工業炉のうち、ガスや重油を燃やして被処理物を加熱・熱処理する炉を、燃焼炉と呼びます。電気を熱源にする電気炉は、空気比の対象外です。燃焼炉では、燃料を燃やすために送る空気が多すぎると、余った空気が熱を持ったまま排ガスとして出ていきます。この空気の多さを数字にしたものが空気比で、排ガスの酸素濃度から計算できます。
排ガスは、燃焼のあとに炉から煙道(排気の通り道)へ出ていくガスです。確認の順序は、排ガスの酸素濃度を測る、式で空気比を出す、炉の区分ごとの基準値と比べる、の3段です。基準を超えていた場合、調整の実作業は原則として専門業者に依頼します。燃焼不良による事故を防ぐためです。
根拠にするのは、環境省の「燃焼炉の空気比改善」の資料です。CO2削減ポテンシャル診断 実践ガイドライン2019の資料にあたります。同省のCO2削減ポテンシャル診断ガイドライン(2016年3月)も使います。中小企業基盤整備機構のJ-Net21の省エネQ&A(2019年10月23日)も参照しました。後半では、環境省の算定例の条件を式に代入し直した効果の試算を示します。
空気比は、実際に送る空気の量を理論空気量で割った値
空気比は、燃料に送る実際の空気量を、理論空気量で割った値です。理論空気量は、燃料を完全に燃やすのに理屈の上で必要な空気の量を指します。環境省の資料は、空気比が大きいと燃焼に寄与しない余剰空気が増え、昇温や排気量の増加で無駄なエネルギーが増えると説明しています。そのため適正な値に下げる必要があります。

J-Net21の回答(エネルギー管理士)では、損失熱のうち、燃焼排ガスに持ち去られる熱が大きな比重を占めるとされています。空気量そのものを測ることは、あまり行われません。排ガスの酸素濃度から求めるのが一般的です。
空気比は小さければよいわけではありません。J-Net21によると、小さすぎると不完全燃焼でできたすすが伝熱面に付着し、熱効率が下がります。大きすぎると、排ガスの熱損失が増えます。両側に問題があるため、適正な範囲に収める管理になります。
環境省のガイドラインは、現地踏査のチェック項目に「空気比の管理」を挙げています。確認するのは、空気比が適正かどうかです。一般的にはばい煙測定の結果を確認し、不完全燃焼している場合はバーナーの改善を検討するとされています。
経済産業省 資源エネルギー庁の中長期計画の指針(参考資料3)にも、燃焼設備の改善例として「空気比の改善」が載っています。排ガス出口の残存酸素濃度を分析する酸素濃度分析装置は、ボイラーと工業炉に使う装置として例示されています。
排ガスの酸素濃度から、簡易式で空気比を出せる
排ガス中の酸素濃度を測れば、空気比は計算で出せます。環境省の資料とガイドラインが示す簡易式は、言葉にすると次の通りです。
式の21は、空気中の酸素の割合21%を表します。酸素濃度が低いほど、空気比は1に近づきます。次の表は、酸素濃度ごとの空気比を、この式で計算した記事の試算です。
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| 排ガス中のO2濃度 | 空気比 |
|---|---|
| 2% | 1.11 |
| 3% | 1.17 |
| 4% | 1.24 |
| 5% | 1.31 |
| 6% | 1.40 |
| 7% | 1.50 |
酸素濃度を直接見て基準値と比べたい場合は、式を逆に使います。空気比1.20なら3.5%、1.25なら4.2%、1.30なら4.8%、1.35なら5.4%、1.40なら6.0%が目安です。これも記事の試算で、乾きガス基準の値です。
乾きガスは、蒸気(水分)を除いて数えたガスです。湿りガスは蒸気も含んだガスを100%とするため、同じ排ガスでも酸素濃度は低めに出ます。環境省の資料は、酸素濃度が乾きガスベースに換算されているかを確認するよう求めています。
環境省の資料によると、酸素濃度計は安価になり、常設も定期測定も容易になりました。すでに分析計や検出器がある場合、その値を流用できます。ただし故障や狂いがないかを、事前に確認するとされています。
基準値は炉の区分と燃料で決まる
空気比の基準値は、炉の区分と燃料の種類、運転方式ごとに表で示されています。次の表は、環境省シートの表のうち基準値だけを載せたものです。セルは「連続式/間欠式」の順に並べています。
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| 区分 | 液体燃料 連続/間欠 | 気体燃料 連続/間欠 |
|---|---|---|
| 金属溶解炉 | 1.30/1.40 | 1.25/1.35 |
| 金属加熱炉 | 1.25/1.35 | 1.25/1.35 |
| 金属熱処理炉 | 1.25/1.30 | 1.20/1.25 |
シートの表は、各欄の上段が現時点で達成すべき基準値、下段が将来的に達成してほしい目標値です。目標値は、どの区分も下限が1.05です。上の表は基準値だけを載せています。
省エネ法に基づく経済産業省告示の判断基準には、ボイラーと工業炉の空気比の値があります。J-Net21の回答によると、遵守すべき「基準空気比」と、努力目標の「目標空気比」が定められています。
基準値と比べるときは、表の数字を酸素濃度に直して見ると早く確認できます。たとえば金属熱処理炉の気体燃料・連続式は1.20です。排ガスの酸素濃度が3.5%を超えているなら、基準を超えていることになります。
基準を超えていたとき、調整の実作業は原則として専門業者に依頼します。環境省の資料が、燃焼不良事故の防止の観点から、空気比調整は原則として専門業者に依頼するとしているためです。現場では、測定と記録、調整後の再測定を行います。
熱を逃がさない別の点検として、蒸気配管の保温の点検があります。工場の区分と選任の考え方は、エネルギー管理員の記事で整理しています。
設備を更新する前に確認したい制度は、省エネ補助金の記事が参考です。エネルギー分野の他の記事は、エネルギーのテーマページが入口です。
測定と記録は、同じ操業状態で排ガスの酸素濃度・温度・外気温度を揃える
測る項目は、排ガスの酸素濃度、排ガス温度、外気温度(燃焼用空気の温度)の3つです。環境省の資料によると、酸素計はジルコニア式(濃淡電池式)が煙道に直接取り付けられ、サンプリングが不要で使いやすいとされています。長時間の記録にはデータロガーを使います。
操業の状態が変わると燃料の消費量が変わり、酸素濃度も変動します。比較は同じ操業状態の値どうしで行うのが基本です。環境省の資料は、操業に連動して空気比が制御されているかの確認を求めています。長期の効果の確認には、長期の平均を使うとされています。
測定が難しい場合は、定期点検などで得た確認情報を流用してもかまわない、というのが資料の扱いです。
記録する項目の案は次の通りです。記事の提案で、公的な様式ではありません。
- 日時と炉番号
- 燃料と操業状態(負荷)
- 排ガスの酸素濃度(乾きか湿りかの別)
- 排ガス温度と外気温度
- 空気比(式で算出)
- 燃料使用量

進め方は次の6段です。これも記事の整理です。
- 対象の炉が燃焼炉かどうかを確認します。
- 酸素計の有無と、乾き・湿りの基準を確認します。
- 同じ操業条件で、酸素濃度・排ガス温度・外気温度を記録します。
- 式で空気比を出し、基準値の表と比べます。
- 基準を超えていたら、調整を専門業者に相談します。不完全燃焼のリスクがあるためです。
- 調整後に同じ方法で再測定し、燃料使用量の変化を見ます。
空気比を下げると燃料はどれだけ減るか、環境省の条件で再計算した
空気比を下げたときの効果は、排ガスが持ち去る熱の差から計算できます。環境省シートの算定例の条件を、式に入れ直した記事の試算です。
条件は、都市ガス13A(低発熱量41.9MJ/Nm³、単価100円/Nm³、CO2排出係数2.15kg/Nm³)、年間64,000Nm³です。Nm³は、気体の量を標準状態に換算した体積の単位です。排ガス温度は1,100℃、平均比熱は1.4kJ/Nm³K、外気は30℃で、空気比1.4(酸素6%)を基準にしました。
排ガスが持ち去る熱は、次の式で出ます。理論空気量は11.2、理論燃焼ガス量は12.3(いずれも気体燃料の値)です。有効熱量は、燃料の発熱量から排ガスの熱を引いた、炉に残る熱です。
有効熱量を一定として燃料を逆算すると、空気比ごとの年間燃料は次のようになります。
空気比別の年間燃料使用量(試算)
※ 排ガス温度・比熱・有効熱量を一定とした簡易計算
データを表で見る
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| 空気比 | 年間燃料(Nm³) | 削減率 |
|---|---|---|
| 1.4(基準) | 64,000 | ― |
| 1.3 | 58,200 | 9.1% |
| 1.2 | 53,300 | 16.7% |
| 1.1 | 49,200 | 23.1% |
この条件では、空気比を1.4から1.1へ下げると年間燃料は64,000Nm³から49,200Nm³へ減り、削減率は23.1%になります。削減量は14,800Nm³です。単価100円/Nm³なら年間1,478千円、CO2は31.8tにあたります。
空気比1.3では削減量5,800Nm³で、年間582千円、CO2は12.5tです。空気比1.2では削減量10,700Nm³で、年間1,067千円、CO2は22.9tです。
環境省シートの算定例は、結果を削減量9,900Nm³/年、990千円、21.3tとしています。シートは、改善前の排ガス熱量を23.5MJ/Nm³としました。同じ条件を式に代入すると25.1MJ/Nm³になり、一致しません。そのため記事は式から再計算し、シートの結果の数値は使っていません。改善後の20.1MJ/Nm³は、シートと一致しています。
効果は排ガス温度に左右されます。J-Net21の例は、排ガス300℃、都市ガス13A、空気比1.6から1.2で、燃料の節約率が4.0%です。別の計算例(ボイラー、A重油、排ガス200℃、空気比1.6から1.3)は、削減率が2.1%でした。上の試算は1,100℃で1.4から1.1、23.1%です。炉の種類と条件が違うため、数字を並べるだけにとどめます。
同じ空気比の差でも、排ガス温度が高い炉ほど効果が大きくなりやすい、というのが記事の整理です。自工場の効果は、実際の排ガス温度と燃料使用量を、環境省の算定シートに入れて確かめます。算定シートが求めるデータは、排ガス酸素濃度、排ガス温度、外気温度、改善前の年間燃料使用量、排ガスの定圧比熱です。
よくある質問
Q. 空気比は低いほどよいのですか。
低いほどよいとは限りません。J-Net21によると、空気比が小さすぎると不完全燃焼で、すすが伝熱面に付着し、熱効率が下がります。大きすぎれば排ガスの熱損失が増えます。基準値の表の範囲で管理し、不完全燃焼がある場合はバーナーの改善を検討します。
Q. 電気炉にも使えますか。
使えません。空気比は、燃料を燃やす燃焼炉の考え方です。環境省のガイドラインは、工業炉を燃料を使う燃焼炉と、電気の電気炉に分けています。電気炉の熱源は電気で、燃料を燃やしません。
Q. 酸素濃度計が無い場合はどうしますか。
測定が難しい場合は、定期点検などで得られた確認情報を流用できます。ばい煙測定の結果で、空気比が適正かを確認する方法もあります。常設するなら、環境省の資料によると、ジルコニア式の酸素計は煙道に直接取り付けられ、サンプリングが不要です。
まとめ
- 空気比は、実際の空気量を理論空気量で割った値で、排ガスの酸素濃度から「21÷(21−酸素濃度)」で計算する。
- 基準値は炉の区分・燃料・運転方式ごとに決まり、目標値の下限はどの区分も1.05である。
- 測定は、排ガスの酸素濃度・排ガス温度・外気温度を、同じ操業状態で記録する。
- 基準を超えていた場合、調整は原則として専門業者に依頼し、調整後に同じ方法で再測定する。
- この条件の試算では、空気比1.4から1.1で年間燃料は23.1%減る。排ガス温度で効果は変わる。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
製造業の電気設備・自家消費型太陽光発電の現場に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。