実務記事 / 39

特定技能と技能実習の違いは?法律の目的から分かれる在留期間・人数枠・転職

特定技能と技能実習の違いを法律の目的から整理し、在留期間・人数枠・転職・賃金の差と、2027年4月の育成就労への移行までまとめます。

「目的が違う」「特定技能と技能実習の5つの差」の2行を大きく置き、下に左右逆向きの2本の矢印を並べた記事サムネイル
39採用・人材

特定技能と技能実習は、名前が似ていても別の制度です。技能実習は日本の技能を海外へ移すための制度、特定技能は人手が足りない産業で働き手を確保するための在留資格です。外国人材の受入れを考えるなら、まずこの一点を押さえてください。

違いは法律が定めた目的が違うことから始まります。枝分かれするのは在留期間・人数枠・転職・賃金・会社の義務です。工場での扱いと、2027年4月の育成就労への切り替わりまで順に見ていきます。

違いの起点は、法律に書かれた目的にある

二つは根拠となる法律から違います。技能実習の根拠は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)です。その第1条は目的を、人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力の推進だと定めています。だから第3条第2項には、次の一文があります。

技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。

人手不足を補う需給調整策として行ってはならないことを、法律が明記しています。一方の特定技能は入管法が定める在留資格です。出入国在留管理庁が示す特定技能1号の定義は、対象の分野を「人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」と書いています。制度上、不足する人材の確保を図る分野で就労するための在留資格と位置付けられています。

片方は需給調整策として使ってはいけない制度で、もう片方は人材の確保のための制度です。この目的の違いが、以降に見る制度設計の差の起点になります。

法律が定めた目的から左右に分かれる図。左は技能実習と技能等の移転で、労働力の需給調整に使えない・受入れ人数枠があると続き、右は特定技能と人材の確保で、人数枠は原則なし・報酬は日本人と同等額以上と続く
図1 目的の違いと、そこから分かれる条件

目的の違いは、現場の5つの条件に出る

目的が違えば、守るルールも変わります。実務で突き当たるのは次の5点です。

←→ 横にスクロールできます

見る点技能実習特定技能1号
在留の期間1号・2号・3号の段階ごとに在留期間が決まる通算で原則5年以内。2号は更新でき、通算の制限はない
受入れの人数受入れ人数枠がある(方式・段階・常勤職員数などで異なる)原則として受入れ機関ごとの枠はない(一部分野は例外)
本人の転職認定された技能実習計画に沿って実習実施者のもとで行う雇用契約に基づく就労。支援計画に転職支援の項目がある
賃金労働関係法令が適用される(固有の報酬基準は別途確認)報酬額が日本人と同等額以上であることが契約の基準
会社の義務技能実習計画の認定が必要。監理団体型では監理団体の監理を受ける10項目の支援計画を作り実施(登録支援機関へ委託も可)

工場にとって差が大きいのは人数枠です。運用要領は、特定技能では原則として受入れ機関ごとの人数枠を設けていないと明記しています。ただし分野によっては枠があるので、自社の分野の要領別冊を見てください。

支援計画も見落とせません。1号特定技能外国人への支援は10項目で、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語習得支援、定期的な面談などが並びます。ここに転職支援に関する事項が入っています。転職相談の日時や転職先候補企業の名称まで記録する項目です。

ただし転職支援が必要になる場面や支援義務の範囲は、離職の事情や契約の終了理由で変わります。運用要領で個別に確認してください。

注意:分野・業務区分・数値は2026年8月時点の公表資料に基づき、省令・告示の改正で変わります。「工場」であることだけで分野は決まりません。製造品目と業務によっては飲食料品製造業など別分野に該当します。技能実習の人数枠は受入れ方式・実習段階・常勤職員数で異なり、技能実習固有の報酬基準は本ページでは検証していません。個別の可否は地方出入国在留管理局または監理団体・登録支援機関へ確認してください。

工場が確認するのは「工業製品製造業」の業務区分

制度を自社に当てはめる作業は、分野の確認から始まります。特定技能の受入れ分野は特定産業分野と呼ばれ、19分野。このうち2号の対象は11分野に絞られます。

工業製品の製造を行う工場が確認するのは、多くの場合工業製品製造業です。1号と2号の両方が対象ですが、2号は分野全体ではありません。出入国在留管理庁の提出書類一覧表には、機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理の3区分だけが2号の対象だと注記されています。この分野の業務区分は全部で17です。

  • 機械金属加工/電気電子機器組立て/金属表面処理
  • 紙器・段ボール箱製造/印刷・製本/家具製造/かばん製造/陶磁器製品製造
  • コンクリート製品製造/生コンクリート製造/定形・不定形耐火物製造
  • 紡織製品製造/縫製/電線・ケーブル製造/ゴム製品製造/プレハブ住宅製品製造/RPF製造

どの区分に当たるかで、特定技能1号の通算原則5年を超えて2号として働き続けてもらえるかが変わります。技能の引き継ぎ計画にも直結します。判断がつかないときは、地方出入国在留管理局か、分野を所管する省庁の問合せ窓口が確認先です。

ここでいう継続の可否は1号から2号への移行の話で、他の在留資格への変更は含みません。対象区分でも自動的に移行できるわけではなく、本人が試験等の要件を満たし、在留資格変更の許可を受ける必要があります。

数字で見ると、技能実習は依然多く、特定技能は前年比38.3%増

制度の使われ方は統計で確認できます。厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況では、令和7年10月末時点の外国人労働者数は2,571,037人。産業別では製造業が最も多く、全体の24.7%です。

在留資格別の外国人労働者数

令和6年10月末時点と令和7年10月末時点

出典:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況【概要版】(令和7年10月末時点)」

令和6年10月末令和7年10月末
在留資格別の外国人労働者数令和6年10月末:専門的・技術的分野 718,812 人、身分に基づく 629,117 人、技能実習 470,725 人、資格外活動 398,167 人、特定活動 85,686 人。令和7年10月末:専門的・技術的分野 865,588 人、身分に基づく 645,590 人、技能実習 499,394 人、資格外活動 449,324 人、特定活動 111,074 人令和6年10月末、専門的・技術的分野:718,812 人令和7年10月末、専門的・技術的分野:865,588 人令和6年10月末、身分に基づく:629,117 人令和7年10月末、身分に基づく:645,590 人令和6年10月末、技能実習:470,725 人令和7年10月末、技能実習:499,394 人令和6年10月末、資格外活動:398,167 人令和7年10月末、資格外活動:449,324 人令和6年10月末、特定活動:85,686 人令和7年10月末、特定活動:111,074 人
データを表で見る

←→ 横にスクロールできます

在留資格別の外国人労働者数(人)
在留資格令和6年10月末令和7年10月末
専門的・技術的分野718,812865,588
身分に基づく629,117645,590
技能実習470,725499,394
資格外活動398,167449,324
特定活動85,686111,074

読み取れることは2つです。技能実習は499,394人で、依然として大きな塊であること。伸びは特定技能の側にあることです。特定技能は分類上「専門的・技術的分野」に含まれ、その内数は286,225人。前年から38.3%増えました。

ただし同じ事業主に継続雇用されたまま技能実習等から特定技能へ移った場合、外国人雇用状況の届出が提出されないことがあります。この統計だけでは、移行した人数は正確に把握できません。

2027年4月から、技能実習に代わる育成就労制度が始まる

ここまでの技能実習の話には期限があります。令和6年6月21日公布の改正法で、技能実習制度を発展的に解消して育成就労制度を創設することが決まりました。育成就労制度は令和9年(2027年)4月1日から運用が始まります

育成就労の目的は技能実習とは違います。出入国在留管理庁の制度概要は、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し、あわせてその分野の人材を確保することだと書いています。技能実習では目的にできなかった人材確保が、育成と並ぶ目的として明記されました。

受入れ側から見た変化は3つです。育成就労の期間は3年以内で、計画は認定制になります。監理支援を行うには監理支援機関としての許可が必要で、その基準は現行より厳格化されます。そして本人の意向による転籍が、一定の要件のもとで認められます。

転籍の条件には試験の合格が置かれます。可能になる時期を含む具体的な要件は、分野別の運用方針等で確認してください。受入れ分野は令和8年7月時点で17分野。工業製品製造業は両制度の対象です。

時間軸の図。令和9年4月1日の縦線を境に、左が技能実習、右が育成就労3年・特定技能1号5年・特定技能2号と並び、下に施行日時点で技能実習中の人は技能実習を続けると注記されている
図2 育成就労に切り替わる時点と経過措置

今いる実習生はどうなるのか

経過措置があります。施行日の令和9年4月1日時点で現に技能実習を行っている場合は、引き続き技能実習を続けられます。適用されるのは技能実習制度のルールで、技能実習から育成就労へ移ることはできません。段階の移行にも条件が付きます。施行日時点で1号技能実習生なら施行後も2号へ移行できますが、3号への移行は2号を1年以上行っている者に限られます。

いま実習生がいる工場なら、経過措置・在留期限・現在の実習段階・認定済みの技能実習計画を並べてください。号ごとの区分は技能実習1号・2号・3号の違いで扱っています。

受入れを決める前に、この順序で確認する

制度の比較を自社の判断に落とすには順番があります。分野、年数、体制、賃金の順です。

  1. 業務区分の確定:自社の作業がどの区分に当たるかを決める。2号まで見据えるなら、3区分に入るかがここで分かります
  2. 働いてもらう年数:5年で区切ってよいかを決める。その先も戦力にしたいなら、まず2号の対象区分かを確認します
  3. 支援体制:10項目の支援を自社でやるか、登録支援機関へ委託するかを決める。委託する場合は委託範囲と料金体系を確認します
  4. 賃金の水準:日本人と同等額以上という基準を、自社の賃金表と突き合わせる。既存社員の賃金体系に及ぶことがあります
  5. 施行日との位置関係:在籍中の実習生の在留期限を令和9年4月1日と並べ、経過措置のどこに当たるかを一人ずつ確認する

聞く相手は分けてください。分野・業務区分の該当可否と在留手続は地方出入国在留管理局、技能実習の実務は監理団体、特定技能の支援は登録支援機関が窓口です。賃金設計は社会保険労務士に相談します。人手不足対策全体の順序は工場の人手不足対策は何から、技能の引き継ぎ設計は多能工化の進め方で整理しています。人事・採用の記事は人材・採用のテーマページにまとめています。

よくある質問

技能実習生をそのまま特定技能に切り替えられますか

移行の道は用意されています。出入国在留管理庁は、技能実習2号の移行対象職種と特定技能1号の分野・業務区分の関係を整理した資料を公表しています。ただし移行できるかは組み合わせ次第で、試験免除の範囲も変わります。個別の可否は地方出入国在留管理局へ確認してください。

特定技能なら人数は自由に増やせますか

運用要領は、原則として受入れ機関ごとの人数枠は設けていないと書いています。ただし一部の分野には枠があります。また育成就労制度の基本方針では、分野別運用方針で分野ごとの受入れ見込数を設定し、これを受入れの上限数として運用するとされています。会社ごとの枠がないことと、分野全体に上限がないことは別の話です。

育成就労が始まったら、受入れは今より簡単になりますか

簡単になるとは限りません。監理支援機関の許可基準は厳格化され、育成就労計画も認定制です。本人の意向による転籍が認められる分、受け入れた人材が他社へ移る可能性も生まれます。目的が変わることと、手続きが軽くなることは別です。

まとめ

  • 技能実習法は「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と定める。特定技能は逆に、不足する人材の確保を図る分野で就労するための在留資格
  • 目的の差が、在留期間・人数枠・転職・賃金基準・会社の義務の5点に表れる
  • 工業製品製造業の業務区分は17。特定技能2号の対象は機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分のみ
  • 令和7年10月末時点で技能実習は499,394人、特定技能は286,225人(前年比38.3%増)
  • 令和9年4月1日から育成就労制度が始まる。施行日時点で技能実習中の人には経過措置が適用され、育成就労へは移れない
  • #特定技能
  • #技能実習
  • #育成就労
  • #外国人材

この記事の確認方法

株式会社恒電社 編集部

法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。

続けて読む

ほかの課題テーマも、あわせて確認する。

採用・定着の改善は、現場の仕事設計と労務の見直しから進める領域です。本メディアは判断材料の提供に徹します。

本メディアは電気設備工事会社の株式会社恒電社が運営していますが、このテーマの記事は特定の商品やサービスを前提とせず、国や行政が公表している資料をもとに編集しています。 編集方針を見る

他の課題テーマを見る