動力プレスは、モーターなどで金型を動かし、材料を成形・加工する機械です。自社で使っている場合は、その日の作業開始前点検と、資格者による年次の特定自主検査を分けて管理します。特定自主検査は、所定の資格者または登録検査業者が行う検査です。
二つの点検・検査は、項目・担当できる人・記録の扱いが異なります。2026年10月時点の労働安全衛生規則と特定自主検査基準をもとに、台帳と手配で確認する内容を説明します。形式ごとの検査方法と判定は、告示と機械の資料で確認してください。
作業開始前点検と年次検査を、時点・資格・記録で分ける
二つを区別するのは、実施時点、確認する範囲、資格、記録です。朝の点検で年次検査を代えることも、年次検査済みを理由に作業開始前点検を省くこともできません。
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| 区分 | いつ、何を見るか | 担当・記録 |
|---|---|---|
| 作業開始前の点検 | その日の作業前。クラッチ・ブレーキ、停止機構、危険防止機構、金型などの状態を見る | 事業者が実施する。第136条は年次検査と同じ3年間の記録保存を定めていない |
| 定期自主検査 | 1年以内ごとに1回。動力伝達、制御、空圧・油圧、電気系統などの異常を調べる | 動力プレスでは特定自主検査に当たり、所定の資格者または登録検査業者が実施する。記録は3年間保存する |
根拠は厚生労働省の労働安全衛生規則第134条の3、第135条の2・3、第136条です。第134条の3には、1年を超える不使用期間の例外と再使用時の検査もあります。休止設備は前回の検査日だけで再稼働を決めないでください。
始業前は、停止機構と危険防止機構を確認する
始業前は、機械が止まるか、危険を防ぐ機構が働くかから確認します。第136条の六事項には、プレス向けとシャー向けがあります。機種に合う項目を選び、装備の名称は取扱説明書と照合してください。
- 動力をつなぐクラッチと、動きを止めるブレーキが機能するか確認します。
- クランクシャフト、フライホイール、金型を動かすスライドなどのボルトに緩みがないか確認します。
- 一行程一停止、急停止、非常停止の機構が機能するか確認します。一行程一停止は、加工の一行程ごとに停止する機構です。
- スライドや刃物による危険を防ぐ機構が機能するか確認します。
- プレスでは、金型とボルスターの状態を確認します。ボルスターは金型を載せる台です。
- シャーでは、刃物と材料を載せるテーブルの状態を確認します。
設備別の点検表には、六項目をそのままコピーせず、機種と装備に合うものを入れます。安全装置と制御の仕様は機械ごとに違います。現場と保全の担当者で、取扱説明書に沿って、どの操作で異常を確認するか決めてください。
第137条は、異常があれば補修など必要な措置を講じることを求めています。そのまま始業せず、発見時刻・設備番号・症状・使用を止めたか・補修後の確認を残すと、次の担当者へ引き継げます。この記録は現場管理の提案で、第135条の2の3年保存義務とは別です。
非常停止の働きに違和感があった日は、点検済みの印だけで作業を進めません。症状が出た操作を保全担当者へ伝え、必要な措置の後に使用可否を判断します。交替勤務では、次の班が使う前に、異常と対応の状況を引き継ぎます。
記録は一枚の用紙でも、設備台帳と連絡記録に分けても構いません。異常を発見したことと、措置が完了したことを別々に追える形が大切です。

年次検査は、資格者と機種に合う検査基準を確認する
第134条の3の定期自主検査は、第135条の3により特定自主検査に当たります。事業場内の所定の資格者か、登録検査業者が実施します。作業開始前点検の担当者を決めただけでは、年次の検査者を手配したことになりません。
年次の対象は、動力伝達装置、クラッチ・ブレーキ、停止機構、スライド、空圧・油圧、電気系統、ダイクッション、安全機構などです。ダイクッションは成形時に材料を押さえる装置です。検査方法と判定は、設備の構造ごとに確認します。
2026年1月1日から、厚生労働省告示第323号「動力プレス特定自主検査基準」が適用されています。機械プレスなどの区分別に検査方法と判定基準があります。以前の指針しか手元にない場合は、検査業者や社内資格者と現行告示を照合してください。
台帳には機種・製造番号・前回検査日・次回期限・検査者を記録します。手配前に資格または登録を確かめ、実施後は記録と検査標章を照合します。標章は検査年月を示すものです。厚生労働省の特定自主検査制度の説明でも、動力プレスが対象に挙げられています。
複数台ある場合は、設備名だけで依頼せず、台帳と現物の製造番号を照合します。停止予定日も依頼先に伝えてください。他機種の点検表を使う前に、現行告示のどの区分が当たるかを確認します。
検査後の指摘について、措置完了を確認する担当者も決めます。資格者が検査する仕事と、現場が修理の進捗を追う仕事を分けると、引き継ぎやすくなります。

検査年月日・方法・結果と、措置した内容を記録する
年次検査は、第135条の2の項目を記録し、3年間保存します。合否だけでなく、方法と補修の内容も確認してください。検査業者に依頼した場合は、実施者の氏名欄を業者名として扱う規定があります。
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| 記録する事項 | 現場で照合するもの |
|---|---|
| 検査年月日・方法・箇所 | 対象設備と実施した検査が一致しているか |
| 検査結果 | 異常の有無と判定が追えるか |
| 実施者の氏名または検査業者名 | 資格・依頼先を特定できるか |
| 補修等の措置内容 | 検査結果に基づいて措置を講じた場合、その内容が記載されているか |
異常があれば、第137条による補修など必要な措置を行います。保全担当者へ検査結果を渡し、修理・調整の完了を確認してから再使用を判断します。実施年月が分かる検査標章は、動力プレスの見やすい場所に貼ります。
外部の報告書を受け取ったら、設備番号・検査日・方法・箇所・結果・措置内容を照合し、台帳を更新します。足りない記録は実施者に確認してください。
補修が必要なら、生産予定と修理予定を関係者で共有します。今回の検査日から次の手配時期を決め、日々の点検とは別の期限表で管理します。
第135条の2の六事項のうち、措置内容を記録するのは、検査結果にもとづいて補修などを行った場合です。「措置なし」と書く運用はできますが、条文がその書き方を求めているわけではありません。
設備台帳で日々の担当・年次の手配・再使用を管理する
設備を一台ずつ確認し、動力プレスとシャーに分けます。日々の点検担当と年次の手配担当を別欄に記録します。稼働予定と検査期限を重ね、依頼時期を決めてください。
日々の担当者には、確認箇所と異常時の連絡先、作業停止の判断を伝えます。保全担当者は安全装置などの型式と説明書を確認し、年次の担当者は前回記録・補修履歴・次回予定を引き継ぎます。この役割分担は運用提案で、法令が定める統一手順ではありません。
1年を超えて使っていないプレスを再稼働する場合は、通常の年次予定と分けて確認します。第134条の3が不使用期間と再使用時を定めているため、休止前の記録だけで稼働を決めないようにします。
再使用時の検査、修理、作業開始前点検は、別々に完了を確認します。休止中に設備の構成が変わった場合は、現行基準と取扱説明書を改めて照合します。
検査の管理表を他の設備にも広げるなら、機械ごとの条文と周期を分けてください。フォークリフトの年次点検とクレーンの年次点検では、対象機械や月次検査の有無が異なります。保全テーマの記事は設備保全のテーマ一覧から確認できます。
よくある質問
毎朝点検していれば年次検査は不要か
不要にはなりません。第136条の開始前点検と第134条の3の年次検査は別の義務なので、両方の実施を台帳で確認します。
開始前点検にも3年間の保存義務があるか
第135条の2の3年間保存は、定期自主検査の記録についての規定です。開始前点検を記録する場合は社内運用として扱い、同じ法定保存義務とは説明しません。
年次検査は作業者なら誰でもできるか
作業経験だけでは実施者になれません。第135条の3に定める資格者か登録検査業者が行うため、手配前に資格や登録を確認します。
点検と検査の担当・期限・記録を分けて確認する
- その日の作業前に点検し、異常があれば補修など必要な措置を行います。
- 1年以内ごとの定期自主検査は特定自主検査で、所定の資格者または登録検査業者が実施します。
- 年次検査の法定事項を記録して3年間保存し、検査標章も確認します。
- 2026年の検査基準と設備構造を照合し、日々の担当と年次の手配担当を分けます。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
受変電設備の更新・保全に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。生産設備の保全に関する記述は、公的資料と公開情報にもとづきます。