職務評価は、社内の仕事の内容や責任を比べる方法です。同じラインでも、決められた作業を担う仕事と、段取りや品質の判断まで担う仕事では範囲が違います。本人の頑張りを採点する人事評価とは、比べる対象を分けます。
賃金制度を見直す際は、仕事を書き出し、役割の違いを確認してから、等級と基本給を検討します。等級は、仕事内容・役割・能力など、自社の制度で定めた基準による区分です。パートタイム・有期雇用労働者と正社員の待遇比較では、仕事とともに、賃金の決定要素も並べます。
職務分析・職務評価の解説は、職務分析を仕事の情報の収集・整理、職務評価を仕事の大きさの相対的な測定と説明しています。この記事では、仕事内容を調べる段階、仕事同士を比べる段階、賃金制度を検討する段階を分けて説明します。
仕事内容の整理、仕事同士の比較、個人評価を分ける
例えば加工工程では、手順どおりに機械を動かす仕事と、段取り変更や異常時の判断も担う仕事を分けて記録します。どの作業と判断が含まれるかが、職務評価の確認対象です。作業者の性格や努力を比較するものではありません。
職務分析・職務評価・人事評価は、一つの点数に混ぜずに扱います。職務分析は仕事内容の整理、職務評価は整理した仕事の比較です。人事評価は、本人が求められた仕事をどう遂行したかを扱います。対象を分けることで、賃金にどう使うかも説明しやすくなります。
職務給の説明では、職務給を、仕事内容や役割の重要さに基づき給与を決める制度と説明しています。形や位置づけは企業によって異なります。仕事を整理することと、職務給へ全面的に移行することは、別の判断です。
作業と判断を書き出し、仕事の一覧を作る
まず、工程、扱うもの、判断できる範囲、引継ぎ先を書き出します。作業名だけより、役割の違いを確認しやすくなります。人事担当だけで作らず、現場責任者と作業者が書いた内容を照らし合わせてください。
食品製造業の導入事例では、パートタイムを含む全社員が仕事を書き出しました。重複を整理し、社内にある仕事の一覧を作っています。雇用区分で先に分けず、実際の仕事から比較した方法を参考にできます。

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| 記録項目 | 現場で確認する内容 | 確かめる相手 |
|---|---|---|
| 作業 | 担当工程と通常作業、段取り替えの範囲 | 作業者・班長 |
| 判断 | 不良・停止・条件変更時に自分で決める範囲 | 班長・品質担当 |
| 責任 | 設備、製品、後工程に対する確認と承認 | 現場責任者 |
| 引継ぎ | 判断できない事象の連絡先と記録方法 | 現場責任者 |
表は、編集部の聞き取り用の例で、法定様式ではありません。工程の主な役割を一行にまとめ、例外的な作業は備考に残す方法なら、細分化しすぎずに比較できます。技能の習得状況を別に管理する方法は、多能工化とスキルマップの記事を参照してください。
比較する仕事と評価項目を先に決める
仕事の一覧から、比較する仕事を選びます。一般作業、ライン調整、工程管理などの名称に加え、実際の作業、判断の範囲、責任を照らし合わせます。同じ名称だから同じ役割とは決めないでください。
職務評価マニュアルの資料一覧は、職務評価を、基本給の均等・均衡待遇の点検と、等級・賃金制度を検討する手法の一つとして紹介しています。マニュアルには点数化する方法もあります。ただし、仕事の点数から賃金が自動的に決まるわけではありません。
評価項目を、同じ意味で使えるか確認します。「責任が重い」だけでは、設備の設定か、出荷判定の承認かが分かりません。説明と判断例を付け、複数の現場責任者で同じ仕事を試しに評価します。評価が違った点を話し合い、比較の前提をそろえます。
仕事の点数と、本人の技能習熟度は別に記録します。中堅製造業の事例では、現場社員に職務評価結果ではなく、技能の習熟度合いを使う制度を設計しました。どの方法を使うかは、その会社が制度の目的と役割の違いから決めたものです。
等級と基本給を検討するときの確認順序
比較結果を賃金表へ直接移す前に、現在の等級と基本給の決め方を確認します。パートタイム・有期雇用労働者と正社員の比較では、各人の賃金が何を基準に決まるかも並べてください。仕事の差と、ほかの決定要素による賃金の差を区別するためです。
- 現在の仕事を確定する:仕事一覧と実際の担当を照合し、雇用区分だけで役割を推定しない。
- 等級との対応を見る:似た役割が別等級に置かれていないか、職務の境目を確認する。
- 基本給の決定要素を並べる:職務、能力、経験など、自社が実際に使う要素を分けて記録する。
- 説明できない差を洗い出す:人事担当者と現場責任者が比較結果を確認し、制度案を検討する。
厚生労働省のマニュアルは、仕事の評価、時間当たり基本給の確認、均等・均衡待遇の点検、制度の検討へ進む構成です。その手法を用いる場合の流れとして確認します。上の簡略な一覧だけで、自社の賃金計算や法令適合を判断しないでください。
パートタイム・有期雇用労働法は、通常の労働者より週の所定時間が短い人か、有期契約で働く人を対象とします。正社員同士の仕事を比較する場合も、職務整理は使えますが、この法律の待遇比較を全正社員にそのまま広げるものではありません。
待遇差の判断や、就業規則・賃金表の変更は、人事労務担当と社会保険労務士などに確認してください。
導入事例の数字を自社の基準に写さない
食品製造業の事例は、基準となる仕事を100点とし、ほかの仕事と比較して等級を設計しました。この100点は、事例企業の比較基準です。全国の工場に共通する職務点数ではありません。
事例には、裁断や機械洗浄を担う仕事と、生産計画やライン組み換えを担う仕事が出てきます。自社の名称が似ていても、判断や責任が同じとは限りません。点数や等級数を写すより、仕事を記録して比べる方法を参考にします。
現場責任者が、各仕事に何を任せるか説明できる状態を先に作ります。担当と等級の不一致は、作業分担の見直しで解消する場合もあります。採用・教育・配置も含めて考える際は、定着率の数え方や人材・組織テーマの記事一覧を参考に、処遇の検討と成果の測定を分けてください。
よくある質問
職務評価と人事評価は、何が違うか
職務評価は仕事の内容や役割、人事評価は本人の仕事の遂行状況などを評価します。対象が違うため、結果をどう賃金に使うかも、自社の制度として別に決めます。
パートタイム労働者だけの仕事を調べてもよいか
正社員との基本給や役割を比較するなら、比較先の仕事も確認する必要があります。厚生労働省の食品製造業事例では、パートを含む全社員の仕事を棚卸ししました。自社の対象と目的を人事担当者が先に整理してください。
職務点数だけで時給を計算できるか
職務点数だけでは決まりません。基本給に使っている要素や賃金表、職務以外の差を確認したうえで、制度を検討します。点数を算出したら直ちに時給を変える手順として扱わないでください。
仕事を記録し、比較してから賃金の決め方を見る
- 作業、判断、責任の範囲を書き出し、仕事の一覧を作ります。
- 仕事の評価と、本人の技能や遂行の評価を分けます。
- 比較結果を、現在の等級と基本給の決定要素に照らします。
- 厚生労働省の事例の点数や等級を、そのまま自社の基準にしません。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
法令・告示・公的統計・白書など、国や行政が公表している原典にあたり、出典・前提条件・数字の扱いを編集部で確認しています。