離職率は、一定期間に辞めた人数を、在籍者数に対する割合で表した数字です。人の定着を調べる際に使います。ただし、在籍者数をいつ数えるか、パートタイムを含めるかで結果が変わるため、先に数え方を決めます。
厚生労働省の雇用動向調査では、1年間の離職者数を1月1日現在の常用労働者数で割ります。公表値と比べる場合は、式に加えて対象者と期間もそろえます。独自の数え方で出した率は、そのままでは平均との高低を判断できません。
この記事では、式と用語、分母・分子の決め方、計算例を説明します。その後、製造業平均との比較、3年以内離職率との違い、社内での使い方を確認します。
離職率の式は「離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数」
雇用動向調査の年次離職率は、年初の人数を分母、1年間に辞めた人数を分子として求めます。分母は、期末人数や平均人数ではありません。年初の人数に固定します。
式の出典は、厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」の主な用語の定義です。入職率にも同じ分母を使うため、入った人数と辞めた人数を同じ基準で比べられます。
人数に含める人は、調査上の定義で確認します。
- 常用労働者は、期間を定めず雇用する人か、1か月以上の期間で雇用する人です。パートタイムも含みます。
- パートタイム労働者は、常用労働者のうち、一般労働者より1日の所定時間が短い人です。時間が同じでも、1週の所定労働日数が少ない人を含みます。
- 離職者は、期間中に退職・解雇された人です。他企業への出向者・出向復帰者を含み、同じ企業内の別事業所への転出者は除きます。
全体の分母には、パートタイムも含まれます。全産業の公表値では、パートタイムの離職率は一般労働者より高いため、ほかの条件が同じでも構成割合が全体の率に影響します。会社同士を比較する際は、全体の率だけでなく人数構成も確認してください。

時点・期間・対象者・異動の4点を決める
分母と分子を決める際は、時点、期間、対象者、異動の4点をそろえます。公的統計も、この条件を決めて計算しています。自社でも同じ定義に合わせると、公表値を比較の目安にできます。
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| 迷う点 | 雇用動向調査の決め方 | 自社で数えるときの目安 |
|---|---|---|
| 分母の時点 | 1月1日現在の常用労働者数 | 期の初日で固定し、毎年ずらさない |
| 対象期間 | 令和6年調査では、令和6年1月から12月までの1年間 | 会計年度でもよい。分母の時点と期間の始まりを合わせる |
| 対象者の範囲 | 常用労働者(パートタイムを含む) | 全体で1本出し、一般とパートに分けた率も併せて出す |
| 出向・社内異動 | 他企業への出向者は離職者に含む。同一企業内の他事業所への転出者は除く | グループ会社への転籍と工場間異動を、毎年同じ扱いにする |
例えば分母を4月1日の人数にするなら、分子は4月から翌年3月の離職者です。分母だけ年度初日に変え、離職者を暦年で数えると、対象期間が合いません。期間と開始時点を一緒に決めてください。
期の途中で入社し、同じ期に辞めた人は、雇用動向調査の式では分子に入り、年初の分母には入りません。そのため、計算上の離職率が100%を超える場合もあります。短期の入退社が多い職場では、この数え方と現場の実感の違いにも注意します。
常用労働者120人の工場で数えてみる
1月1日の常用労働者120人、うちパートタイム30人の工場で計算します。1年間の離職者は、一般労働者7人、パートタイム5人という例です。
全体は、離職者の7人と5人を足し、年初120人で割ると10.0%です。就業形態別では、一般労働者は7人÷90人で7.8%、パートタイムは5人÷30人で16.7%になります。全体の数字だけでは、この違いは分かりません。
令和6年の全産業の公表値も、一般労働者11.5%、パートタイム21.4%と分かれています。自社でも就業形態別に計算してから、同じ区分の公表値と比べます。
製造業の平均と比べる
製造業の工場は、まず製造業の公表値と比べます。産業によって率が大きく違うためです。令和6年の製造業は、入職率8.9%、離職率9.6%でした。
産業別の入職率と離職率(令和6年)
※ 分母はいずれも1月1日現在の常用労働者数
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| 産業 | 入職率 | 離職率 |
|---|---|---|
| 産業計 | 14.8 | 14.2 |
| 建設業 | 11.7 | 10.0 |
| 製造業 | 8.9 | 9.6 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 8.8 | 8.8 |
| 情報通信業 | 11.2 | 10.2 |
| 運輸業,郵便業 | 10.0 | 10.2 |
製造業の離職率9.6%は、産業計の14.2%より4.6ポイント低い水準です。ただし入職率のほうも8.9%と低く、入る人より辞める人が0.7ポイント多い離職超過でした。産業計は入職が離職を上回っています。低い離職率が、そのまま人が増えていることを意味するわけではありません。
離職率と入職率を一緒に見ると、その年に入った人と辞めた人のどちらが多いか分かります。離職率が低いことだけで、採用も含めた人数の状況を判断しないでください。人手不足の全体は、工場の人手不足対策は何から?採る・残す・減らすの3つを製造業の公的データで並べるで説明しています。
「3年以内離職率」は別の数え方
新規学卒者の3年以内離職率は、雇用動向調査の年次離職率とは別の統計です。分母も観察期間も違うため、同じ率として比較しません。
厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)は、ハローワークに提出された雇用保険の加入届をもとに集計しています。加入届の記録から、学歴ごとに新規学卒者と推定される就職者数を割り出し、これを分母にします。
分子は、そのうち3年間のあいだに離職した人の数です。令和4年3月卒業者なら、令和4年3月1日から令和7年3月31日までの離職を数えています。離職理由や離職後の状態は問いません。結果は新規高卒37.9%・新規大卒33.8%でした。
事業所規模別の公表値は、次のとおりです。この集計では、規模が小さい区分ほど高い率となっています。
事業所規模別 就職後3年以内離職率(令和4年3月卒業者)
※ 雇用保険の加入届をもとに集計した数字
データを表で見る
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| 事業所規模 | 高校 | 大学 |
|---|---|---|
| 5人未満 | 63.2 | 57.5 |
| 5〜29人 | 54.6 | 52.0 |
| 30〜99人 | 45.2 | 41.9 |
| 100〜499人 | 36.7 | 33.9 |
| 500〜999人 | 29.9 | 31.5 |
| 1,000人以上 | 26.3 | 27.0 |
新規高卒では、5人未満の事業所が63.2%、1,000人以上が26.3%で、差は36.9ポイントです。自社の新人については、学歴、卒業年、観察期間、事業所規模をそろえて比べます。例えば30〜99人の高卒は45.2%です。同条件の自社値が低ければ、その規模帯の公表値を下回ると確認できます。
なお、この規模別の数値は全産業の集計です。製造業や工場に限定した数字ではありません。新人の定着そのものの進め方は製造業の3年以内離職率は何%?新人の定着に向けた90日設計と面談の型で扱っています。

離職理由と勤続期間を見て、対策を考える
次に見るのは、離職した理由と、その人の勤続期間です。率だけでは、対策は決まりません。社内の記録から、この2つを確認します。
公的統計にも理由別の数字があります。令和6年の理由別離職率を見ると、個人的理由が10.7%、事業所側の理由が0.8%でした。個人的理由には結婚・出産・育児・介護なども含まれます。理由の分類は会社ごとに違うので、自社では退職面談の記録から分類を作ります。
入社1年未満の離職が多ければ、採用時の条件提示と初期教育を確認します。5年以上の離職が多ければ、賃金と役割の設計を見るという方法があります。同じ10%でも、誰がなぜ辞めたかで検討する対策は違います。求人票については求人票はどう直す?有効求人倍率と法定明示項目で見る採用の5段階、関連記事は採用・人材のテーマ一覧にまとめています。
毎年比べられるよう、定義と計算手順を固定します。最初の年の高低を評価するより、次の年と比較できる記録を残すことを先に考えてください。定義を毎年変えると、推移が分からなくなります。
よくある質問
離職率は何%から高いと判断できるか
一律の水準では判断できません。製造業の令和6年の年次離職率は9.6%ですが、就業形態などの条件をそろえて比較します。新規学卒者の3年以内離職率なら、学歴、卒業年、観察期間、事業所規模をそろえます。自社の前年との比較も併せて確認してください。
分母には、期首と期末のどちらを使うか
公的統計に合わせるなら期首です。雇用動向調査は1月1日現在の常用労働者数を分母にしています。期末や平均人数を使う流儀もありますが、その場合は外部の統計と直接は比べられません。社内で定義を1つに決めて、毎年同じにします。
定年退職や契約満了も離職者に含めるか
雇用動向調査の定義では、期間中に事業所を退職した人と解雇された人が離職者です。理由による除外はしていません。自社で「自己都合のみ」を数えたい場合は、全体の率とは別の指標として出します。2つを同じ名前で呼ばないようにします。
同じ定義で計算し、入職率と離職理由も確認する
- 離職率は「1年間の離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100」で求める
- 時点・期間・対象者・異動の4点を先に決め、毎年同じ決め方で数える
- 全体の率は一般労働者とパートタイムに分けて出す
- 比べる相手は製造業の数字。令和6年は入職率8.9%・離職率9.6%で離職超過だった
- 新規学卒の3年以内離職率は分母も期間も別の統計。規模帯を揃えて読む
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。