設備を増やしたわけでもないのに基本料金が上振れする。高圧で受電している工場では、その原因が力率にあることがあります。北陸電力の高圧・特別高圧の料金規定には、力率で基本料金を割り引き・割り増しする定めがあります。本記事ではこの規定を例に見ていきます。
進め方の一例は、①請求内訳で自社の力率を見る ②85%との差を確認する ③必要に応じて進相コンデンサの状態を確認するという順序です。同規定では力率が基本料金の補正に使われ、それを改善する設備が進相コンデンサだからです。以下、計算式、明細での確認先、力率が下がる原因、点検と更新の段取りを整理します。
力率割引は「85%を境に1%ごとに1%」動く
北陸電力の高圧・特別高圧の料金は、力率85%を基準値に置き、そこから離れた分だけ基本料金を増減させます。同社の「電気料金のしくみ(特別高圧・高圧)」には次のように書かれています(2026年8月時点)。
力率が、85パーセントを上回る場合は、その上回る1パーセントにつき、基本料金を1パーセント割引し、85パーセントを下回る場合は、その下回る1パーセントにつき、基本料金を1パーセント割増しいたします。
— 北陸電力株式会社「電気料金のしくみ(特別高圧・高圧)」より引用
85%を境に、1%離れるごとに基本料金が1%動くという対称の仕組みです。指月電機製作所の高圧進相コンデンサ設備カタログ(SJ-304-BC)も同じ式を示しています。
括弧の中が補正係数です。上記の規定を当てはめ、契約電力300kW・単価を1kWあたり2,000円と仮に置いた試算が次の表です(実際の単価は契約先の料金表で確認します)。
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| 力率 | 補正係数 | 仮の前提での基本料金(月額) |
|---|---|---|
| 75% | 1.10 | 66万円(85%より6万円高い) |
| 85%(基準) | 1.00 | 60万円 |
| 95% | 0.90 | 54万円(85%より6万円安い) |
| 100% | 0.85 | 51万円(85%より9万円安い) |

自社の力率は毎月の請求内訳で確認する
力率は、請求内訳や電力会社の法人向け会員サイトに表示される場合があります。様式は電力会社と契約種別で異なるため、確認できない場合は契約先に問い合わせてください。
押さえたいのは、料金計算に使われるのがいつの力率かです。北陸電力の前掲ページは「1月のうちの8時から22時までの平均力率」と定め、瞬間力率が進み力率となる場合はその瞬間力率を100パーセントとしています。この時間帯の外だけで生じる変化は、当該平均力率には反映されません。同じ規定と計算式に基づけば、力率100%のときの割引率は85%を基準として15%になります。
同じページは、各月の契約電力を「当月と前11ヶ月の最大需要電力のうち、最も大きい値」と定めています。契約電力は最大需要電力から決まり、力率は8時から22時までの平均値として基本料金の補正に使われます。両者はそれぞれ別の方法で算定されます。デマンド側の考え方は30分単位の最大需要電力と基本料金の関係を解説した記事にまとまっています。
単月の力率だけでは、変化の原因を切り分けにくい場合があります。使用電力量・最大需要電力・力率・調整項目を12か月分並べ、季節や生産量、設備の変化との関係を確認する手掛かりにします。明細の項目の読み方は再エネ賦課金と燃料費調整額。工場の電気料金明細を4つの項目で読むで整理しています。請求データを扱う担当者と、設備の運転・保全状況を把握する担当者が同じ表を共有すると、数値の変化と設備の状況を照合しやすくなります。
力率が下がったときの主な確認候補
- 容量が今の負荷に合っているか:高圧受電設備規程の資料は「三相変圧器容量の3分の1程度」という従来の基準を退け、負荷の無効電力を想定して選定するよう求めています。現在の負荷の無効電力に容量が合っているかを確認します。
- 劣化や故障がないか:前掲カタログは、投入時の突入電流でコンデンサの寿命が短くなり、ヒューズが誤動作を起こすことがあると説明しています。点検記録で機器の状態と保護装置の動作履歴を確認します。
- 開放されたままになっていないか:点検や停電作業のあとに投入されているか、保護動作で切れたままになっていないかを確認します。
- 制御が動いているか、構成が古くないか:自動力率調整装置が付いている場合はその動作状況を、直列リアクトルについては有無を確認します。

請求内訳や点検記録、盤の外から見える表示を先に確認し、機器内部の確認は電気主任技術者などに委ねます。
進相コンデンサの点検と更新をどう考えるか
確認の起点は銘板です。定格容量(kvar)・製造年・型式を控えます。容量が現在の負荷に見合うかは銘板だけでは決まらず、無効電力を踏まえて判断します。
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)は「知っておきたい 高圧進相コンデンサ設備の正しい取扱い」で、高圧進相コンデンサ設備の更新推奨時期を「15年」としています。同会の『汎用高圧機器の更新推奨時期に関する調査』報告書(改訂版2023年3月)が、汎用高圧機器10種類の更新推奨時期をまとめたものです。
年数は目安なので、実際は点検結果と併せて判断します。点検の観点は同会のページに数値つきで示されています。
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| 点検の観点 | JEMAが示す目安 |
|---|---|
| 外観 | 油漏れ・ガス漏れ・亀裂の有無を確認 |
| 電流 | 各相電流は定格電流の120%以下、平衡度1.08以下 |
| 温度 | ケース正面2/3Hまたは上蓋で70℃以下 |
| 異常音 | 励磁音・振動・共振・びびり音の有無を確認 |
更新では、コンデンサ単体でなく直列リアクトルを含む構成を確認します。JIS C 4902:2010は「コンデンサには直列リアクトルを取り付けて使用することを原則とする。」と定め、高圧受電設備規程(JEAC 8011-2014)は原則としてコンデンサリアクタンスの6%または13%の直列リアクトルを施設するよう求めています(いずれもJEMAの前掲ページ)。
前掲の指月電機製作所カタログによれば、内線規程(JEAC 8001-2022)と高圧受電設備規程(JEAC 8011-2020)では、コンデンサ回路への直列リアクトルの施設が、勧告から義務的事項に引き上げられました。古い設備ではリアクトルの有無自体が論点になります。
製造年が古い機器では、PCBを含む可能性の有無を確認する必要が生じる場合があります。該当するかは銘板の型式と製造年をもとにメーカーや行政の案内で確認し、必要なら法令に従って処理します。現場だけで判断しません。
電気設備工事の現場で受変電設備の更新を担当した経験からいうと、進相コンデンサが単体で発注されることは多くありません。変圧器や高圧ケーブルなど関連する機器をまとめて入れ替える形になり、きっかけも力率改善の提案より老朽化やPCBを含む機器の入れ替えが先に立ちます。更新投資の考え方は設備保全のテーマ記事と同じ整理が使えます。
更新工事は「誰が何をするか」を先に決める
進相コンデンサの更新では通常、停電日の調整が必要になるため、日程が大きな制約です。現場では、機器の納期が確定してから工場・電気主任技術者・工事会社の三者で停電日を詰めます。施工時期は納期と停電可能日に左右されます。
役割は大きく三つです。電気主任技術者は保安面から停電作業の計画や作業後の確認に関与します。工事会社は現地調査、機器の手配、施工を担います。工場側は停電可能な日時を決めて周知します。操作や分担は各工場の保安規程と管理体制に従います。年次点検の停電に更新を組み込める場合は、停電の回数や生産への影響を抑えられる可能性があります。

力率を確認するときのチェックリスト
- 直近12か月の請求内訳から、力率・契約電力・使用電力量を1枚の表に並べたか
- 北陸電力の同規定のように85%が基準の場合、そこから何ポイント離れているかを月ごとに見たか
- 力率が変わった月に、設備更新や停電作業、生産品目の変更がないか
- 進相コンデンサの銘板から、定格容量・製造年・型式を控えたか
- 年次点検の記録で、外観・電流・温度・異常音の所見を見たか
- 直列リアクトルと自動力率調整装置の有無、動作状態を見たか
関連する論点はエネルギーのテーマ一覧に。
よくある質問
力率が100%だと基本料金はどれだけ安くなりますか
北陸電力の規定と計算式を当てはめると、85%との差が15ポイントなので基本料金は15%の割引になります。同ページでは進み力率となる瞬間力率を100パーセントとして扱います。ほかの契約については料金表・約款で確認してください。
なぜ基準が85%なのですか
85%は料金規定に基準値として定められている数値です。北陸電力ではこの値を境に、上回る1パーセントごとに1パーセント割引、下回る1パーセントごとに1パーセント割増という対称の扱いです。設定理由の説明は料金規定になく、ここでは断定を避けます。
進相コンデンサは何年で交換するものですか
日本電機工業会は更新推奨時期を15年としています。ただし目安であり、設置環境や運転状況で状態は変わります。点検所見と併せて電気主任技術者と判断します。
力率は明細のどこを見れば分かりますか
請求内訳や電力会社の法人向け会員サイトに表示される場合があります。見当たらないときは契約先に問い合わせてください。
まとめ
- 北陸電力の高圧・特別高圧の同規定では、85%を基準に1%離れるごとに基本料金が1%増減する(2026年8月時点)。基準値は契約先の約款で確認する
- 北陸電力の同規定で料金に使うのは8時から22時までの平均力率。同規定と計算式では力率100%時の割引率は15%になる
- 力率が下がったときの確認候補は、容量の不一致・劣化や故障・進相コンデンサが開放されたままになっていること・制御の状態など
- 日本電機工業会は更新推奨時期を15年としている。直列リアクトルを含む構成と、関連する機器の同時更新の要否も併せて見る
- 更新では通常、停電日の調整が必要になる。年次点検の停電に合わせられれば生産への影響を抑えられる可能性がある
編集確認
株式会社恒電社 編集部
製造業の電気設備・自家消費型太陽光の現場に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。