実務記事 / 34

工場の人手不足対策は何から?採る・残す・減らすの3つを製造業の公的データで並べる

工場の人手不足対策を、採る・残す・減らすの3つに分けて整理。厚生労働省と総務省の統計で製造業の実態と他社の対応内容を確かめ、着手の順序を決めます。

右下がりの3段の階段とオレンジの右向き矢印の図に、人手不足対策と採る・残す・減らすの順序の2行を添えたサムネイル
34採用・人材

工場の人手不足対策は、大きく3つに分かれます。人を採る・残す・減らすの3つです。減らすは人員削減ではなく、同じ仕事に必要な作業時間や人手の削減を狙うという意味です。施策を打っても必要人員が必ず減るとは限りません。

対策を具体化する前の最初の確認事項は、工程ごとの必要人数と不足人数を把握できているかどうかです。把握できていない場合は、緊急の対応を行いながら、並行して人数と穴埋めの時間を記録します。

この記事は、厚生労働省と総務省の統計で製造業の状況と他社の対応内容を確かめ、3つのうちどれから手を付けるかを決める順序をまとめます。数字の出どころと時点も本文に示します。

まず「足りない」を人数と工程で言い切る

対策の入口は、不足を工程ごとの人数に直すことです。工場全体で足りないという言い方では、採るのか、残すのか、減らすのかが決まりません。

背景として、2025年平均の製造業の就業者数は前年より減っています。総務省「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」によると、2025年平均の就業者数は全産業で6,828万人となり、前年より47万人増えました。一方で製造業は1,033万人で、前年より13万人減っています。

ただし減った産業は製造業だけではありません。卸売業・小売業も1,029万人と16万人減っています。またこの統計は、すでに働いている人の数であり、採用できる求職者の数ではありません。就業者が減った原因も、この統計だけでは分かりません。

不足感そのものは、厚生労働省「労働経済動向調査(令和8年5月)の概況」で数値化されています。2026年5月1日現在の正社員等労働者過不足判断D.I.は、調査産業計で+47ポイントでした。製造業は+44ポイントで、建設業の+59ポイントや医療・福祉の+57ポイントより低い水準です。

この2つは調査も時点も指標の意味も違います。D.I.は事業所が「不足」と答えた割合から「過剰」と答えた割合を引いた値で、不足人数を表すものではありません。2つを並べても、必要な人員が増えたか減ったかまでは判断できません。

自社の不足は、次の3つを工程ごとにそろえて数えます。

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数える対象取り方どこにあるか
必要人数その工程を計画どおり回すのに要る人数生産計画と標準作業の人員配置
配置可能人数いま配置できる人数。応援と兼務は、月間の所定労働時間に対するその工程の従事時間の割合で換算する勤怠記録とシフト表
穴埋めの量不足を埋めるために出た残業時間と応援の延べ時間勤怠記録の残業集計、シフト表、応援記録・日報

3つ目の穴埋めの量は、緊急度を判断する主要な材料の1つです。残業による割増賃金や、応援元の工程の負荷・機会損失として表れている可能性があるためです。生産停止、安全、品質、納期への影響も併せて確認します。

他社は何をしたか。採る・残す・減らすの実際の割合

対策の選択肢は、他社が実際に何をしたかで見ると具体的になります。厚生労働省は、労働者が不足している部門等への対応内容を産業別に調査しています。

製造業では、労働者が不足している部門等がある事業所は79%、何らかの対応をした事業所は65%でした。いずれも製造業の調査対象事業所に占める割合です(2026年1〜3月期実績)。次のグラフは、何らかの対応をした事業所を100とした複数回答の割合です。

人手が不足している部門等へ製造業の事業所が行った対応(複数回答)

2026年1〜3月期実績・対応した事業所を100とした割合

出典:厚生労働省「労働経済動向調査(令和8年5月)」表5-1および付属統計表第5-1表

事業所割合
人手が不足している部門等へ製造業の事業所が行った対応(複数回答)事業所割合:中途採用の開始・拡大・強化 70 %、業務の効率化の推進 46 %、新規学卒者の採用の開始・拡大・強化 41 %、外部人材(派遣労働者等)の受入れ 37 %、定年延長・再雇用者の受入れ 25 %、臨時、パートタイム労働者の採用 23 %、時間外労働の増加 22 %、求人条件(募集賃金)の引き上げ 19 %、正社員以外から正社員への登用 18 %、在職者の賃金の改善 16 %、教育訓練・能力開発による業務可能範囲の拡大 16 %、省力化投資の実施 15 %、外注化・下請化等の推進 8 %
データを表で見る

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人手が不足している部門等へ製造業の事業所が行った対応(複数回答・%)
対応内容事業所割合(%)
中途採用の開始・拡大・強化70
業務の効率化の推進46
新規学卒者の採用の開始・拡大・強化41
外部人材(派遣労働者等)の受入れ37
定年延長・再雇用者の受入れ25
臨時、パートタイム労働者の採用23
時間外労働の増加22
求人条件(募集賃金)の引き上げ19
正社員以外から正社員への登用18
在職者の賃金の改善16
教育訓練・能力開発による業務可能範囲の拡大16
省力化投資の実施15
外注化・下請化等の推進8

採用系の対応が上位を占めますが、採用以外で最も多いのは業務の効率化の推進で46%でした。同じ項目は調査産業計では39%です。なお製造業のD.I.+44は、調査産業計の+47を下回り、建設業の+59よりも低い値です。

一方で、時間外労働の増加が22%あります。不足を残業で埋めた事業所が、対応した事業所の2割強あったということです。

この一覧を3つのレバーに割り直すと、次のようになります。これは公的統計の分類ではなく、施策の主な狙いで本記事が便宜的に整理したものです。定年延長・再雇用のように、複数のレバーにまたがる施策もあります。

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レバーこの一覧での該当効き方
採る中途採用、新規学卒、派遣、定年延長・再雇用、パートタイム、募集賃金の引き上げ採用・受入れができる人数を増やすことを狙う
残す在職者の賃金の改善、正社員登用、教育訓練定着といまいる人の活用を狙う。実際の離職の減り方はこの統計からは分からない
減らす業務の効率化、省力化投資、外注化自社の工程で必要になる作業時間を減らすことを狙う。外注化は自社外への移転を含む

順序は「減らす→残す→採る」で確認する

本記事では、まず自社主導で検討を始めやすい工程・作業手順の見直しを確認し、その後に定着と採用を確認する順序で整理します。採用は相手のある話だからです。

減らす(業務の効率化・省力化投資・外注化)、残す(賃金の改善・教育訓練・正社員登用)、採る(中途採用・新卒採用・派遣・再雇用)を上から3行に並べ、左に「検討を始めやすい順」の下向き矢印を置いた図
図1 3つのレバーと確認の順序(本記事独自の整理)

ただし、順序は優先度であって排他ではありません。採用を止めて効率化だけを進めるという意味ではなく、3つを同時に走らせる場合でも確認の順番を決めるという意味です。減らすのうち省力化投資と外注化は、費用・設備・取引先・安全・品質の条件に左右されます。施策を打っても必要人員が必ず減るとは限らないため、生産量・安全・品質・納期への影響を併せて確認しながら、残業時間と応援時間の変化で効果を確かめます。

  1. 減らす:不足している工程の仕事の量と手順を見直す。段取り替え、運搬、探す時間について、不要な工程をなくし、必要な工程も回数・距離・時間を短縮できないか確認する
  2. 残す:その工程で辞める人が出ていないかを確認する。退職が続いている場合は、その分だけ採用による在籍者数の純増幅が小さくなるため、退職理由と定着の施策も併せて見る
  3. 採る:1と2で残った不足人数を、採用の目標人数として置く

1の具体的な手順は外段取り・内段取りとは?段取り時間を短縮する4つの手順と金額換算で整理しています。2は製造業の3年以内離職率は何%?新人の定着に向けた90日設計と面談の型、3は求人票はどう直す?有効求人倍率と法定明示項目で見る採用の5段階にまとめています。

補足:上の順序は、減らす施策のうち工程・作業手順の見直しを起点にした本記事独自の整理です。公的な統一基準ではありません。設備の故障や欠員で生産が止まりそうな場合は、順序に関係なく、応援や外注で先に止血します。

3か月で確かめる単位に落とす

施策によって、着手から効果を確認できるまでの時間は異なります。同じ会議で同じ指標を見ようとすると、時間のかかるものが後回しになります。

そこで、レバーごとに見る数字と確認の間隔を分けます。次の3か月は本記事が提案する初回のレビュー期間であり、公的な基準ではありません。採用や退職の対象人数が少ない工場では、6か月・12か月の推移も併せて見ます。

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レバー毎月見る数字3か月後に判断すること
減らす対象工程の残業時間と応援の延べ時間生産量・安全・品質・納期を保ったうえで残業と応援が減ったか。減っていなければ対象工程の選び方を変える
残すその工程の退職者数、入社後1年未満の入社者数・退職者数・在籍者数入社者数を母数にした早期退職の状況を確認する。退職が続く場合は退職数と在籍者数の推移も併せて見る
採る応募数と、応募から入社までの残り人数応募がゼロに近いか。近ければ募集条件と求人票を先に直す

3つとも、勤怠記録・在籍台帳・応募管理の記録から取れる場合が多い項目です。応援の時間や兼務の割合を記録していない場合は、簡単な月次の記録を先に足します。新しい仕組みを作る前に、この3つが同じ月次で並ぶ状態を作ります。

教育訓練で1人が担当できる工程を増やす進め方は多能工化とは?進め方をスキルマップ・OJT・技能伝承で整理にまとめています。採用・人材に関する他の切り口は採用・人材のテーマ一覧にあります。

よくある質問

人手不足の対策は採用から始めるべきではないのですか

採用から始めてはいけないという意味ではありません。本記事は、工程や作業手順の見直しなど、自社主導で検討を始めやすい項目から確認する順序を提案しています。省力化投資や外注化は、費用・設備・取引先・安全・品質などの条件に左右されます。必要人数を把握しながら採用を進めると、採用目標を置きやすくなります。欠員が深刻な場合は、人数の把握と、応援や外注などの対応を並行して進めます。

省力化投資はどのくらいの工場が実施していますか

厚生労働省の調査では、人手が不足している部門等へ対応した製造業の事業所のうち、省力化投資の実施を挙げた割合は15%でした(2026年1〜3月期実績・複数回答)。業務の効率化の推進の46%と比べると低い水準です。ただし複数回答のため、同じ事業所が両方を行ったのか、どちらを先に行ったのかは、この統計からは分かりません。

不足人数はどの単位で数えればよいですか

工場全体ではなく工程ごとに数えます。同じ工場でも、組立は足りていて検査だけが足りないという状態があるためです。応援や兼務で回している人は、月間の所定労働時間に対するその工程の従事時間の割合で換算します。数え方をそろえたら、必要人数と配置可能人数を毎月同じ形で並べます。

まとめ

  • 対策は採る・残す・減らすの3つ。減らすは人員削減ではなく、同じ仕事に必要な作業時間や人手の削減を狙うこと
  • 2025年平均の就業者数は全産業で6,828万人と47万人増えた一方、製造業は1,033万人と13万人減った。減ったのは製造業だけではなく、卸売業・小売業も1,029万人と16万人減っている(総務省 労働力調査)
  • 製造業の正社員等労働者過不足判断D.I.は+44ポイントで、調査産業計の+47ポイントより低い(2026年5月1日現在)
  • 対応した製造業の事業所では中途採用70%が最多。採用以外では業務の効率化の推進が46%で、調査産業計の39%を上回る
  • 確認の順序は減らす→残す→採る。これは公的な基準ではなく、減らす施策のうち工程・作業手順の見直しを起点にした本記事独自の整理
  • #人手不足
  • #省人化
  • #採用
  • #定着

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株式会社恒電社 編集部

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