新人が入社して数か月〜1年ほどで辞めていく工場では、そのたびに採用と教育をゼロからやり直す負担が、毎年積み上がっていきます。厚生労働省の統計によれば、製造業の新規学卒就職者には、3年以内離職率(就職してから3年以内に離職した人の割合)という指標があります。この率は、高卒28.6%・大卒21.2%です(令和4年3月卒業者)。
全産業の平均よりは低いものの、それでも一定数が早期に辞めているのが実情です。まず、離職の実態と辞める理由の型を、公的統計で確かめます。そのうえで、入社後90日をどう設計するか、面談はどんな型で行うか、現場の負荷とどう両立させるか、という順番で進めていきます。
扱うのは「どう引き止めるか」ではなく「辞める前に気づける仕組みをどう作るか」です。気づく仕組みが先です。教える側の負担にも気を配りながら、早期離職の兆候に気づきやすくする考え方として読み進めてください。
若手はどれだけ辞めているのか——製造業の離職率を数字で見る
この節でわかるのは、製造業の3年以内離職率は全産業平均より低いものの、おおむね3〜5人に1人が3年以内に辞めている水準だということです。低いことと安心とは別です。実数で確かめましょう。
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(令和7年10月24日公表)によると、就職後3年以内の離職率は次のとおりです。まず全体像を見ます。全産業平均は、新規高卒就職者が37.9%、新規大学卒就職者が33.8%でした。
産業別に見ると、製造業は新規高卒28.6%(就職者57,193人中16,358人離職)、新規大卒21.2%(就職者62,755人中13,273人離職)でした。差は小さくありません。いずれも、全産業平均より10ポイント前後低い水準です。
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| 区分(令和4年3月卒業者) | 製造業 | 全産業平均 |
|---|---|---|
| 新規高卒就職者・3年以内離職率 | 28.6% | 37.9% |
| 新規大卒就職者・3年以内離職率 | 21.2% | 33.8% |
全産業より低いとはいえ、おおむね3〜5人に1人が3年以内に離職している計算になります。感覚では測れません。「うちは大丈夫」と感じている場合であっても、実数を数えてから確かめておきたい水準だと言えます。
辞める理由には型がある——雇用動向調査・若年者雇用実態調査から
この節でわかるのは、離職理由には「給料」「職場の人間関係」「労働条件」という型があり、面談で確認する軸に使えるということです。型は大きく3つです。面談ではこの3点を確かめましょう。
厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省が事業所の入職・離職の状況を調べる統計。表5)は、転職入職者に前職を辞めた理由を尋ねています。個人的な理由や出向などを除いた理由の割合を見ると、次のとおりです。
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| 順位 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 1位 | 定年・契約期間の満了(14.1%) | 労働条件が悪かった(12.8%) |
| 2位 | 給料等収入が少なかった(10.1%) | 職場の人間関係が好ましくなかった(11.7%) |
| 3位 | 職場の人間関係が好ましくなかった(9.0%) | (記事では上位2項目のみ記載) |
| 4位 | 労働条件が悪かった(8.6%) | (同上) |
この調査は、全年齢・全産業の転職入職者を対象にしたものであり、製造業の若手だけに限定した数値ではありません。ただし、「給料」「職場の人間関係」「労働条件」の3つが、面談などで確認するときの軸になります。
製造業に絞ると、厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(厚生労働省が若い労働者の雇用の実態を調べる統計。表7)があります。過去1年間に自己都合で退職した若手正社員がいた事業所の割合は、製造業38.7%(全産業平均28.4%)でした。退職理由の内訳を示す数値ではなく、退職者がいた事業所の割合を示す数値です。
統計の回答項目そのものではなく、現場での確認の例です。次のような状況がないかを見ていきます。挙げるのは3点です。
- 給料・収入:同業他社や地域の相場と比べて割に合わないと感じていないか
- 職場の人間関係:相談できる相手がいない、指導が一方通行になっていないか
- 労働条件:休日・労働時間の実態が募集や面接時の説明と食い違っていないか
不満が生じる時期を統計から特定することはできません。入社した直後から変化に気づける運用にしておく、という考え方が現実的です。この考え方で次の90日の設計を進めていきます。
入社後90日をどう設計するか
この節でわかるのは、入社後90日を「様子を見る期間」ではなく、時期ごとにやることと確認することを決めておく「設計する期間」として扱うということです。
労働条件についての認識のズレは、募集の段階である程度防ぐことができます。厚生労働省が出している「2024年4月施行 改正職業安定法施行規則」募集時明示事項リーフレットには、募集のときに明示すべき事項として、次の3つが新たに追加されました。
- 従事すべき業務の変更の範囲
- 就業場所の変更の範囲
- 有期労働契約を更新する場合の基準
募集のときの説明と配属後の実態とが食い違っていないかどうかを、入社前に採用担当と現場とで突き合わせておくのが、90日設計の前提です。以下で示す90日の区切りと面談のタイミングは、厚生労働省が定めた基準ではなく、あくまで現場での運用の一例です。人数や教育期間に応じて調整してください。
入社後90日は「様子を見る期間」ではなく設計する期間です。区切りごとに「何をやらせるか」と「何を確認するか」を先に決めておきます。決めるのは事前です。
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| 時期 | やること | 確認すること |
|---|---|---|
| 初日〜1週目 | 安全教育、配属先紹介、教える担当を1人決める | 誰に何を聞けばよいか伝わっているか |
| 2〜4週目 | 基本作業を区切って教え、できたことを伝える | 任せてよい範囲と要確認範囲の線引き |
| 5〜8週目 | 任せる作業を広げ、小さな判断を委ねる | ミスや疑問を報告しやすい雰囲気か |
| 9〜13週目(90日目) | 面談で振り返り、次の目標を決める | できるようになったことを本人の言葉で確認 |
担当を1人だけに固定してしまうと、その人が休んだ日には教育が止まってしまいます。主担当と副担当とに分けておき、副担当が少なくとも週1回は声をかける形にしておくのは、属人化や負荷の集中を抑えるための一案です。

面談の型——頻度と何を聞くか
この節でわかるのは、面談は困りごとが表に出てから行うのではなく、決まった頻度で先回りして行うということです。表面化してからでは間に合いません。先回りが基本です。
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| タイミング | 主に聞くこと | 記録する人 |
|---|---|---|
| 1週目終わり | 職場や仕事内容の第一印象、困っていること | 配属先の担当 |
| 1か月目 | できるようになったこと、まだ不安なこと | 配属先の担当 |
| 3か月目(90日) | 本人の言葉での振り返り、次の目標 | 配属先の担当+上長 |
| 以降は月1回程度 | 変化の有無(表情・欠勤・相談の減少) | 上長 |
聞き方の軸は、一つだけです。できたことを本人の言葉で言わせます。「頑張ってるね」だけで終わらせず、「先週できなかった何が、今はできるようになったのか」を具体的に答えてもらいます。答えに詰まる状態が続くようなら、作業の難易度か、教え方のどちらかが合っていない兆候として扱います。
現場の負荷と両立させる考え方
定着のための取り組みは、教える側の善意だけに頼ると長続きしません。厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(表8。出典は前段と同じ)によれば、定着対策を行う若年正社員向け事業所は73.7%です。そのうち、最も多い対策は「職場での意思疎通の向上」の59.7%でした。
ほかに「本人の能力・適性にあった配置」55.6%、「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」52.9%なども実施されています。どれも日々の運用に関わる対策です。特別な制度は要りません。
この調査の結果そのものは、OJTを誰が担当するかの分担を示すものではありません。ただ、意思疎通のための接点を複数人で持っておくことは、現場で考えられる運用例の一つです。
主担当と副担当とで分担することや、面談の記録先を配属先と上長とで分けておくことも、負担を調整するための設計例の一つです。負荷を見える形にせず「もっと丁寧に教えて」とだけ求めると、教える側が先に疲れてしまいます。精神論では続きません。

よくある質問
Q. 「3年以内離職率」はどう読めばよいですか
製造業の3年以内離職率(高卒28.6%・大卒21.2%、令和4年3月卒業者)は、雇用保険の届出情報をもとに厚生労働省がまとめた、製造業全体の値です。事業所の規模や職種で水準は変わります。対象を揃えたうえで自社の入社者数と離職者数を数え、比べる材料に使うのが現実的です。
Q. 面談はどれくらいの頻度で行うのが目安ですか
入社後90日までは、1週目・1か月目・3か月目の3回を基本の形としておきます。それ以降は月1回程度に落ち着かせるのが目安です。頻度は配属人数に応じて調整してかまいませんが、決まったタイミングで先回りして聞く形を優先します。
Q. 教える側の負担をどう減らせばよいですか
1人だけに教育を集中させず、主担当と副担当とに分けるのが基本です。厚生労働省の調査でも、定着対策として「職場での意思疎通の向上」が最も多く行われています。日常の声かけを複数人で分担するのも、行いやすい運用例の一つです。
面談の記録先は、配属先と上長とで分けておきます。特定の担当者だけに負荷が集中する状態を避けやすくなります。分散が要点です。
まとめ
- 実態を数える:製造業の3年以内離職率(高卒28.6%・大卒21.2%)を基準に、自社の入社者数と離職者数をまず数える
- 「給料」「職場の人間関係」「労働条件」は離職理由を確認する軸になる(統計は全年齢・全産業対象)
- 入社後90日は様子見でなく設計する期間として、時期ごとにやることと確認することを決める
- 面談は困りごとが出てからでなく、1週目・1か月目・3か月目を基本に先回りする
- 教える側の負荷を分散することが、定着対策を長続きさせる前提になる
製造現場の採用・定着に関する記事は採用・人材のテーマページで扱っています。教育の負担軽減は外段取り・内段取りとは?段取り時間を短縮する4つの手順と金額換算、現場の記録習慣はチョコ停とは?記録の仕方から原因の型・優先順位まで見える化の手順でまとめています。
役割分担の考え方はMTBF・MTTRとは?予防保全のKPIの決め方と法定点検周期の線引きでも整理しています。
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株式会社恒電社 編集部
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