本記事では、採用した人のうち、対象期間中に離職しなかった人の割合を、便宜上「定着率」と呼びます。「定着率」という語そのものを定義した法令・公的統計の用語定義は、今回確認した原典には見当たりません。
それでも、計算に使える実数は原典にあります。若者雇用促進法の施行規則が青少年雇用情報として掲げるのは、直近3事業年度に採用した人数と、そのうち離職した人数の2つです。この2つを使えば、採用者集団のうち離職しなかった人の割合を計算できます。
分母の置き方、雇用動向調査の離職率との違い、原典にある数値基準、自社で出すときに決める3点の順に見ます。
ここでの計算は、分母を「採用した人」に置く
施行規則が青少年雇用情報として掲げる2つの実数から、分母を決めます。青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則(平成27年厚生労働省令第155号)第3条第1項第1号イは、青少年雇用情報として次の事項を挙げています。
直近の三事業年度に採用した者(新規学卒者等に限る。)の数及び当該採用した者のうち直近の三事業年度に離職した者の数
採用者の数と、その採用者のうち離職した数。この2つが対になっています。ここから割合を出すなら、式は次の形になります。
言葉にすると、対象期間に採用した人のうち、同じ期間中に離職したと数えられなかった人の割合を求める計算です。追う対象は、あらかじめ対象にすると決めた期間・採用区分に該当する採用者です。対象期間外に採用した人や、対象外とした採用区分の人は含めません。
数字を当ててみます。直近3事業年度に20人を採用し、そのうち4人が同じ期間に離職したとします。この計算上、離職しなかった人は16人です。16を20で割ると0.8ですから、定着率は80%になります。同じ数字を離職の側から見ると、4を20で割って20%です。
この20人には、3年前に採用した人も、昨年採用した人も混ざります。追う期間が人によって違う点は、この数え方の性質として押さえておきます。
青少年雇用情報には、平均継続勤務年数も挙げられている
掲げられているのは、採用者数と離職者数だけではありません。施行規則第3条第1項第1号ハは、その雇用する労働者の平均継続勤務年数も青少年雇用情報として挙げています。同項第1号ロには、男女別の採用者数もあります。

雇用動向調査の離職率とは、足して100になるとは限らない
定着率と離職率は裏返しの関係に見えますが、統計上の離職率とは分母が別です。厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」の主な用語の定義では、離職率は次の式で算出されています。
分母は、その年の初めに在籍していた常用労働者です。いつ入社した人かは問いません。同資料では常用労働者を、期間を定めずに雇われている者、または1か月以上の期間を定めて雇われている者と定義しています。
一方、定着率で追うのは特定の年度に採用した集団です。同じ採用者集団について「離職した割合」と「離職しなかった割合」を出せば、その2つの合計は100%になります。
ただし、その離職割合と雇用動向調査の離職率は別の指標です。分母が違うので、この2つを足して100になるとは限りません。計算条件が異なれば、合計が100%にならない数値になることがあります。
雇用動向調査ベースの離職率をどう出すかは、離職率の計算方法をまとめた記事で分母・分子の決め方まで扱っています。
今回確認した原典にある数値基準は「5分の1以下」
定着率に「何%以上なら良い」という一般的な公的基準は見当たりません。今回確認した原典では、認定制度の要件として次の数値基準があります。
若者雇用促進法にもとづくユースエール認定です。同法第15条は、常時雇用する労働者が300人以下の事業主について、厚生労働大臣が優良な取組を認定できると定めています。その基準を定める施行規則第7条第3号イが、次の要件を挙げています。
- 離職の割合が5分の1以下:直近3事業年度に新規学卒者等であって通常の労働者として雇い入れた人数に対し、そのうち直近3事業年度に離職した人数の割合が5分の1以下であること
- 少人数の例外:その採用者数が3人または4人の場合は、離職した人数が1人以下であれば足りる
5分の1以下ということは、定着率に直すと80%以上です。採用者数と、その採用者のうち離職した人数を用いる計算構造は、第3条の情報提供事項と共通します。ただし、第7条の認定基準では、通常の労働者として雇い入れた新規学卒者等が対象です。ただし、採用者が3人または4人の場合は離職者1人以下という例外があるため、この計算による割合が80%未満でも、この離職要件を満たす場合があります。
なお、直近3事業年度に、この要件の対象となる新規学卒者等の採用者がいない場合は、この離職割合要件への該当は求められません。
3年以内に離職しなかった人の割合を、事業所規模別に見る
自社の数字を比較する際は、全国全体だけでなく、規模の近い層も参考になります。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(令和7年10月24日公表)は、事業所規模別の就職後3年以内離職率を示しています。これを100から引くと、3年以内に離職しなかった人の割合になります。
事業所規模別・3年以内に離職しなかった人の割合(令和4年3月卒業者)
データを表で見る
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| 事業所規模 | 高校卒 | 大学卒 |
|---|---|---|
| 5人未満 | 36.8 | 42.5 |
| 5〜29人 | 45.4 | 48.0 |
| 30〜99人 | 54.8 | 58.1 |
| 100〜499人 | 63.3 | 66.1 |
| 500〜999人 | 70.1 | 68.5 |
| 1,000人以上 | 73.7 | 73.0 |
掲載された6区分では、事業所規模が小さい区分ほど、就職後3年以内に離職しなかった人の割合が低い並びになっています。従業員30〜99人の事業所では、高校卒で54.8%、大学卒で58.1%です。1,000人以上の事業所とは、高校卒で18.9ポイント、大学卒で14.9ポイントの差があります。
全体値だけでなく規模の近い区分を参考にすると、事業所規模の違いを1つ減らして比較できます。この統計は新規学卒就職者を対象としており、中途採用者は含みません。中途採用が中心の工場では、自社の数字と直接は比べられません。
この比較は規模別の集計値との単純比較であり、規模が離職の原因であることや、平均との差が自社固有の要因によることを示すものではありません。

自社で出すときに決める3つのこと
式が決まっても、数え方を先に決めておかないと数字がぶれます。決めるのは3点です。
- 対象期間:何年度に採用した人を追うか。若者雇用促進法施行規則の青少年雇用情報で用いられているのは、直近3事業年度です
- 分母に入れる人:新規学卒者だけか、中途採用も含めるか。正社員だけか、有期契約も入れるか
- 離職を数える期間:対象となる採用者について、いつまでに発生した離職を数えるか。集計の終期を事業年度末などに揃えると、翌年も同じ条件で比べられる
この3点を変えると、同じ工場でも数字は動きます。期間を直近1年度に縮めれば、観察できる離職期間が短くなるぶん、3年度分の集計とは条件が変わる。有期契約者を含める場合は、契約満了者をどのように扱った数字かも明示する必要があります。なお、ここでは採用の対象期間と、その採用者の離職を数える期間を同じ期間にそろえる場合を想定しています。
離職を数える期間も毎回揃えます。どの日までに発生した離職を集計するかを、たとえば退職の効力発生日を基準にするなど、あらかじめ統一しておきます。求人票に載せる数字なら、対象とした採用期間、採用区分、離職を数えた期間を書き添えておくと後で説明しやすくなります。
数え方が決まったら、記録の形も1つに揃えます。採用年度・採用人数・離職人数・判定時点を1行にした表を作り、毎年同じ表に追記する。翌年の求人準備のときに、前年の条件を思い出す作業がなくなります。
公表する場面も法律に出てきます。若者雇用促進法第13条第2項が定めるのは、学校卒業見込者等であることを条件とする募集を行う者または募集受託者の義務です。その募集に応じ、または応じようとする学校卒業見込者等から求められた場合、青少年雇用情報を提供しなければなりません。
第14条第2項は、新卒向け求人をハローワーク等に申し込んだ求人者を対象としています。申込先のハローワーク等や、その紹介を受け、または受けようとする学校卒業見込者等から求められた場合、同じく提供義務があります。求人票の書き方そのものは求人票の直し方の記事で扱っています。
よくある質問
定着率と離職率は、足して100%になりませんか
同じ採用者集団について、同じ期間・同じ数え方で計算した場合は、足して100%になります。ただし、厚生労働省の雇用動向調査における離職率は、1月1日現在の常用労働者数を分母としています。採用した集団を分母にする計算とは条件が異なるため、この2つを足しても100%になるとは限りません。自社で2つを並べるときは、どちらの分母で出した数字かを添えてください。
中途採用が中心の工場でも、定着率は出せますか
出せます。ただし、同施行規則が青少年雇用情報として掲げているのは、新規学卒者等の採用者数と、そのうち離職した人数です。中途採用を含めた数字を出す場合は、比べる相手が変わります。厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況とは対象が違うため、そのまま並べることはできません。
何%あれば「高い」と言えますか
一般的な基準は、今回確認した原典にはありません。数値基準として確認できるのは、ユースエール認定の要件である5分の1以下という離職の割合だけです。それも、常時雇用する労働者が300人以下の事業主を対象とした認定制度の基準です。若手の定着そのものへの手当ては若手の定着を扱った記事で、採用と人手不足を含む全体像は人材・採用のテーマページで整理しています。
まとめ
- 「定着率」を定義した法令は見当たらない。施行規則が青少年雇用情報として掲げるのは、採用者数と、そのうち離職した人数の2つ
- ここでの計算では、分母は採用した人。雇用動向調査の離職率は分母が1月1日現在の常用労働者数で、足して100になるとは限らない
- 数値基準として確認できるのは、ユースエール認定の要件である「離職の割合が5分の1以下」。採用者3人または4人なら離職1人以下で足りる
- 3年以内に離職しなかった人の割合は、30〜99人の事業所で高校卒54.8%・大学卒58.1%。1,000人以上との差は高校卒18.9ポイント・大学卒14.9ポイント
- 自社で出すなら、対象期間・分母に入れる人・離職を数える期間の3点を先に決めて、翌年も同じ条件で並べる
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。