法が定める禁止行為の一部です。自社の取引が取適法の対象となる委託取引に該当するか、個別の対応が違反にあたらないかは、公正取引委員会・中小企業庁の窓口または専門家に確認してください。

中小企業庁のミラサポplusは、共同調達の事例を紹介しています。同業者と一括仕入れで連携し、スケールメリットを働かせて原材料費を削減した例です(中小企業庁ミラサポplus「事例から学ぶ!『コスト削減』」)。

共同調達を実施できるかどうか、また、その効果がどれくらいかは、品目・数量・品質条件・契約関係などによって変わります。自社の条件に合わせてよく検討してください。無理をしてコストを削減し、品質や仕入先との関係を損なうと、切替の後にかえってコストがかかります。

評価の結果と交渉の記録を残しながら進めます。仕入先が費用と条件を確認できる形にすることは、この先も続いていく関係を損なわないためにも重要です。

段取り替えの改善など、ほかの切り口からコストを下げる進め方については、外段取り・内段取りとは?段取り時間を短縮する4つの手順と金額換算で扱っています。

よくある質問

よく聞かれるのは3つです。VEと値下げ交渉の違い、顧客図面がある場合の扱い、仕入先費用の負担について答えます。

VEと単なる値下げ交渉は何が違いますか

値下げ交渉は、基本的に同じ仕様のまま、価格の条件だけを見直す交渉です。一方でVE(バリューエンジニアリング)は、製品やサービスの機能とコストの関係から価値を見直していく考え方です。材料費を削減する場面では、構造・形状、過剰品質、材質・加工方法などを見直します。必要な機能を満たしながら、原価の低減を考える点に違いがあります。

顧客の図面で材質が指定されている場合、代替材への切替はできますか

顧客の図面・仕様書で材質や仕様が明記されているときは、社内の合意だけでは切り替えられません。顧客への説明を行い、承認を得るという手続きが必要です。そのうえで量産に反映してください。

仕入先から評価・試作にかかった費用を請求された場合、支払う必要がありますか

この問いへの答えは、ケースによって変わります。取適法では、中小受託事業者に責任がないのに、費用を負担せず発注内容を変更したり、受領後にやり直しをさせたりする行為を禁止しています。ただし、個別の費用について支払う義務があるかどうか、どこまで負担するかは、一律には決まりません。取引の内容や責任の所在、取適法の適用関係によって異なります。

仕様変更や代替材の評価を、発注する側から依頼するときもあります。そのときは、試作や治具変更などにかかる費用と、負担する範囲を、事前に話し合ってください。記録に残しておくことも重要です。

まとめ

  • 代替材・仕様見直しは、要求仕様と実装仕様の差分から過剰品質を見つけることから始める
  • 候補抽出→試作・評価→量産条件での検証→切替判断の順で進め、単価差だけでなく切替費用も含めて削減額を試算する
  • 設計・購買・現場が同じ評価結果を見て合意し、記録を残す
  • 顧客図面で仕様が指定されている場合は、顧客承認を得てから量産に反映する
  • 仕入先との調整では、買いたたきや費用負担のない仕様変更にならないよう、取適法の禁止行為を踏まえて進める
  • #材料費削減
  • #代替材
  • #VE
  • #仕様見直し
  • #取適法
編

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