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デマンドレスポンスの契約とは?アグリゲーターと結ぶ約束とkW・kWhの2つの報酬

デマンドレスポンスの契約は何を約束するのか。アグリゲーターの届出制度、kW報酬とkWh報酬の違い、確認したい4点を国の資料で整理します。

工場・アグリゲーター・送電鉄塔を線画で結び、デマンドレスポンスの契約とkW報酬・kWh報酬の違いを示したサムネイル
30エネルギー

DR(デマンドレスポンス)とは、電力の需給の状況に応じて電気の使用量を減らしたり増やしたりする取り組みです。このうち、事前の契約に基づいてピーク需要のタイミングで節電し、対価を受け取る仕組みをネガワット取引といいます。この記事では、このうちネガワット取引を扱います。

節電によって生まれた需要抑制量は「ネガワット」と呼ばれ、取引の対象になります。電気そのものを送り返すわけではありません。

この記事では、契約の相手は誰か、報酬は何に対して支払われるか、契約前に確認したいことは何かを、国が公表している資料の範囲で整理します。報酬の金額だけでなく、発動の対象となる時期や時間帯といった条件もあわせて確認する必要があります。金額の相場は制度で決まるものではないため、ここでは扱いません。

デマンドレスポンスは「需要を動かす」取り組み

デマンドレスポンスは、需給の状況に合わせて電気の使い方を変える取り組みの総称です。電気を減らす方向を「下げDR」、余っている時間帯に電気を使う方向を「上げDR」と呼びます。

資源エネルギー庁は、VPP(バーチャルパワープラント)とDRについてのページで、工場が実際に契約する形を説明しています。ネガワット取引とは、アグリゲーターなどとの事前の契約に基づき、電気のピーク需要のタイミングで節電を行う下げDRのことです。報酬が支払われるインセンティブ型にあたります。出典は資源エネルギー庁「VPP・DRの活用」(2023年8月16日更新)です。

DRは実際に電力の調整力として使われています。一般送配電事業者が猛暑や厳寒に備えて確保する電源(電源Ⅰ')の公募では、DRの落札量が増えてきました。

調整力公募(電源Ⅰ')で落札されたDRの量

2017年度向けと2022年度向けの比較

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」第3部第2章第3節

落札されたDR
調整力公募(電源Ⅰ')で落札されたDRの量落札されたDR:2017年度向け 100 万kW、2022年度向け 229.7 万kW落札されたDR、2017年度向け:100 万kW落札されたDR、2022年度向け:229.7 万kW全国へ拡大後

※ 公募対象地域は2017年度向けの一部地域から全国へ拡大している

データを表で見る

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調整力公募(電源Ⅰ')で落札されたDRの量(万kW)
公募年度落札されたDR(万kW)
2017年度向け100
2022年度向け229.7

2017年度向けの公募では、対象地域の合計で約100万kWのDRが落札されました。2021年度秋に行われた2022年度向けの公募では、約229.7万kWが落札されています。ただし2017年度向けは一部地域が対象で、その後に全国へ拡大しました。地域の範囲が違う点は差し引いて読む必要があります。

契約相手となる「アグリゲーター」とは

一般的なネガワット取引では、需要家はアグリゲーター等と契約します。アグリゲーターは複数の需要家のリソースを束ね、市場への参加を支えます。

資源エネルギー庁は、アグリゲーターの役割を3つに整理しています。

  • 需要家のエネルギーリソースを束ねる
  • 需要家ごとの状況に応じて下げDRを依頼する
  • 需要家が電気の取引市場に参加できるようにする

工場1件の規模が小さくても、束ねればリソースとして扱えると同庁は説明しています。

工場・アグリゲーター・電力系統の3つを横に並べ、アグリゲーターから工場へ「節電の依頼」、工場からアグリゲーターへ「需要の抑制」の矢印が向き、報酬は契約によると添えた図
図1 ネガワット取引におけるDRの依頼と報酬の関係

この図のとおり、工場が受けるのは節電の依頼で、応じるのは需要の抑制です。ネガワット取引は需要の抑制を扱う仕組みであり、発電設備の保有が前提として示されているものではありません。

アグリゲーターは国への届出が必要

2020年6月の電気事業法改正により、アグリゲーターは電気事業法上の特定卸供給事業者として位置づけられました。制度そのものは2022年4月から開始されています。該当する事業者は、事業を実施する30日前に経済産業大臣へ届け出る必要があります。出典は資源エネルギー庁「特定卸供給事業にかかる届出義務について」(2026年5月21日更新)です。

届け出た事業者は一覧で公表されています。資源エネルギー庁「特定卸供給事業者一覧」には、2026年8月3日更新の時点で166事業者が掲載されています。声をかけられた相手がこの一覧にあるかどうかは、契約前に自分で確かめられます。

補足:一覧に載っていることは届出が行われた事実を示すもので、契約条件やサービス内容の良し悪しを国が保証するものではありません。条件の比較は自社で行ってください。

報酬にはkW報酬とkWh報酬がある

資源エネルギー庁は、報酬の形としてkW報酬とkWh報酬を説明しています。何に対して支払われるかが違うため、工場側で必要になる備えも変わります。

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報酬の種類何に対して支払われるか工場側で必要になること
kW報酬需要を抑制できる容量(kW)。実際に発動されたかどうかにかかわらず支払われる契約で決められた時期・時間帯であれば、いつ発動されても対応できる体制を整えておくこと
kWh報酬下げDRによって実際に削減された電力量(kWh)節電の依頼を受けたときに、実際に電気を減らすこと

読み取りたいのはkW報酬の性質です。発動がなくても支払われる代わりに、対応できる体制を整えておくことが前提になります。具体的な対応の内容や、減らせなかった場合の扱いは契約によって異なります。

報酬額は制度上一律に定められているものではなく、アグリゲーター等と需要家の契約によって決まります。どの報酬をどう組み合わせるかも契約次第です。

契約前に確認したい4つのこと

国の資料で確認できる制度の仕組みを踏まえると、契約前には少なくとも次の点をアグリゲーターへ確認しておくとよいでしょう。ここは実務上の整理であり、国の資料が確認項目として挙げているものではありません。

  1. 発動の対象となる時期と時間帯:kW報酬はこの範囲を前提に支払われます。生産計画と重なる時期が含まれていないかを見ます。
  2. 削減量の測り方:DRの要請がなかった場合に想定される電気需要量を「ベースライン」と呼びます。その設定方法等は国のガイドラインで規定されています。契約で採用する測定・算定の方法を確認します。
  3. どの類型で使われるか:小売電気事業者の計画値同時同量に使う類型1と、一般送配電事業者の調整力として使う類型2があります。需要抑制を利用する主体と目的が変わります。
  4. 報酬の組み合わせ:kW報酬だけか、kWh報酬だけか、両方かによって、備えの負担が変わります。

ベースラインの設定方法などは、エネルギー白書2023によれば「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドライン」で規定されています。このガイドラインは2017年11月に公表され、2020年6月に改定されました。

専門家への確認:発動時の停止順序が設備の保護に影響しないかは、電気主任技術者や設備の保全担当へ先に相談してください。契約条件の細部はアグリゲーターへ、社内の停止可否は生産管理へ確認する順序になります。

省エネ法の定期報告でもDRは評価される

省エネ法の定期報告では、対象となる特定事業者等のDRの取組も評価されます。報酬とは別に、報告書の中身に効いてくる部分です。

改正省エネ法では、従来の「電気の需要の平準化」が「電気の需要の最適化」に見直されました。平準化は季節や時間帯による変動を縮小させることを指します。最適化は、電気の需給の状況に応じて需要量を増加または減少させることを指します。

そのうえで定期報告では、「電気需要最適化評価原単位」と「DR実績」によって取り組みが評価されます。前者は電気の一次エネルギー換算係数を需給状況に応じて変える仕組みで、出力制御が行われているときは小さく、需給が厳しいときは大きく設定されます。後者は実際にDRに取り組んだ日数を評価するものです。

省エネ法施行令第2条は、法第7条第1項に定めるエネルギーの年度の使用量の合計量についての数値を、原油換算で1,500キロリットルと定めています。出典はエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律施行令第2条です。

法第7条第1項のエネルギーの年度の使用量の合計量(原油換算) = 1,500キロリットル(省エネ法施行令第2条)

自社が指定を受けているかどうかは、経理または環境・省エネの担当者に確認してください。

「契約電力を下げる」話とは別の取り組み

混同しやすいのが、デマンド監視装置でピークを抑えて基本料金を下げる取り組みです。こちらは自社の最大需要電力を下げて、自社が払う料金を減らす話です。

一方のデマンドレスポンスは、電力系統の需給に合わせて需要を動かし、その対価を受け取る話です。目的も相手も違います。契約電力の決まり方とデマンド監視装置の使いどころは契約電力はどう決まる?デマンド監視装置で工場の基本料金を下げる現場手順で扱っています。デマンド値そのものの仕組みは、運営会社である恒電社のサイトにも夏の30分で工場の基本料金が決まる仕組みの解説があります。

いずれを検討する場合も、自社の需要データを把握することが出発点になります。明細の各項目の読み方は再エネ賦課金と燃料費調整額。工場の電気料金明細を4つの項目で読むに、エネルギーまわりの他の記事はエネルギーのテーマページにまとめています。

よくある質問

発電設備や蓄電池がなくても参加できますか

今回確認した国の資料では、発電設備の保有はネガワット取引の前提として示されていません。実際に参加できるかは、需要を抑制できる量やアグリゲーター等の契約条件を確認してください。

報酬はいくらもらえますか

報酬額は制度上一律に定められているものではなく、アグリゲーター等と需要家の契約によって決まります。kW報酬とkWh報酬のどちらを、どの水準で組むかを相手ごとに比較することになります。

発動されたのに減らせなかった場合はどうなりますか

未達の扱いは契約によって決まるため、国の資料からは一律には言えません。契約書のどこに書かれているかを確認し、想定される場面を挙げて事前にアグリゲーターへ質問してください。

まとめ

  • デマンドレスポンスは需給に応じて電気の使用量を増減させる取り組みです。この記事で扱ったネガワット取引は、事前の契約に基づいてピーク需要時に節電する下げDRです
  • 一般的なネガワット取引では、需要家はアグリゲーター等と契約します。特定卸供給事業に該当する事業者には国への届出義務があり、届出事業者の一覧は資源エネルギー庁が公表しています(2026年8月3日更新時点で166事業者)
  • 報酬には需要抑制可能な容量に応じるkW報酬と、実際の削減電力量に応じるkWh報酬があります。組み合わせと金額は契約で決まります
  • kW報酬では、契約で定められた時期・時間帯に発動があれば対応できる体制を整えておくことが前提になります
  • 省エネ法の定期報告では「電気需要最適化評価原単位」とDR実績で取り組みが評価されます。省エネ法施行令第2条は、年度のエネルギー使用量の合計量についての数値を原油換算1,500キロリットルと定めています
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この記事の確認方法

株式会社恒電社 編集部

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