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工場の空調はどこから省エネする?告示が定める4項目と、製造区画と事務所で違う管理標準の決め方

工場の空調の省エネは、機器の更新より先に管理標準を決めます。省エネ法の告示が示す管理・計測・保守・更新の4項目と、製造区画と事務所で違う決め方を整理します。

工場の空調の記事のサムネイル。3つの区画に分かれた工場の断面図を配し、工場の空調、区画を分けてから決める、と記されている
51エネルギー

ここでは、温度・湿度・換気など室内の環境を整える空気調和設備を「空調」と呼びます。工場では、製品をつくるための環境、働く人のための環境、事務所の環境が同じ建屋の中に混ざっています。それぞれ守るべき条件が違うため、まとめて一つの設定で運転すると無駄が出ます。

最初に検討したいのは、どの区画を、いつ、何度で、どれだけ換気するかという運用条件です。省エネ法第5条を受けた判断基準の告示は、こうした条件について「管理標準を設定」することを求めています。運用しやすいよう文書にしておくと、引き継ぎと点検が回ります。

その告示は、空調について管理、計測及び記録、保守及び点検、新設・更新に当たっての措置という4つの項目を規定しています。以下ではこの4項目に沿って、工場で何を決めればよいかを整理します。エネルギーに関する他の論点はエネルギーのテーマページにまとめています。

省エネ法の判断基準では、空調の管理標準に定める事項が示されている

省エネ法は、工場の空調について具体的な温度を法律の条文で決めてはいません。決めているのは、事業者が判断するときの基準を国が定めて公表する、という仕組みのほうです。

エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(昭和54年法律第49号。以下、省エネ法)第5条第1項は、主務大臣が「工場等においてエネルギーを使用して事業を行う者の判断の基準となるべき事項」を定めて公表すると規定しています。これを受けた告示が、後で見る判断基準です。

同法第6条では、主務大臣がこの判断基準を勘案して、必要な指導と助言をすることができると定めています。指導・助言の相手は「工場等においてエネルギーを使用して事業を行う者」です。エネルギー使用量の大小で相手を限っていません。

一方、省エネ法第7条第1項は、全工場等の年度のエネルギー使用量の合計が政令で定める数値以上の者を特定事業者として指定すると定めています。その数値は同法施行令(昭和54年政令第267号)で原油換算1,500キロリットルとされています。

原油換算とは、電気や燃料など種類の違うエネルギーを原油の量に置き換えてそろえる数え方です。工場ごとではなく、その事業者が設置しているすべての工場等を合計して判定します。合計の出し方も施行令に規定されています。

注意:ここで扱うのは判断基準の空調に関する部分だけです。特定事業者の指定手続き、指定に伴う報告等の具体的な義務、エネルギー管理統括者の選任については触れていません。自社が特定事業者に当たるかどうか、また指定された場合に何を提出するかは、経済産業局または省エネ法の担当窓口へ確認してください。

告示が定める4項目は、管理・計測・保守・新設更新

空調で何をすべきかは、経済産業省告示第66号「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」に書かれています。平成21年3月31日の制定で、令和7年12月26日の経済産業省告示第185号まで改正されています。

ここで扱うのは、この告示のⅠの2「2―2 工場等(2―1に該当するものを除く。)におけるエネルギーの使用の合理化に関する事項」のうち、空気調和設備・給湯設備に関する部分です。

そこでは空調について、①管理、②計測及び記録、③保守及び点検、④新設・更新に当たっての措置の4項目が規定されています。これは告示上の項目構成であり、必ずこの順番で実施することや、機器更新を最後に行うことまで告示が定めているわけではありません。以下では、現状把握を踏まえて設備投資を検討しやすくするため、この順に実務を整理します

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段階告示が求めていること実務上用意したいもの(本記事の整理)
① 管理区画を限定し、運転時間・温度・換気回数・湿度などの管理標準を設定する区画の一覧と、区画ごとの条件
② 計測及び記録区画ごとの空気の状態や空調効率の改善に必要な事項と、個別機器・設備全体の効率改善に必要な事項について、計測・記録の管理標準を設定し定期的に実施する温湿度計の設置場所と記録様式
③ 保守及び点検フィルターの目づまり、凝縮器のスケール除去などの管理標準を設定し定期実施する点検周期と担当
④ 新設・更新必要な負荷に応じた設備を選び、効率を上げる措置を講じる更新計画と負荷の実測値

第3列は告示に明記された書類名ではありません。各項目を工場で運用するために整理した実務例です。

告示が定める空調の4項目を、管理、計測及び記録、保守及び点検、新設・更新の順に4つの箱で左から並べ、各箱の下に工場での作業を記した図
図1 告示が定める空調の4項目

この順に置く理由があります。①で条件を決めていなければ、②で何を測ればよいか決まりません。②の記録は、④で必要な負荷を見極める際の重要な資料になります。運転実績や設計条件を十分に確認せず機器を選ぶと、能力が過大または不足するおそれがあります。

逆から入る工場は多くあります。補助金の公募に合わせて機器の型式から検討が始まる、という順序です。その場合でも、区画の一覧と直近の温湿度の記録は先に用意してください。更新前の区画条件と温湿度を記録しておけば、エネルギー使用量などと合わせて更新後の効果を比較しやすくなるからです。

この4段階の考え方は空調に限りません。同じ告示は圧縮空気やボイラーなど他の設備にも管理標準を求めています。圧縮空気の側はコンプレッサのエア漏れ対策で扱っています。

製造区画と事務所は、分けて決める

工場の空調がオフィスと違うのは、この点です。告示は工場の空調を2つに分け、それぞれ別の項目を挙げています。

  • 製品の製造・貯蔵に必要な環境と、作業員の作業環境を保つための空調:区画を限定して負荷を減らしたうえで、区画の使用状況に応じた運転時間・温度・換気回数・湿度などの管理標準を設定する
  • 工場内にある事務所等の空調:区画を限定し、ブラインドの管理などで負荷を減らし、運転時間・室内温度・換気回数・湿度・外気の有効利用について管理標準を設定する。冷暖房温度は政府の推奨する設定温度を勘案する
製造・貯蔵と作業環境のための空調と、工場内の事務所等の空調を左右2つの枠に分け、それぞれ管理標準に定める事項を並べた図。事務所側にだけ政府の推奨温度を勘案する項目がある
図2 製造区画と事務所は分けて決める

違いは温度の決め方に出ます。政府の推奨する設定温度を勘案せよという記述は、事務所等のほうにだけ付いています。製造・貯蔵の区画では、製品と作業者にとって必要な条件が先に立ちます。

両方に共通しているのは、区画を限定するという言葉が先に来ることです。温度を何度にするかより前に、どこを空調するかを決めよという構成になっています。

ここを混ぜると話がこじれます。全社一律で設定温度を決めると、製造区画では品質の条件と衝突したり、事務所では過剰な運転が残ったりするおそれがあります。区画の一覧をつくるところから始めてください。図面に線を引き、どの区画が何のための空調かを書き込む作業です。

補足:政府が推奨する室温の示し方は変わってきています。環境省のクールビズのページは、夏の冷房時について「外気温や湿度、建物の状況、体調等を考慮しながら無理のない範囲で冷やしすぎない室温管理」を呼びかけています。特定の数字を一律に当てはめる書き方ではありません。管理標準に温度を書くときは、最新の記載を確認してください。

計測と記録がないと、管理標準は運用できない

②の計測と記録は、告示のなかで独立した項目になっています。求められているのは、大きく次の2種類の計測・記録です。

  1. 空気調和を施す区画ごとの温度・湿度その他の空気の状態と、空気調和効率の改善に必要な事項
  2. 熱源設備、熱搬送設備、空気調和機設備について、個別機器の効率および空気調和設備全体の総合的な効率の改善に必要な事項

1つ目は区画の話、2つ目は機械の話です。区画の温度だけ測っていても、熱源機が何台も無駄に動いている状況は見えません。逆に機器の効率だけ追っても、そもそも空調が要らない区画まで運転している状況は見つかりません。区画側では温度・湿度その他の空気の状態と空調効率の改善に必要な事項を、設備側では個別機器と設備全体の効率改善に必要な事項を、それぞれ計測し、記録してください。

区画ごとの空調の使い方は、工場全体の電気の使い方に直結します。最大需要電力が決まる時間帯に空調が重なっていないかは、別途確かめる価値があります。契約電力の決まり方はデマンド監視装置と契約電力の記事で扱っています。

測る場所も決めておく必要があります。区画の入口付近と、熱がこもりやすい奥では値が違うからです。どこで測った値を管理標準の温度とするかを、記録様式に書いておいてください。

記録は誰が見るかを決めておくと続きます。担当の分け方は工場ごとに異なりますが、例えば区画の温湿度を製造部門、熱源とポンプの運転を保全部門、電気使用量を管理部門が確認する方法があります。使用量そのものの見方は工場の電気代を削る順序で整理しています。

更新のときに告示が挙げている打ち手

4段階目に来る新設・更新では、告示が具体的な措置を列挙しています。機器そのものより、負荷を減らす側の項目が多く並びます

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ねらい告示が挙げている措置
空調する範囲を絞る区画ごとの個別制御ができる設備の採用。作業場全域の空調が不要な場合は作業者の近傍だけの局所空調や放射暖房。空調を行う容積の極小化
建屋から逃がさない壁・屋根の断熱の向上、窓のフィルム・ブラインド・複層ガラス、配管とダクトの断熱、隙間や開口部の閉鎖
外気と排熱を扱う全熱交換器による外気導入時の負荷軽減、中間期・冬期の外気冷房制御、生産設備の熱を空調区画外へ直接排出
機器を負荷に合わせる効率の高い熱源設備を使ったヒートポンプやガス冷暖房、台数分割と台数制御、回転数制御による変風量・変流量、室外機の設置場所の検討

特定エネルギー消費機器に当たる空調機器を入れ替える場合は、製造事業者等の判断の基準に定める基準エネルギー消費効率以上のものを採用することも求められています。カタログの効率表示を見るときは、この基準を満たしているかを販売店に確認してください。

計測の仕組みも新設・更新時の項目に含まれています。告示は、計量器・センサーの設置とFEMS(工場のエネルギー使用をまとめて管理するシステム)等の採用を挙げています。区画の温湿度や設備の運転状況をどのように計測・分析するかは、工場の設備構成に応じて設計します。工場の環境条件と電気代の兼ね合いは、運営会社である恒電社の精密加工の工場での導入事例でも触れられています。

よくある質問

設定温度を1度変えるだけで、どれくらい下がりますか

削減率の一般値は、確認した公的資料の範囲では見当たりませんでした。効果は区画の断熱、外気の入り方、機器の性能で変わります。まず区画ごとの温度と使用量を記録し、自社の条件で前後を比べてください。

エネルギー使用量が少ない工場でも、管理標準は要りますか

判断基準は、工場等でエネルギーを使用して事業を行う者を対象とした基準であり、第6条の指導・助言の対象もエネルギー使用量だけでは限定されていません。ただし、第6条自体がすべての事業者に管理標準の作成義務を直接課す規定ではありません。原油換算1,500キロリットル以上という数値は特定事業者の指定基準なので、指定や報告の制度とは区別して確認してください。

製造区画の温度は、何を根拠に決めればよいですか

告示は製造・貯蔵に必要な環境と作業環境を保つための管理標準を求めていますが、具体的な数値は示していません。製品の仕様や工程の条件、作業環境に関する社内の取り決めが根拠になります。品質と安全の担当者を交えて決めてください。

まとめ

  • 省エネ法は温度そのものを条文で定めず、国が事業者の判断の基準となる事項を告示で示す仕組みを取っている
  • 告示は空調について①管理 ②計測及び記録 ③保守及び点検 ④新設・更新に当たっての措置を規定している。本記事では、これらを実務上検討しやすい順に整理した
  • 工場の空調は、製造・貯蔵と作業環境のための区画と、工場内の事務所等に分けて管理標準を決める
  • 政府の推奨する設定温度を勘案するという記述が付くのは、事務所等の側だけ
  • 新設・更新に当たって告示が挙げる措置は、本記事では、区画を絞る・建屋から逃がさない・外気と排熱を扱う・機器を負荷に合わせる、という4方向に整理できる
  • #空調
  • #省エネ法
  • #管理標準
  • #工場等判断基準

この記事の確認方法

株式会社恒電社 編集部

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