工場の人手不足には、新しい人を採る、今いる人に残ってもらう、必要な作業時間や人手を減らすという3つの対策があります。「減らす」は人員削減ではありません。同じ仕事を、より少ない作業時間や人手でできるようにすることを狙います。ただし、改善しても必要人数が減るとは限りません。
どの対策に取り組むかを決めるには、工程ごとの必要人数と不足人数を確認します。まだ分からない場合は、緊急対応と並行して、人数と、不足を埋めるための残業・応援時間を記録してください。
この記事では、厚生労働省と総務省の統計で製造業の状況を確認し、自社の対策を考える順序を説明します。統計の時点と対象を示し、他社の実施割合を、そのまま効果の保証として扱わないように整理します。
工程ごとに、何人足りないかを数える
「工場全体で人が足りない」から一歩進めて、どの工程に何人必要かを確認します。採用、定着、作業の改善のどれが必要かを判断する材料です。
背景として、2025年平均の製造業の就業者数は前年より減っています。総務省「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」によると、2025年平均の就業者数は全産業で6,828万人となり、前年より47万人増えました。一方で製造業は1,033万人で、前年より13万人減っています。
就業者数は、既に働いている人の数です。採用できる求職者数ではなく、減った原因もこの数字だけでは分かりません。卸売業・小売業も1,029万人で前年より16万人減っており、減少は製造業だけではありません。
不足感そのものは、厚生労働省「労働経済動向調査(令和8年5月)の概況」で数値化されています。2026年5月1日現在の正社員等労働者過不足判断D.I.は、調査産業計で+47ポイントでした。製造業は+44ポイントで、建設業の+59ポイントや医療・福祉の+57ポイントより低い水準です。
D.I.は「不足」と答えた事業所の割合から、「過剰」と答えた割合を引いた値です。不足人数を示してはいません。就業者数とは調査・時点・意味が違うため、2つの数字を並べても、必要人数が増減したかまでは判断できません。
自社の不足は、次の3つを工程ごとにそろえて数えてください。
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| 数える対象 | 取り方 | どこにあるか |
|---|---|---|
| 必要人数 | その工程を計画どおり回すのに要る人数 | 生産計画と標準作業の人員配置 |
| 配置可能人数 | いま配置できる人数。応援と兼務は、月間の所定労働時間に対するその工程の従事時間の割合で換算する | 勤怠記録とシフト表 |
| 穴埋めの量 | 不足を埋めるために出た残業時間と応援の延べ時間 | 勤怠記録の残業集計、シフト表、応援記録・日報 |
残業と応援の時間は、緊急度を考える主要な材料の1つです。残業の割増賃金や、応援元の工程の負荷・機会損失に関わる可能性があります。併せて、生産停止、安全、品質、納期への影響も確認します。
他社の対策は、対象と実施割合を分けて読む
厚生労働省は、不足している部門等への対応を産業別に調べています。実際に行われた対策を見ると、自社で検討する選択肢を具体化できます。
製造業の調査対象事業所では、不足部門等がある事業所が79%、何らかの対応をした事業所が65%でした(2026年1〜3月期実績)。次のグラフは、対応した事業所を100とする複数回答です。すべての製造業事業所に対する割合ではありません。
人手が不足している部門等へ製造業の事業所が行った対応(複数回答)
データを表で見る
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| 対応内容 | 事業所割合(%) |
|---|---|
| 中途採用の開始・拡大・強化 | 70 |
| 業務の効率化の推進 | 46 |
| 新規学卒者の採用の開始・拡大・強化 | 41 |
| 外部人材(派遣労働者等)の受入れ | 37 |
| 定年延長・再雇用者の受入れ | 25 |
| 臨時、パートタイム労働者の採用 | 23 |
| 時間外労働の増加 | 22 |
| 求人条件(募集賃金)の引き上げ | 19 |
| 正社員以外から正社員への登用 | 18 |
| 在職者の賃金の改善 | 16 |
| 教育訓練・能力開発による業務可能範囲の拡大 | 16 |
| 省力化投資の実施 | 15 |
| 外注化・下請化等の推進 | 8 |
採用系の対応が上位を占めますが、採用以外で最も多いのは業務の効率化の推進で46%でした。同じ項目は調査産業計では39%です。なお製造業のD.I.+44は、調査産業計の+47を下回り、建設業の+59よりも低い値です。
時間外労働を増やした割合は22%です。対応した事業所の2割強は、不足を残業で埋める方法を挙げています。
これらの対策を「採る・残す・減らす」に整理した表です。公的統計の分類ではなく、主な狙いによる記事独自の整理です。定年延長・再雇用など、複数の対策に関わるものもあります。
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| 対策 | この一覧での該当 | 効き方 |
|---|---|---|
| 採る | 中途採用、新規学卒、派遣、定年延長・再雇用、パートタイム、募集賃金の引き上げ | 採用・受入れができる人数を増やすことを狙う |
| 残す | 在職者の賃金の改善、正社員登用、教育訓練 | 定着といまいる人の活用を狙う。実際の離職の減り方はこの統計からは分からない |
| 減らす | 業務の効率化、省力化投資、外注化 | 自社の工程で必要になる作業時間を減らすことを狙う。外注化は自社外への移転を含む |
順序は「減らす→残す→採る」で確認する
この記事では、工程・作業手順の見直しから、定着、採用の順に確認します。工程の改善は自社主導で検討を始めやすく、採用は相手の判断も関わるためです。

これは確認する順序で、採用を止めるという提案ではありません。3つを同時に進める場合でも、何から現状を確認するかを決めておきます。
省力化投資や外注化には、費用、設備、取引先、安全・品質の条件も関わります。効率化しても必要人数が減らない場合があります。生産量、安全、品質、納期への影響を確認し、残業と応援の時間がどう変わったかを比べてください。
- 減らす:不足している工程の仕事の量と手順を見直す。段取り替え、運搬、探す時間について、不要な工程をなくし、必要な工程も回数・距離・時間を短縮できないか確認する
- 残す:その工程で辞める人が出ていないかを確認する。退職が続いている場合は、その分だけ採用による在籍者数の純増幅が小さくなるため、退職理由と定着の施策も併せて見る
- 採る:1と2で残った不足人数を、採用の目標人数として置く
1の具体的な手順は外段取り・内段取りとは?段取り時間を短縮する4つの手順と金額換算で整理しています。2は製造業の3年以内離職率は何%?新人の定着に向けた90日設計と面談の型、3は求人票はどう直す?有効求人倍率と法定明示項目で見る採用の5段階にまとめています。
初回は3か月を目安に、対策ごとの数字を確認する
対策によって、効果を確認できるまでの時間は違います。同じ指標と同じ間隔だけで確認すると、時間がかかる対策を評価しにくくなります。
対策ごとに、確認する数字と間隔を分けます。次の3か月は公的基準ではなく、初回の見直し期間の目安です。採用・退職の人数が少ない工場では、6か月・12か月の推移も併せて確認してください。
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| 対策 | 毎月見る数字 | 3か月後に判断すること |
|---|---|---|
| 減らす | 対象工程の残業時間と応援の延べ時間 | 生産量・安全・品質・納期を保ったうえで残業と応援が減ったか。減っていなければ対象工程の選び方を変える |
| 残す | その工程の退職者数、入社後1年未満の入社者数・退職者数・在籍者数 | 入社者数を母数にした早期退職の状況を確認する。退職が続く場合は退職数と在籍者数の推移も併せて見る |
| 採る | 応募数と、応募から入社までの残り人数 | 応募がゼロに近いか。近ければ募集条件と求人票を先に直す |
勤怠記録、在籍台帳、応募管理から取れる数字を、同じ月の表にそろえます。応援時間や兼務の割合を記録していなければ、簡単な月次記録を加えてください。新しい仕組みを導入する前に、この3つを並べて確認できる状態にします。
教育訓練で1人が担当できる工程を増やす進め方は、現場で実務をしながら教えるOJTを含めて多能工化とは?進め方をスキルマップ・OJT・技能伝承で整理にまとめています。採用・人材に関する他の切り口は採用・人材のテーマ一覧にあります。
よくある質問
採用から始めてもよいか
採用から始める進め方も成り立ちます。ここで提案しているのは、工程や作業手順の見直しなど、自社主導で検討を始めやすい項目から確認する順序です。
省力化投資や外注化は、費用・設備・取引先・安全・品質などの条件に左右されます。必要人数を把握しながら採用を進めると、採用目標を置きやすくなります。欠員が深刻な場合は、人数の把握と、応援や外注などの対応を並行して進めてください。
省力化投資を行った工場は、どれくらいあるか
厚生労働省の調査では、人手が不足している部門等へ対応した製造業の事業所のうち、省力化投資の実施を挙げた割合は15%でした(2026年1〜3月期実績・複数回答)。
業務の効率化の推進の46%と比べると低い水準です。複数回答のため、同じ事業所が両方を行ったのか、どちらを先に行ったのかは、この統計からは読み取れません。
不足人数は、どの単位で数えるか
工程ごとに数えます。同じ工場でも、組立の人数は足りていて、検査だけが不足する場合があるためです。応援・兼務の人は、月間の所定労働時間に対する、その工程で働く時間の割合で換算します。必要人数と配置可能人数を、毎月同じ数え方で並べてください。
人数と残業・応援時間をそろえ、3つの対策を考える
- 対策は採る・残す・減らすの3つ。減らすは人員削減ではなく、同じ仕事に必要な作業時間や人手の削減を狙うこと
- 2025年平均の就業者数は全産業で6,828万人と47万人増えた一方、製造業は1,033万人と13万人減った。減ったのは製造業だけではなく、卸売業・小売業も1,029万人と16万人減っている(総務省 労働力調査)
- 製造業の正社員等労働者過不足判断D.I.は+44ポイントで、調査産業計の+47ポイントより低い(2026年5月1日現在)
- 対応した製造業の事業所では中途採用70%が最多。採用以外では業務の効率化の推進が46%で、調査産業計の39%を上回る
- 確認の順序は減らす→残す→採る。これは公的な基準ではなく、減らす施策のうち工程・作業手順の見直しを起点にした本記事独自の整理
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。