工場の電気代は、1つの単価で決まっているわけではありません。請求額は4つの塊に分かれていて、それぞれ決まり方が違います。塊ごとに分けないと、どこを削れば効くのかが見えません。
まず自社の受け方を確かめます。敷地内のキュービクル(高圧受変電設備)は、高圧受電の目安になります。高圧受電なら、電気代は基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金の4つに分けて見られます。受電区分と料金メニューは、設備の外観だけで決めず、請求書か電力需給契約書で確認してください。
削減余地を確認する順序は、まず基本料金を押し上げるピークと力率です。次に使用量、そして契約条件を見ます。どの対策を先に実行するかは、見込める年間削減額と実施のしやすさで決めます。ここでは4つの塊の分解から始めて、最後に省エネ法の届出が要る規模かどうかの確認まで進みます。
電気代は4つの塊に分かれる
請求額のうち、工場側で動かせる幅は塊ごとに違います。単価そのものを工場が決められる項目は1つもありません。動かせるのは、契約の条件と使った量です。
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| 塊 | 決まり方 | 工場で動かせるところ |
|---|---|---|
| 基本料金 | 契約電力 × 単価。力率で割引・割増がつく | ピークの抑制と力率の改善 |
| 電力量料金 | 使用電力量(kWh)× 単価 | 使用量そのもの |
| 燃料費調整額 | 燃料価格に応じて毎月変わる単価 × 使用電力量 | 使用量を通じてのみ |
| 再エネ賦課金 | 全国一律の単価(年度ごと) × 使用電力量 | 使用量を通じてのみ |
この表の右列が、削減策の全体像です。単価の行を眺めても手は打てません。いまの契約のまま工場の運用で直接動かせるのは、ピーク・力率・使用量の3つです。明細の各項目の読み方は再エネ賦課金と燃料費調整額。工場の電気料金明細を4つの項目で読むで整理しています。
4つに分ける理由は、効き方が違うからです。基本料金は、契約電力が下がらないかぎり毎月同じ額がかかります。ピークを抑えて契約電力が下がれば、効果は複数月の基本料金に及びます。使用量の削減は、減らせた月の従量料金に反映されます。運用改善が続けば、削減も続きます。
なお、この4区分は削減の要因を見るための分け方です。請求書に並ぶ項目名や集約のしかたは、契約先と料金メニューによって異なります。

先に確認するのは基本料金
基本料金を先に確認するのは、効き方が長いからです。北陸電力様の電気料金のしくみは、契約電力500kW未満の契約の決め方をこう説明しています。当月と前11か月の最大需要電力のうち、最も大きい値を当月の契約電力にする、というものです。500kW以上の契約は、予想最大需要電力をもとに電力会社と協議して決めるとされています。
最大需要電力は、30分間の平均需要電力の月間最大値です。この仕組みでは、ある月に出た高いデマンドが、その後の契約電力の基準として残ります。より高いデマンドが出れば、そちらが新しい基準になります。夏の昼に空調と生産設備が重なった30分が、しばらく固定費を押し上げるという構造です。仕組みの詳細は運営会社である恒電社のデマンドの解説にもまとまっています。
もう一つが力率です。力率とは、送られてきた電気のうち、実際に仕事をした分の割合をいいます。同じ北陸電力様の説明では、その月の8時から22時までの平均力率が85%を上回ると、上回る1%につき基本料金が1%割引されます。下回る場合は1%につき1%の割増です。
力率は、生産設備の運転時間を大きく変えずに基本料金を改善できる、数少ない項目です。ただし進相コンデンサの設置や交換では、停電や設備停止が必要になることがあります。改修の要否と時期は、保安管理の委託先と相談して決めます。
基本料金は、次のかたちで計算されます。言葉にすると、契約している電気の大きさに単価を掛け、力率の分だけ増減させた金額です。
どちらも、まず現状の数字を拾うところから始まります。契約電力と力率は、請求書や電力使用実績、契約資料で確認します。数字の意味が分からないときは、社内の電力契約担当、電気主任技術者、保安管理の委託先、または契約先の小売電気事業者に聞きます。
なお、ピーク抑制で契約電力が下がる時期と、その影響が続く期間は、過去11か月の最大需要電力と契約区分によって変わります。500kW以上の契約には、この実量制の説明はそのまま当てはまりません。
単価は工場では決められない
燃料費調整単価は、燃料価格などに応じて毎月変わります。この単価は工場側では決められません。燃料費調整額は、この単価に使用電力量を掛けて決まります。単価がプラスなら、使用量を減らすほど加算額が減ります。単価がマイナスなら、請求から差し引かれる額も減ります。単価が動く方向は知っておく価値があります。東京電力エナジーパートナー様の高圧の単価は、2026年に入ってマイナスからプラスへ転じました。
燃料費調整単価の推移(高圧・関東エリア)
※ マイナスは請求から差し引かれ、プラスは請求に加算される
データを表で見る
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| 適用月 | 燃料費調整単価 |
|---|---|
| 2025年8月 | -0.97 |
| 2025年9月 | -1.22 |
| 2025年10月 | -1.37 |
| 2025年11月 | -1.39 |
| 2025年12月 | -1.41 |
| 2026年1月 | -1.43 |
| 2026年2月 | -1.43 |
| 2026年3月 | -1.29 |
| 2026年4月 | 0.07 |
| 2026年5月 | 0.89 |
| 2026年6月 | 1.47 |
| 2026年7月 | 1.60 |
グラフに載せた2025年8月から2026年3月までは、1kWhあたりおおむね1円台が請求から差し引かれる値でした。それが2026年4月にプラスへ転じ、7月には1.60円の加算になっています。同じ使用量でも、単価側の条件だけで請求額は動きます。単価は東京電力エナジーパートナー様の公表ページで毎月更新されます。
この単価の動きは工場では止められません。使用量削減の効果は、電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金を合算した実効単価で判断します。その実効単価が上がる局面では、同じ削減電力量でも削減額は大きくなります。
グラフは同社の高圧ベーシックプラン・関東エリアについて、国の支援による値引き額を公表単価に戻した値引き前の税込単価です。実際の請求書に載る適用単価とは異なる場合があります。
使用量はどこから見るか
使用量の削減は、設備の入れ替えから入らないほうが早く進みます。先に見るのは、いつ何がどれだけ使っているかの記録です。ここが分からないまま機器を選ぶと、投資額の割に請求額が動きません。高効率の機器に替えても、もともと稼働時間が短い設備なら削減量は小さいままです。
揃える資料は2つです。デマンドの30分値の1年分と、生産設備・空調・コンプレッサーの運転記録です。両方を同じ時間軸に並べます。
- 山の時間帯を特定する:30分値の上位20コマが、いつ・何曜日・どの季節に出ているかを数える
- その時間に動いていた設備を書き出す:運転記録と付き合わせ、重なっている設備を並べる
- 止められる順に並べる:生産に影響しないもの、時間をずらせるもの、止められないものの3段に分ける
- 常時動いているものを別に数える:夜間・休日にも消費が残っていれば、待機や漏れの候補になる
4段目は見落とされやすい部分です。休日の使用量がゼロに近づかない工場では、生産と関係なく動き続けている設備があります。空調の設定、コンプレッサーの漏れ、照明の消し忘れは、投資なしで確認できます。
削減候補が挙がったら、その場で金額に直します。kWhのままでは、優先順位が付きません。
単価は請求書の電力量料金を使用電力量で割れば出ます。燃料費調整額と再エネ賦課金も使用量に比例するので、これらを含めた実効の単価で計算すると、実際の請求額の動きに近づきます。金額に直しておくと、投資額との比較がその場でできます。
省エネ法の届出が要る規模かを確かめる
削減の取り組みを始める前に、法律上の位置づけを確認しておきます。省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、一定規模以上の事業者に届出と報告を義務づけています。
基準は年度のエネルギー使用量の合計が原油換算で1,500キロリットル以上です。この数値は省エネ法施行令第2条で定められています。判定は工場単位ではなく、その事業者が設置しているすべての工場等の合計で行います。
前年度の合計が基準以上になった事業者は、経済産業大臣へ届け出ます。その後、特定事業者に指定されると義務が増えます。省エネ法第16条により、毎年度、エネルギーの使用量や設備の状況を主務大臣へ報告します。エネルギー管理統括者の選任と、中長期的な計画の原則毎年度の提出も、指定を受けた事業者の義務です。
該当しない規模でも、この報告項目は自社の点検表として使えます。使用量・使用効率・設備の設置と改廃。この3点が、削減の進み具合を測る材料です。届出の義務がなくても、毎年同じ項目を並べておくと変化が見えます。
着手前に集める資料と順序
ここまでを1本の順序にまとめます。上から順に進めると、無駄な調査が減ります。所要期間は、30分値や運転記録の入手状況によって変わります。
- 請求書12か月分を並べる。契約電力・力率・使用電力量・各単価を1枚の表にする
- 基本料金の側を先に見る。ピークの発生月と力率の水準を確かめる
- 30分値1年分を取り出す。取得方法は電力会社か保安管理の委託先に聞く
- 運転記録と重ねる。山の時間に動いていた設備を特定する
- 休日・夜間の底を見る。生産と無関係な消費を洗い出す
- 省エネ法の該当有無を確認する。該当するなら報告項目を管理指標に使う
投資を伴う対策は、この6段が終わってからで間に合います。順序を飛ばすと、効かない場所に予算が入るためです。設備を入れ替えても、動いている時間帯が変わらなければ契約電力は下がりません。まず数える。手を入れるのはそのあとです。エネルギー関連の記事はエネルギーのテーマ一覧にまとめています。
よくある質問
電力会社を切り替えれば電気代は下がりますか
下がる場合もありますが、順序としては後です。切り替えで変わるのは主に単価の条件で、契約電力と使用量はそのまま残ります。先にピーク・力率・使用量を整えておくと、どの条件で比較すべきかがはっきりします。比較の前に、直近12か月の実績を1枚の表にしておきます。契約期間や解約の条件も、単価と同じ重さで確認する項目です。
太陽光や蓄電池はどの段階で検討しますか
使用量の実態をつかんだあとです。昼間の使用が多い工場ほど、自家消費との相性は良くなります。判断には30分値1年分が要ります。導入の可否より先に、いつ電気を使っているかを数えます。
基本料金と使用量は、どちらを先に手掛けますか
確認は基本料金が先です。北陸電力様が説明する500kW未満の実量制では、高い最大需要電力が複数月の基本料金に影響するためです。力率についても、現状と進相コンデンサの状態を見ます。ただし、どちらを先に実行するかは、それぞれの年間削減見込み額を比べて決めます。実際の契約電力の決定方法は、契約先と料金プランで確認してください。
まとめ
- 電気代は基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金の4つに分けて見る
- いまの契約のまま運用で動かせるのは、ピーク・力率・使用量の3つ
- 効き方が長い基本料金の側から確認し、実行順は年間削減見込み額で決める
- 使用量は30分値1年分と運転記録を重ねてから設備を選ぶ
- 前年度のエネルギー使用量が原油換算1,500キロリットル以上なら省エネ法の届出対象。指定後は毎年度の報告等が要る
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
製造業の電気設備・自家消費型太陽光発電の現場に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。