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潤滑管理は何から始める?設備ごとの油種・給油箇所・補給量を記録し、誤給油と油漏れを防ぐ

潤滑管理は、設備ごとの油の種類と量を台帳にして誤給油を防ぎ、給油と補給量を記録して油漏れなどの兆しに気づく順で始めます。

油差しから歯車の入った箱へ油が落ちる絵の横に、潤滑管理の文字を置いた図
92設備保全

潤滑管理は、設備ごとに使う油の種類と量を決めて誤給油を防ぎ、給油と交換の状況を記録し、その記録から異常の兆しを見つける順で始めます。給油作業で労働者に危険があるときは機械を止め、起動装置への施錠や表示板の取付けなどで作業者以外による運転を防止するのが、労働安全衛生規則第107条の定めです。

潤滑とは、動く部品の間に油などを入れて、摩擦と摩耗を減らすことです。ここでは減速機、油圧装置、コンプレッサ、工作機械のように給油が必要な設備を対象に、台帳の項目、記録のつけ方、補給量の見方を順に説明します。油の種類や周期は設備ごとにメーカーが指定するため、一般的な目安値は載せません。

潤滑管理は油の状態と設備の摩耗を傾向で見ること

潤滑管理とは、油の性能と汚れ、設備の摩耗の状態を継続して監視し、結果に基づいて対策を取ることです。水資源機構の「機械設備管理指針」(平成28年3月)第10章は、潤滑管理を次のように定義しています。潤滑油・作動油の性能、汚染状態、機械設備の摩耗状態を傾向監視し、結果に基づいて適切な対策を講じることです。

潤滑油は摩擦と摩耗を減らす油で、作動油は油圧装置で力を伝える油です。同指針は、機械設備の劣化のほとんどが摩耗に関わり、潤滑は性能維持の重要な要素だとしています。高荷重の歯面では、潤滑不良が致命的な損傷に至るとされています。

指針の解説には、油圧装置の異常や不具合の原因と故障発生率の半数以上は、潤滑油・作動油の影響によるものという記述があります。この割合は油圧装置についての記述で、すべての設備に当てはまる数字ではありません。

この指針は水資源機構の施設(ダム、堰、水路など)の機械設備向けで、工場への法的義務ではありません。公的機関の保全指針を、自社の設備の実務に置き換える参考として使います。

設備ごとに油の種類と量を台帳へ書き、誤給油を防ぐ

最初に行うのは、給油している設備と箇所を洗い出し、使う油の種類と量を台帳に書くことです。同指針は、各機器に使用する潤滑油・作動油の種類と使用量を常に明確にし、誤った油の使用を防ぐよう求めています。種類が複数ある場合は管理を徹底し、機器の適正な油量を把握して充填量も適正に管理します。

台帳の項目は、次の表のように整理できます。公的な様式ではなく、記事の整理です。油の種類は銘柄と粘度の等級まで書き、取扱説明書で確認してください。粘度とは油の流れにくさを表す値で、等級で区分されます。

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区分項目書く内容
設備と箇所設備名、給油箇所給油口や油面計の位置まで書く
油の指定油の種類、規定量、給油・交換の周期取扱説明書の記載を写す。不明なときはメーカーに問い合わせる
作業方法運転停止の要否、分解の要否、担当停止が必要な箇所は錠・表示板の手順と合わせる
記録欄実施日、実施者、補給量・交換量、油の色や異物、漏れの有無給油のたびに書く
設備、給油箇所、油の種類、量、周期の5欄を持つ潤滑台帳の例を示した図
図1 潤滑台帳の例

指針が求めるのは油の種類と使用量の明確化までで、誤給油を防ぐ具体策は定めていません。次の3点は、その考え方を現場に置き換えた記事の整理です。

  • 給油口と、油の容器やポンプに、同じ識別(色や記号)を付ける
  • 台帳の油の種類と手元の容器を照合してから給油する
  • 油の種類を必要以上に増やさない。変更するときは取扱説明書を確認し、メーカーに相談する

潤滑箇所は目視できない場合が大多数のため、同指針は決められた間隔で給油が適正かを確認するよう求めています。集中給油装置は、複数の給油箇所へ配管で油やグリースを送る装置です。分配弁が動かない、配管がつぶれる、接続が不良になる、つまるといった理由で、給油されない箇所が出ることがあります。

給油のために機器の分解が必要な箇所は、点検表に実施方法(分解)と周期を明示します。グリースは油に増ちょう剤を混ぜた半固体の潤滑剤で、軸受などに使われます。

給油で機械を止める箇所を決め、錠と表示板の手順を合わせる

給油作業で労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、機械の運転を停止することが必要です。労働安全衛生規則第107条(e-Gov、2026年10月1日時点)は、事業者に次のことを定めています。機械(刃部を除く)の掃除、給油、検査、修理又は調整で危険のおそれがあるときは、運転を停止しなければなりません。

運転中に作業しなければならない場合は、危険な箇所に覆いを設けるなどの措置を講じれば、停止は求められません。運転を停止したときは、起動装置に錠を掛け、表示板を取り付けるなどして、作業者以外の者が運転することを防止します。停止した機械は、施錠や表示板の取付けなどで作業者以外が運転できない状態にしてから給油するのが基本です。

台帳の「作業方法」欄に運転停止の要否を書き、停止が必要な箇所は錠と表示板の手順をそろえてください。停止する箇所は、安全衛生の担当者と一緒に決めます。停止、作動防止、再起動前の確認の流れは、コンベヤ清掃・点検時の停止と再起動確認に整理しており、給油にも同じ考え方を使えます。

水資源機構の指針は、整備の内容を清掃、給油脂、調整、修理、取替に分けています。清掃と給油脂について指針が求めるのは、取扱説明書に基づく確実な実施と、点検との同時実施です。

給油のたびに補給量を記録し、月ごとに並べて変化を見る

給油のたびに補給量と気づいたことを記録して月ごとに並べると、油漏れや消費の増加に気づけます。同指針が求めるのは、設備ごとの油交換時期と給油状況の記録と把握です。給油の頻度や油漏れの状況を日頃から把握しておくことは、異常時の原因究明に役立つとのことです。

次の図は、架空の減速機1台の毎月の補給量を示した記事の例です。

減速機1台の月別補給量(L)

1月〜6月

出典:記事の例(架空の減速機1台)

補給量
減速機1台の月別補給量(L)補給量:1月 0.2 L、2月 0.2 L、3月 0.3 L、4月 0.2 L、5月 0.6 L、6月 0.9 L補給量、1月:0.2 L補給量、2月:0.2 L補給量、3月:0.3 L補給量、4月:0.2 L補給量、5月:0.6 L補給量、6月:0.9 L6月

※ 架空の例。異常を判定する基準ではない

データを表で見る

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減速機1台の月別補給量(L)
月補給量(L)
1月0.2
2月0.2
3月0.3
4月0.2
5月0.6
6月0.9

1〜4月は0.2〜0.3Lで推移し、5月は0.6L、6月は0.9Lに増えています。補給量の増加は、油漏れや消費の増加を疑うきっかけになります。何L増えたら異常という一律の基準は示せません。

まず補給量が増えた月を特定します。増えた原因は、漏れ箇所、シール(油の漏れを防ぐ部品)、配管の順に、保全担当や機器メーカーに相談しながら確認します。

自社の設備では、補給量が安定していた期間の値を「いつもの値」とし、そこからの変化を見ます。この見方は、後述する国土交通省関東地方整備局の報文を参考にした記事の整理です。報文は、初期なじみを過ぎた状態を初期値とし、そこからの相対変化で判断する方法を挙げています。

補給量の記録は、故障の記録と並べると点検周期を考える材料になります。故障の間隔と復旧時間の記録は、予防保全のKPIとMTBF・MTTRで説明しており、給油記録と合わせて点検周期を考えられます。

重要な設備は油の性状検査を検討し、廃油は産業廃棄物として処理する

重要な設備では、油の状態を調べる性状検査を検討します。性状検査とは、採取した油を外部の分析機関などで調べる検査のことです。水資源機構の指針は、潤滑油・作動油の定期的な性状検査を挙げています。

検査項目には、油性状(色相、粘度、酸価、水分、赤外線吸収スペクトル)、油中異物(汚染度)、摩耗(摩耗粒子、金属濃度)などがあります。成分検査は、過去の傾向から必要な項目に絞ってもかまいません。サンプルは、稼働中か停止直後に、外部の異物を入れないよう採取するのが望ましいとされています。

国土交通省関東地方整備局関東技術事務所の「潤滑油分析結果を活用した傾向管理」(「ぽんぷ」No.64掲載)は、潤滑油の役割を摩耗の防止、冷却、内部の防錆としています。そのうえで、摩耗粒子量を監視すれば機械内部の異常を発見でき、性状分析値と基準値を比べれば油の健全性を判定できます。

同整備局が年点検で採取して分析するのは、主原動機、減速機、自家発電機用ディーゼル機関などの潤滑油です。分析値は、設備の更新や整備、油の交換時期と合わせて時系列に整理しグラフ化しており、令和元年度は44施設、分析数量237でした。

一方で報文は、摩耗粒子濃度や金属元素量の増加は捉えられるものの、数値的にどのレベルを超えたら異常の兆候かは示せていないとしています。故障と分析結果の相関データがまだ得られていないためで、ここでも注意値の数字は示しません。

油の汚れも検査の対象です。同指針は、異物が増えると汚染と劣化が進み、漏油や設備故障の原因になるとしています。チリ、ホコリ、湿度、温度、光線、化学物質は、劣化を促進する要因です。高温・高圧下ではスラッジ(泥状の堆積物)が堆積して潤滑性能が低下し、金属の摩耗粉は焼き付きの原因になるおそれがあります。

指針が挙げる改善策のうち、次の3つを紹介します。給油不良なら配管や給油方法の見直し、油が合っていなければ専門家に相談しながらの油の変更、異物の混入なら原因の究明とシールやフィルターの見直しです。

水資源機構の指針は、廃油等の処理について産業廃棄物管理票(マニフェスト)に言及し、潤滑油・作動油の取替時には廃棄物処理法に沿った適正な処分が必要としています。

潤滑管理は洗い出し・台帳・停止手順・記録・比較の順に始める

始める順序は次の5段です。公的な手順書ではなく、記事の整理です。

  1. 給油している設備と箇所を洗い出す
  2. 取扱説明書で油の種類、量、周期を確認して台帳に書く。不明なものはメーカーに問い合わせる
  3. 機械を止める必要がある箇所を決め、錠と表示板の手順を合わせる(安衛則第107条)
  4. 給油のたびに、補給量と気づいたことを記録する
  5. 月ごとに補給量を並べて、いつもの値からの変化を見る
洗い出す、台帳に書く、給油する、記録する、変化を見るの5段を矢印でつないだ流れの図
図2 潤滑管理を始める5段の流れ

油の種類と量はメーカーか潤滑油の販売店、記録の運用は保全担当、停止手順は安全衛生の担当者に聞いてください。

補給量が増え続ける設備は、修理を続けるか更新するかの判断が必要になる場合があります。判断の順序は設備を修理するか更新するかの判断で確認でき、設備保全の記事は設備保全のテーマページにまとめています。

前提と注意:水資源機構の指針は同機構の施設の機械設備向けで、工場への法的義務ではありません。台帳の項目、誤給油を防ぐ工夫、補給量の例、始める順序は記事の整理で、補給量は架空の例です。マニフェストに関する説明は同指針の要約で、適用条件の詳細は扱っていません。油の種類、量、周期は、設備の取扱説明書とメーカーの指定を優先してください。

よくある質問

油の種類が分からない古い設備は、どう扱えばよいですか

まず銘板、取扱説明書、現在入っている油の容器の表示を確認します。分からないときは、機器メーカーか潤滑油の販売店に設備の型式を伝えて問い合わせてください。推測で似た油を入れると誤給油になるため、確認が取れるまでは台帳の油の欄に「確認中」と書いておきます。

グリースも同じ台帳で管理してよいですか

同じ台帳で管理できます。グリースも油と同様に、銘柄、給油箇所、量、周期、実施日を記録します。集中給油装置を使う設備には、配管のつまりや分配弁の不動作で給油されない箇所がないかを確認する欄を加えてください。

油の分析は外部に頼むべきですか

重要な設備や、補給量の増加など変化が見えた設備から検討します。水資源機構の指針は、成分検査を過去の傾向から必要な項目に絞ってもよいとしています。検査項目や頻度は、機器メーカーか分析機関に相談して決めます。

まとめ

  • 潤滑管理は、設備ごとの油の種類と量を明確にして誤給油を防ぐところから始める
  • 油交換時期と給油状況を設備ごとに記録し、補給量は月ごとに並べて変化を見る
  • 給油で危険があるときは機械を止め、施錠や表示板の取付けなどで作業者以外による運転を防止する(安衛則第107条)
  • 重要な設備では油の性状検査を検討する。油の取替時に生じる廃油は適正に処理する
  • 油の種類と周期は、取扱説明書とメーカーの指定を優先する
  • #潤滑管理
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  • #設備保全
  • #誤給油
  • #油漏れ
編

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株式会社恒電社 編集部

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