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MTBF・MTTRとは?予防保全のKPIの決め方と法定点検周期の線引き

MTBF・MTTR、予防保全のKPIをどう決める?停止の数え方と点検周期の法令・自社の分け方を整理

モスグリーンの背景に、5つの停止時間ブロックの列と中央のオレンジ色の短いブロックを線画で描き、「止まる時間」「保全KPIの決め方」と記した記事のサムネイル画像
17設備保全

停止のたびに日時と原因を書き残しているのに、月末に集計すると設備どうしを比べられない。予防保全の指標を整えようとすると、ここでつまずきます。MTBFやMTTRの式自体は単純で、つまずくのはその手前です。

順序は、①1回の停止の数え方を決める、②4つの指標を1組で見る、③記録の項目をそろえる、④点検周期を法令部分と自社部分に分ける、の4段階です。まず「1回の停止」をどう数えるかを決めるところが出発点になります。

ここでは労働安全衛生法関連の省令原文と、厚生労働省の労働災害統計(2026年8月時点で最新の令和7年確定値)をもとに、指標と点検周期の決め方、点検を増やしすぎない線引きを整理します。他の論点は設備保全のテーマページにまとめています。

MTBFとMTTRは、式ではなく「数え方」でつまずく

本記事では、MTBFを「故障と故障の間、どれだけ動いていたか」、MTTRを「1回の故障を直すのにどれだけかかったか」を集計する考え方として扱います。一般に用いられている計算の形は次のとおりです。

MTBF = 稼働時間の合計 ÷ 故障の回数 / MTTR = 修復時間の合計 ÷ 故障の回数

分子と分母が単純なぶん、値は前提で動きます。段取り替えの停止を故障に数えるか、手動停止や試運転をどう扱うかが決まっていない記録は、月ごとにも設備ごとにも比較できません。

信頼性・保全性に関する正式な用語を確認する際は、日本産業規格 JIS Z 8115:2019「ディペンダビリティ(総合信頼性)用語」(平成31年改正)を参照します(日本規格協会 JIS Z 8115:2019)。上の説明は規格の定義文ではなく、本記事で集計方法を説明するための整理です。

補足:同規格の本文は有償頒布のため、定義の文言をそろえるには規格票を参照します。規格票が手元になくても、「故障」「稼働時間」「修復時間」の3語を自社の言葉で定義し記録様式の欄外に書けば、記入担当者間で運用をそろえやすくなります。

4つの指標は、単独ではなく1組で見る

予防保全の指標は、壊れにくさ・直す速さ・止まった量・繰り返しの4方向に整理できます。1つだけを目標値にすると、別の方向の悪化が数字に見えにくくなります。

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指標何を表すか数え方が割れやすい点
MTBF故障と故障の間、どれだけ動いていたか停止のうち何を故障に数えるか
MTTR1回の故障を直すのにかかった時間部品待ち・応援待ちを含めるか
停止時間の合計生産に出た影響の総量計画停止を分けて集計するか
再発率同じ設備・同じ部位が再び止まった割合「同じ」を部位で見るか機種で見るか

故障による停止・修復だけを対象にする場合、稼働率は MTBF ÷(MTBF+MTTR)で表されることが多く、計画停止・段取り・材料待ちを含めた稼働率とは分けて扱います。分子と分母が同じ前提でそろっていなければ比較には使えません。4つを1組で見て、数え方の前提を共通にするほうが先になります。

記録の項目は、法令が求める「検査の記録」を土台にする

記録様式をゼロから設計する必要はありません。労働安全衛生法第45条第1項は、政令で定める機械等について「定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない」と定めています(e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。

労働安全衛生規則第135条の2は、動力プレスの定期自主検査記録として検査年月日、検査方法、検査箇所、検査の結果、実施者の氏名、補修等の措置の内容の6項目を挙げ、三年間の保存を求めています。同じ6項目はフォークリフト第151条の23・車両系建設機械第169条も同様です(e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。

この6項目は定期自主検査の記録項目で、法令が突発停止記録に同じ項目を求めるわけではありませんが、記録票設計の土台に使えます。「検査方法・箇所・結果」は「確認方法・異常箇所・確認結果」と読み替え、足りない時間・影響として次の4欄を加えます。

  • 停止した時刻と復旧した時刻(試運転の終了時刻は分ける)
  • 停止の区分(故障・計画停止・段取り・材料待ちのどれか)
  • 影響(止まった工程、出せなかった数量、後工程への波及)
  • 同じ設備・同じ部位で前回止まった日
停止記録票の項目を、労働安全衛生規則が求める6項目と、指標の計算のために工場が足す4項目の二層で示した図
図1 法定の検査記録6項目を参考に、突発停止記録へ必要な項目を組み立てる

この10欄に設備番号・稼働時間をひも付ければ、4つの指標を同じ台帳から集計できます(再発率は分母と「同じ故障」の基準も決めます)。欄が空のまま集計した数字は検算できません。毎月同じ表を同じ担当者が見る運用は契約電力はどう決まる?デマンド監視装置で工場の基本料金を下げる現場手順で電力の側から整理しています。

点検周期は「法令で決まる部分」と「自社で決める部分」に分ける

まず法令で周期が決まっている部分と、自社で決める部分を分けることになります。前者は点検間隔の上限で、通常の使用では短くはできても超えて延ばせません。

労働安全衛生法施行令第15条は、定期自主検査を行う機械等を列挙しています(動力プレス、遠心機械、化学設備、乾燥設備、局所排気装置など)。周期は機械ごとに労働安全衛生規則が定めます。

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対象(例)定期自主検査の周期根拠(労働安全衛生規則)
動力プレス一年以内ごとに一回第134条の3
乾燥設備及びその附属設備一年以内ごとに一回第299条
フォークリフト一年を超えない期間ごとに一回/一月を超えない期間ごとに一回第151条の21・第151条の22
車両系建設機械一年以内ごとに一回/一月以内ごとに一回第167条・第168条
絶縁用保護具等六月以内ごとに一回(絶縁性能)第351条

フォークリフト・車両系建設機械には年次・月次に加え作業開始前点検も定められています(第151条の25、第170条)。

年次検査の一部は特定自主検査と呼ばれ、労働安全衛生法第45条第2項により、厚生労働省令で定める資格者か検査業者が行うこととされています。

特定自主検査の実施基準は2026年1月1日から新しくなりました。厚生労働省が高所作業車・車両系建設機械・フォークリフト・不整地運搬車・動力プレスの「特定自主検査基準」を告示し、旧「特定自主検査指針」は廃止されています(佐賀労働局 特定自主検査基準が制定されました)。対象設備に適用される資格要件も確認します。

一方、受変電設備のうち事業用電気工作物は、電気事業法が周期を一律の数値で定めていません。同法第42条第1項は設置者の保安規程届出を求め、施行規則第50条第3項第3号は保安規程に「巡視、点検及び検査に関すること」を定めています(e-Gov法令検索 電気事業法施行規則)。具体的な周期は、他の法令や設備条件を踏まえた保安規程の基準に従います。

点検周期を、法令が周期を定める設備と、法令・保安規程・設備条件を確認したうえで自社が設定する設備の二階建てに分けて示した図
図2 周期は「法令で決まる層」と「自社が設定する層」に分けて考える

実測した指標が効くのは、この自社が設定する層です。受電設備の力率を保つ進相コンデンサのように、日常運転では劣化に気づきにくい機器は点検間隔が結果に直結します。この機器の見方は力率割引で基本料金は何%変わる?進相コンデンサの点検で工場が確認したいことで扱っています。

点検を増やすほど良い、にはならない

周期を短くすれば安心、という判断は2つの理由で成り立ちません。1つは、点検内容によっては停止時間と危険作業を生むことです。

労働安全衛生規則第107条は、機械の掃除・給油・検査・修理・調整で労働者に危険を及ぼすおそれがあるとき、原則として運転停止と、起動装置への施錠・表示板設置などの措置を義務づけています。危険を伴う点検では、停止時間に加え安全措置も必要です。

もう1つは災害統計です。厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」によると、製造業の休業4日以上の死傷者数26,371人のうち「はさまれ・巻き込まれ」が5,992人で最多でした(厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況を公表)。点検限定の集計ではありませんが、周期の検討では安全対策も確認します。

では、どこで線を引くか。短縮を決める前に、次の順で確認します。

  1. その故障は点検で見つかる型か(摩耗・緩み・漏れ・異音は気づきやすいが、事前兆候を捉えにくい突発故障は周期を詰めても見つけにくい)
  2. 実測したMTBFが現在の周期に近いか。MTBF単独でなく、故障モード・検出可能性・メーカー指定・使用条件もあわせて確認する
  3. 再発率が特定の部位に偏っていないか(周期ではなく処置の質や部品選定の問題のことがある)
  4. 点検に伴う停止時間と危険が、防げる停止時間に見合うか

周期を延ばす検討は、季節変動や使用条件を含めて判断できる記録がそろってから行います。必要な期間は使用頻度・故障件数で異なり、まず過去1年分の有無を確認します。前掲の表の設備は法令が周期を定め通常は延ばせません。周期を動かす前に、記録の型をそろえることが順序です。

注意:点検周期・検査を行える人・記録の保存期間は設備の種類と適用法令で異なり、長期間使用しない設備には検査を要しない期間の例外もあります。自社設備がどの条文の対象かは、労働基準監督署や電気主任技術者へ確認してください。

よくある質問

MTBFとMTTR、先に手をつけるのはどちらですか

停止時間の合計を「件数×1件あたりの時間」に分解して決めます。件数が多いならMTBF側(故障を減らす)、1件が長いならMTTR側(部品手配や手順書、復旧担当)に効く打ち手を探します。

故障が年に数回しかない設備でも、指標は使えますか

件数が少ないと平均は大きく振れ、MTBF単独の比較には向きません。同じ型式の設備をまとめて数え、停止時間の合計と再発率を主に見ると傾向はつかめます。値より、記録欄が毎回同じように埋まっているかを見ます。

点検周期を延ばしたいのですが、何から確認すればよいですか

まず、その設備が労働安全衛生法施行令第15条の機械等かを確認します。該当すれば周期は労働安全衛生規則が定め、通常は延ばせません。該当しない場合も他の適用法令・メーカー指定・保安規程を確認し、範囲内で実測した指標と再発率を検討材料にします。

まとめ

  • 指標の計算より先に、「故障」「稼働時間」「修復時間」の3語を自社で定義して記録様式に書く
  • MTBF・MTTR・停止時間・再発率は1組で見る。稼働率(MTBF÷(MTBF+MTTR))は故障による停止だけを対象にした関係にすぎない
  • 停止記録は、労働安全衛生規則が定期自主検査の記録として求める6項目を参考に、時刻・区分・影響・前回停止日の4欄を足して設計する
  • 点検周期は、法令が周期を定める層と、法令・設備条件を確認して自社が設定する層に分け、実測した指標は後者に当てる
  • 危険を及ぼすおそれがある点検は原則として停止と施錠を伴う作業でもある。周期を短くする前に、4つの確認を通す
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編集確認

株式会社恒電社 編集部

製造業の電気設備・自家消費型太陽光の現場に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。

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