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工場の熱中症対策は何をする?WBGT測定と報告体制・救急判断の作り方

工場の熱中症対策をWBGT測定、対象作業、報告体制、離脱・冷却、119番判断まで現場向けに整理します。

工場の熱中症対策としてWBGT測定と報告体制を示す図版
84設備保全

本記事では、工場の熱中症対策のうち、異変の早期発見と重篤化防止の体制・手順を扱います。2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則では、一定の暑熱作業について、報告体制の整備と実施手順の作成・周知が求められています。

ここでは、工場の安全衛生担当者や設備担当者向けに、WBGTや気温の見方、対象作業の考え方、報告体制、離脱・冷却・搬送の手順を整理します。省エネや空調更新そのものではなく、現場で「今日の作業前に何を決めるか」に絞った内容です。関連する保全・安全の考え方は設備保全テーマの記事一覧にもまとめています。

まず対象作業を判定する

最初に確認するのは、作業場所が「暑熱な場所」に当たるかです。厚生労働省の施行通知では、暑熱な場所はWBGT28度以上、または気温31度以上の場所とされています。さらに、その場所で継続して1時間以上、または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業が対象になります。

ここで大事なのは、常設ラインだけに限定しないことです。通知では、非定常作業や臨時作業でも条件を満たす見込みがあれば対象になり得るとされています。屋外搬入、炉まわりの点検、屋根下のコンベヤ清掃、休日の設備復旧など、いつもの工程表から外れる作業も対象候補です。

一方で、WBGT28度以上なら全作業が一律に停止義務、という意味ではありません。この数値と時間は、第612条の2に基づく体制整備等の対象を判断する条件であり、安全を保証する境界でもありません。条件未満でも、作業負荷、服装、暑さへの慣れなどに応じた予防対策が必要です。

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確認項目見るポイント工場での例
暑熱な場所WBGT28度以上、または気温31度以上炉前、屋外ヤード、空調の弱い倉庫
作業時間継続1時間以上、または1日4時間超の見込み積込み、清掃、設備復旧、検品
非定常作業臨時でも条件を満たす見込みなら確認突発故障対応、棚卸、休日工事

WBGT測定は作業場所で見る

WBGTは、気温だけでなく、湿度、日射や輻射熱を含めて暑さを評価する指標です。厚労省の暑さ指数の説明でも、暑熱環境による熱ストレスを評価する指標として説明されています。工場では、同じ外気温でも、炉、乾燥機、屋根材、換気量、作業服で体感が大きく変わる点に注意します。

施行通知では、暑熱な場所に当たるかは、原則として作業が行われる場所でWBGTまたは気温を実測して判断する扱いです。測定位置は、作業者が実際にさらされる環境を捉えられる場所にし、測定器の使用方法に従います。作業負荷や服装まで含めたリスク評価には、職場における熱中症防止のためのガイドラインも確認します。

通風のよい屋外作業など、天気予報や環境省の熱中症予防情報サイト等で判断できる場合は、それらを用いても差し支えないとされています。ただし、屋内工場では外の予報だけで済ませると、炉前や西日の当たる出荷場を見落とすおそれもあります。現場固有の熱源がある場所は、実測が基本です。

工場内のWBGT測定地点と作業時間を確認する図
図1:対象作業は、作業場所のWBGTまたは気温と、予定作業時間を組み合わせて確認する

測定の運用は、複雑にしすぎないほうが続きます。測定時刻の目安を決めるとともに、炉の稼働、天候、換気、作業場所などが変わった場合にも確認します。ここが要点です。測定値、場所、時刻、予定作業、責任者の判断を同じ表に残すと、翌年の準備にも使える記録になります。

報告体制は連絡先を決めるだけでは足りない

労働安全衛生規則第612条の2は、対象作業を行うとき、熱中症の自覚症状がある場合や、他の作業者に熱中症が生じた疑いを発見した場合に、報告させる体制を整備し、作業従事者へ周知することを求める内容です。条文は現行の労働安全衛生規則で確認できます。

施行通知では、報告体制には、報告を受ける責任者等の連絡先と連絡方法を定め、明示し、作業中に随時報告を受けられる状態を保つことが含まれるとされています。つまり、掲示だけで足りるとは限りません。ライン停止中の設備担当、屋外ヤードのフォークリフト担当、協力会社の作業者が、誰へ、どの手段で、何を伝えるかまでそろえる必要があります。

周知方法は、対象者に確実に伝わる方法を選びます。掲示、メール、文書配布、朝礼などを用い、必要に応じて組み合わせます。副担当や迂回連絡先の設定は、随時報告を受けられる状態を保つための運用例です。同じ場所で対象作業を行う個人事業者等にも情報が届くようにし、混在作業では各事業者が自らの措置義務を確認します。

  • 本人が「めまい、吐き気、頭痛、力が入らない」と言ったときの報告先
  • 周囲が「返事が遅い、ふらつく、汗の出方がおかしい」と気づいたときの報告先
  • 責任者につながらないときの副連絡先
  • 協力会社や派遣社員にも同じ情報を渡す方法

巡視、バディ制、定期連絡、ウェアラブル機器は、早期発見の補助になります。ただし、通知はウェアラブルだけで状態を正確に把握できるとは限らないため、他の方法と組み合わせることが望ましいという扱いです。機器を入れる場合も、誰が異変を把握し、誰へ報告し、誰が離脱や救急対応を進めるかを決めておきます。

異変時の離脱・冷却と救急要請の判断を決める

第612条の2第2項では、作業場ごとに、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察または処置、その他悪化防止に必要な措置の内容と手順を定め、周知することが求められています。水分補給の声かけだけでは、手順として不足するためです。

熱中症が疑われたら、直ちに作業から離し、涼しい場所で身体を冷やします。意識がはっきりしない、呼びかけへの反応がおかしい、自力で水分を飲めない場合は、直ちに119番で救急車を要請します。責任者への報告や承認、冷却による改善を待って要請を遅らせないようにします。救急隊の到着を待つ間も冷却を続け、本人を一人にしません。症状が改善しない場合も、速やかに医療機関につなぎます。

通知では、熱中症が疑われる場合は、WBGT値や作業時間等にかかわらず、作成した手順を踏まえて適切に対処することが重要とされています。対象作業の条件に入るかどうかの議論をしている間に、本人を一人にしないことが優先です。

熱中症の疑いを発見して救急判断へ分岐し、119番要請と冷却見守りを並行する流れ図
図2:異変発見後は、救急判断へ分岐し、119番要請と冷却・見守りを並行する

冷却方法も事前に決めます。涼しい休憩所へ移す、ミストファンを当てる、身体に水をかける、氷や保冷剤を使うなど、工場ごとに使える手段は違います。水分・塩分の補給は、意識がはっきりしており、自力で安全に飲める場合に行います。反応が悪い場合や飲めない場合は、無理に飲ませないでください。厚労省の応急処置案内も確認しておきます。

保冷剤の置き場所、担架や車いすの有無、救急車を呼ぶ場所、門から現場までの誘導担当も決めておくと、初動を早められます。

関連する非定常作業の安全確認は、コンベヤの清掃・点検時の停止確認でも考え方が近いです。暑熱作業でも、止める判断と再開条件を曖昧にしないことが事故防止につながります。

作業前チェックを一枚にまとめる

運用で崩れやすいのは、測定表、作業予定、報告先、救急手順が別々のファイルに分かれることです。運用例として、作業前の確認事項を1枚のチェック表にまとめる方法があります。法定様式ではありません。対象作業、測定値、作業時間、休憩場所、報告先、冷却用品、搬送先を同じ紙またはフォームで確認します。

記録については注意が必要です。施行通知は、現場で周知した結果の記録保存までは法令では求めていないとしています。ただし、監督署による確認に際しては、事業者として適切に対応することが求められるとも示しています。測定値、判断、対応結果の保存は、法定保存義務と断定せず、実務上の説明材料として残す、という位置づけが無理のない整理です。

以下は架空の作業を想定した記入例です。

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欄記入例目的
測定出荷場 13:00 WBGT29.2暑熱な場所の確認
作業積込み 13:30〜15:001時間以上の見込み確認
報告先班長、つながらなければ事務所随時報告できる状態
手順直ちに離脱・冷却。意識異常・反応不良・自力飲水不能時は直ちに119番。冷却・見守りを並行し、救急隊を誘導初動の迷いを減らす

設備担当が関わる場合は、熱源や換気も合わせて見ます。局所排気、送風機、遮熱、休憩所の冷房、設備停止時の放熱などは、点検計画と関係します。設備保全の考え方は設備を修理するか更新するかの判断ともつながる論点です。

朝礼前にWBGT測定値、作業予定、報告先、冷却用品を一枚で確認する図
図3:作業前チェックの運用例(法定様式ではありません)

よくある質問

WBGT測定器がなければ対象判断はできませんか?

原則は作業場所でWBGTまたは気温を実測して判断します。通知では、通風のよい屋外作業など判断可能な場合に天気予報や環境省サイト等を用いても差し支えないとされています。ただし、工場内の熱源や輻射が強い場所は、外部情報だけでは不足しやすいです。

報告体制は掲示だけで足りますか?

掲示は有効な周知方法の一つです。ただし、朝礼に参加しない人、協力会社、屋外作業者、夜勤者にも確実に伝わる必要があります。掲示、朝礼、作業指示書、メールやチャットを必要に応じて組み合わせます。副連絡先の明示は、随時報告を受けるための運用例です。

報告体制や手順を周知した結果の記録は、保存義務がありますか?

施行通知は、現場で周知した結果の記録保存までは法令では求めていないとしています。一方で、監督署確認では適切な対応が求められるため、測定値、作業判断、周知内容、対応結果を実務記録として残すと説明しやすくなります。ここでの説明は周知結果の記録についてです。労働災害発生時の報告など、別の義務まで不要になるという意味ではありません。

まとめ

工場の熱中症対策は、WBGT測定、対象作業の判定、報告体制、離脱・冷却・医療機関連絡の手順を一体で作ると運用しやすくなります。異変時に直ちに離脱・冷却を始め、救急要請が必要な場合は報告や承認を待たず119番し、冷却・見守りを並行する役割を決めておくことが要点です。

まずは、暑熱になりやすい作業場所と作業を洗い出し、非定常作業や場所間の移動も含めて対象を確認します。測定時刻、報告先、休憩場所、冷却用品、救急時の誘導担当を1枚にまとめます。同じ作業者が一定期間継続して作業し、既に整備・周知済みの場合、毎日の再実施までは求められていません。日々の確認は運用上の工夫として行い、人員や連絡先等が変わった場合は必要な周知を行います。

  • #熱中症
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株式会社恒電社 編集部

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