コンプレッサは、電気を使って空気を圧縮する設備です。その圧縮空気が配管や継手のすき間から、作業に使われずに抜けることをエア漏れといいます。空気をつくるのに使った電気が無駄になるため、漏れは電気代にも関わります。空気配管のある工場で、設備を使っていない時間にもコンプレッサが動いていれば、漏れを調べるきっかけになります。
漏れによる負担を調べるには、工場の停止日に運転状況を測り、電力量を試算して、明細の単価から金額を求めます。やることはこの3つです。金額の目安が分かれば、修理の優先順位を考えやすくなります。
この記事では、点検の決め方、停止日の測定、金額の試算を順に説明します。省エネ法の判断基準も確認します。計算に使う数字は架空の工場の例です。
エア漏れの点検は、方法を決めて定期的に行う
国の告示では、エア漏れなどを防ぐために管理標準を決め、定期的に保守・点検することを求めています。故障が起きる前から点検を続けるという考え方です。
ここでいう告示は、省エネ法にもとづく経済産業省「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」です。平成21年経済産業省告示第66号として定められ、最終改正は令和7年12月26日です。工場の設備ごとに、何を管理すべきかが書かれています。
ポンプ、ファン、ブロワー、コンプレッサー等の流体機械は、流体の漏えいを防止し、流体を輸送する配管やダクト等の抵抗を低減するように保守及び点検に関する管理標準を設定し、これに基づき定期的に保守及び点検を行うこと。
— 経済産業省「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」Ⅰ-2(1)③イ
管理標準は、いつ、どこを、誰が、どの基準で点検するかを文書にしたものです。エア漏れについては、点検する部位と頻度、漏れの判定基準、記録の残し方を決めておきます。
省エネ法での自社の区分は、事業者全体の年間エネルギー使用量から確認します。資源エネルギー庁の「事業者の区分と義務」によると、原油換算で1,500kL以上の場合は特定事業者などに指定されます。原油換算とは、異なる種類のエネルギーを原油の量に換算して比べる方法です。
指定された事業者には、管理標準の設定や省エネ措置など、判断基準に定める措置を実践する義務があります。生産量など当たりのエネルギー使用量を表す「エネルギー消費原単位」を、中長期で年平均1%以上減らすことが目標です。
判定の単位は工場ごとではなく事業者全体です。事業者全体で1,500kL未満であり、特定事業者等に指定されていなければ、ここで挙げた届出や定期報告の義務はありません。それでも指導・助言の対象にはなります。判断基準そのものは、規模を問わず点検項目の下敷きとして使えます。
資源エネルギー庁の工場等現地調査の実施方針では、事業者クラス分け評価制度でBクラスと評価された特定事業者等が対象です。2026年8月時点で掲載されている令和7年度分は、約190事業者を対象としています。エア漏れに関する管理も、こうした調査で確認される項目です。
調査では、該当する判断基準の項目ごとに、管理標準を設定しているか、その標準を守っているかを「実施・一部実施・未実施」の3段階で評価します。文書があるかに加え、文書に沿って点検や措置を行っているかも確認されます。
漏れの量は、工場を止めた日に測る
生産を止めた日にコンプレッサだけを動かし、空気を加圧していた時間の割合を測ります。この割合が漏れを補う運転の目安です。生産中は作業で使う空気と漏れが混ざるため、この簡易測定では分けにくくなります。
手順は次のとおりです。設備担当や電気の担当者と一緒に行います。
- 停止日を選ぶ:休日など、空気を使う設備がすべて止まっている日にします。
- 配管は通常どおりにする:普段閉めない元弁は閉めず、いつもの運転状態に近づけます。
- 加圧していた時間を測る。加圧している運転をロード、加圧を休んでいる運転をアンロードといいます。取扱説明書でそれぞれの表示を確認し、ロード状態の時間を合計します。表示で区別できない機種では電力計を使います。
- ロード率を求める。ロード状態の合計時間を、測定した全体の時間で割ります。この割合をロード率と呼びます。

図1は、停止日にもコンプレッサが加圧を繰り返す様子です。空気を使っていなくても圧力が下がると、加圧する運転に戻ります。その合計時間が、漏れを補う運転時間の目安になります。
この簡易測定は、ロードとアンロードを表示で確認できる一定速機を想定しています。運転台数を調整する台数制御機や、回転速度を変えるインバータ機では、運転時間の割合を漏れの割合として扱えません。停止日の消費電力量を電力計で測ってください。
測定前に、加圧すると不意に動く機器がないか、自動再起動や遠隔起動が管理されているかを設備担当と確認します。安全装置や計装用の空気など、止められない用途は遮断しないでください。
計装用の空気を止められない場合や、たまった水を出すドレン排出・空気を排出するパージなど正常な消費がある場合は、その有無を記録します。測定したロード時間には、漏れ以外の消費も含まれるためです。
圧力が安定してから、複数回の運転周期を含む時間で測ります。弁の操作や機器の隔離は、取扱説明書と工場の安全手順に従ってください。
ロード率を電力量と金額に直す
金額を試算するために、ロード中の消費電力と、年間に配管を加圧状態で保っている時間を用意します。測定したロード率と合わせて計算します。
まず、ロード中の消費電力に、停止日のロード率と年間の系統運用時間を掛けます。これがロード運転分の年間電力量です。系統運用時間とは、コンプレッサを運用し、配管を加圧状態に保っている時間を指します。
次に金額です。電力量に単価を掛けます。
架空の工場で試します。37kWのコンプレッサ、年間の系統運用時間6,000時間、停止日のロード率20%とします。37×0.2×6,000で44,400kWhです。単価を20円/kWhとすると、年間888,000円相当になります。
実効単価は、明細のうち使用量に応じる料金から求める、実際の負担の目安です。基本料金を除く電力量料金に、燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金を足し、その期間の使用電力量で割ります。各項目の読み方は再エネ賦課金と燃料費調整額の読み方で確認できます。
停止日のロード率別に見た年間の電気料金相当額
※ 単価と運転時間は自社の明細と稼働実績に置き換える
データを表で見る
←→ 横にスクロールできます
| 停止日のロード率 | 年間の電気料金相当額(円) |
|---|---|
| 5% | 222,000 |
| 10% | 444,000 |
| 15% | 666,000 |
| 20% | 888,000 |
| 30% | 1,332,000 |
ロード率5%の試算額は222,000円、30%では1,332,000円で、差は6倍です。同じ設備、同じ系統運用時間でも、停止日のロード率で結果は大きく変わります。ロード率を10ポイント下げられれば、この計算上は年間444,000円分が減ります。
コンプレッサの電気代が大きければ、漏れの修理と並行して、契約や運転時間帯の見直しも検討できます。工場全体で見直す順序は工場の電気代をどこから削るかの順序にまとめています。関連する記事はエネルギーのテーマページから探せます。
継手やホースなど、先に見る場所を決める
点検を始める場所は、動く部品や抜き差しする部品です。点検表にも部品名を書き、確認する場所をそろえます。
←→ 横にスクロールできます
| 先に見る場所 | 起きやすい状態 | 点検で確かめること |
|---|---|---|
| 継手・カプラ | 抜き差しで、気密を保つシールがすり減る | 材質に適合した漏れ検知液で泡が出ないか |
| ホース・チューブ | 曲げぐせ、擦れ、踏まれた跡 | 表面の亀裂と根元の緩み |
| 電磁弁・シリンダ | 内部がすり減り、空気が通り抜ける | 停止中に空気の音が続かないか |
| ドレン排出器 | 異物が挟まり、開いたまま動かなくなる | 排出のあとに閉じているか |
| 使っていないライン | 撤去した設備の配管に空気が送られている | 元弁が閉まっているか |
探し方は3つあります。停止日の静かな時間に音で追う方法、漏れ検知液を塗って泡を見る方法、超音波の漏れ検知器を使う方法です。音と検知液は、大がかりな道具なしで始められます。

台帳には、場所、見つけた日、直した日、使った部品を残します。同じ継手が半年で3回出てくれば、部品の選定そのものを見直す材料になります。
点検頻度は、工場ごとに決めて管理標準に書きます。判断基準には頻度の指定がありません。主要ラインを月次で一巡し、年1回は停止日にロード率を測り直す形は、点検計画の一例です。
塞ぐ前に、送っている圧力を見直す
漏れを塞ぐのと同時に、そもそも送っている圧力が高すぎないかを確認します。圧力が高いほど、同じすき間から抜ける量は増えます。
新設や更新について、判断基準が挙げるのは2つの考え方です。小型のエアーコンプレッサーを分散配置することで合理化できる場合は、その方法を採ります。また、低い圧力で足りる用途では、圧縮空気を減圧弁で下げて使う方法ではなく、低圧用のブロワーやファンを使います。
確認は4段階で進めます。用途ごとに必要な圧力を調べ、最も高い圧力が必要な設備を特定します。その設備だけのために工場全体の圧力を上げていないかを確認し、空気を吹き付けるブローや乾燥など低圧で足りる用途が多ければ、配管の系統を分けることを検討します。
本体が古く修理が続いている場合の次の検討事項は、修理と更新の比較です。判断の材料の並べ方は設備は修理か更新かの判断基準にまとめています。省エネ法の対象事業者として定期報告に何を書くかという観点は、運営会社である恒電社のサイトにある省エネ法の対象事業者に関する解説でも触れられています。
よくある質問
エア漏れの割合は、どの工場でも同じか
公的な統計で示された割合は見当たりませんでした。割合は配管の長さ、継手の数、経過年数で変わるため、自社の停止日にロード率を測るのが確実です。1回測っておけば、翌年の同じ測定と比べて増減を追えます。比べるときは、圧力設定、つないでいる配管系統、運転台数、測定の時間帯をそろえます。
漏れ検知液と超音波検知器をどう使い分けるか
手が届き、液剤を安全に使える継手などは、材質に適合した漏れ検知液で確認できます。泡で場所が特定でき、比較的低コストで始められます。微小な漏れ、広い範囲、運転中で止められない設備、天井配管のように手が届かない場所には超音波の検知器が向きます。
特定事業者でなければ、点検は不要か
未指定でも、前年度の事業者全体のエネルギー使用量が原油換算で1,500kL以上なら、エネルギー使用状況届出書の提出が必要です。指定後には定期報告等の義務が生じます。漏れを点検する判断は、こうした行政への報告義務とは分けて考えます。
停止日に測り、金額と点検計画につなげる
- 省エネ法の判断基準は、管理標準を決めてエア漏れなどを定期的に点検するよう求めています。
- 一定速機では、工場停止日に加圧していた時間の割合であるロード率を測り、漏れを補う運転の目安にします。
- ロード中の消費電力×停止日のロード率×年間の系統運用時間で簡易試算し、明細から計算した実効単価で金額に直します。
- 点検は継手、ホース、電磁弁、ドレン排出器、使っていないラインから始めます。
- 漏れを塞ぐとともに、工場全体へ送る圧力が高すぎないか、用途ごとに確認します。
37kWをロード中の実消費電力として扱い、アンロード中の電力は含めていません。測定時と年間の運用時で、圧力・配管系統・漏れの状態が同じという前提です。
式の結果はロード運転分の概算で、漏れによる総電力量そのものではありません。停止日の消費電力量は、電力計で直接測るか、ロード時・アンロード時それぞれの実入力電力と運転時間から求めます。
修理で減らせる額は、正常な空気消費や制御状態の違いを切り分け、同等の条件で修理前後の消費電力量を比べて求めます。基本料金への影響は、この計算に含めていません。実効単価を求める際、明細の電力量料金に調整額が含まれている場合は、同じ額を二重に足さないでください。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
製造業の電気設備・自家消費型太陽光発電の現場に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。