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タクトタイムはどう計算する?稼働時間の決め方とサイクルタイムとの違い

タクトタイムの計算式は使える稼働時間÷必要な生産数。何を稼働時間に入れるかで答えが変わります。労働基準法と毎月勤労統計をもとに決め方を整理します。

6等分した帯の上に1単位を示すオレンジの四角を置き、タクトタイムと、使える時間を必要数で割るという説明を添えたサムネイル
31生産性・省人化

タクトタイムとは、注文に間に合わせるために「製品1個を何分で作ればよいか」を表す基準の時間です。設備の性能ではなく、必要な数と使える時間から決まります。

計算式は1日に使える稼働時間 ÷ 1日に必要な生産数の1つだけです。つまずくのは式ではなく、稼働時間に何を入れるかの判断のほうです。

ここでは、計算式、稼働時間の決め方、公的統計から見た実績、サイクルタイムとの違い、置き直す頻度の順にまとめます。

タクトタイムは「使える稼働時間 ÷ 必要な生産数」で求める

タクトタイムは、その日に使える稼働時間を、その日に必要な生産数で割って求めます。式は1つだけです。

タクトタイム = 1日に使える稼働時間 ÷ 1日に必要な生産数

例えば、使える稼働時間が460分、必要な生産数が400個なら、460÷400で1.15分、秒に直すと69秒です。

この69秒が、1個あたりに掛けてよい時間の目安です。停止や不良を別に見込んだうえで、完成の間隔がこれを上回る状態が続けば、その日の必要数には届きません。

単位は「分/個」でも「秒/個」でもかまいません。ただし工場の中で単位をそろえておくことが前提です。

必要な生産数はどこから取るか

必要な生産数は、設備の能力から逆算せず、受注、需要予測、在庫計画などから定めます。月の必要数を稼働日数で割る方法が一例です。

在庫を持つ製品では、注文数に在庫の増減を足し引きしてから割ります。

稼働時間は、労働時間の範囲を確かめてから生産計画で定める

人の配置に連動して動く工程では、労働時間として扱う範囲を確かめたうえで、製造に充てられる時間を定めます。

休憩中も運転できる自動設備や、交替運転のラインでは、設備が実際に生産できる時間を別に確認します。

労働基準法は、休憩時間を除いて1日8時間・1週40時間を超えて働かせてはならないと定めています(第32条)。

休憩については、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上を与えると定めています(第34条)。条文はe-Gov法令検索「労働基準法」で読めます(2026年8月時点)。

例えば、8時間の拘束時間のうち就業規則で休憩を1時間としている工場なら、所定労働時間は7時間です。

なお法令上、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合に必要な休憩は45分以上です。1時間の休憩は、就業規則でそう定めている例です。

作業そのもの以外にも、労働時間として扱う時間があります。厚生労働省のガイドラインは次の時間を挙げています。

  • 準備・後始末:指示により義務付けられた服装への着替えや、業務終了後の清掃などを事業場内で行った時間
  • 手待時間:指示があれば即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間
  • 義務付けられた研修:参加が業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講や、指示による学習の時間

出典は厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)です。

義務付けられた着替えや朝礼、研修など、あらかじめ製造に充てない時間は、計画上の稼働時間から控除します。着替えと朝礼で20分を使う工場なら、その20分が対象です。

朝礼が労働時間に当たるかは、参加が義務付けられているかなど実態で判断します。

手待時間の扱いは分かれます。計画した停止として控除するか、改善対象のロスとして残すかを社内で先に統一します。

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時間の種類労働時間としての扱いタクトタイムの稼働時間
休憩労働時間に含めない(第32条・第34条)休憩で工程を止める場合は入れない
義務付けられた着替え・清掃労働時間として扱う計画上、製造に充てないため控除する
手待時間労働時間として扱う計画で控除するか、ロスとして残すかを決める
計画した段取り替え労働時間として扱う控除するか含めるかを決めてそろえる
所定外労働(残業)労働時間として扱う常態としない前提で分けて置く
同じ長さの帯を3段に重ね、1段目を拘束時間、2段目で休憩を切り出し、3段目を計画上の稼働時間・着替え・朝礼・休憩の3つに分けて示した図。人の配置に連動する工程の例
図1 拘束時間から計画上の稼働時間を切り出す順序(人の配置に連動する工程の例)
注意:ここで整理しているのは、タクトタイムの計算に使う時間の考え方です。上に挙げた時間が労働時間に当たる場合は、勤怠記録や賃金計算にも反映が必要です。取扱いは労務の担当者に確認してください。

1日480分と置く前に、実績の時間を確かめる

計算の前提として、1日8時間すなわち480分を置く例はよく見ます。ただし製造業の一般労働者について、月間所定内労働時間を出勤日数で割った平均は480分を下回ります。

厚生労働省「毎月勤労統計調査」の2025年分結果確報によると、製造業の一般労働者の月間所定内労働時間は147.6時間、出勤日数は19.1日でした(事業所規模5人以上)。

147.6時間を19.1日で割ると、1日あたり約7.73時間です。分に直すと約464分となり、480分との差は16分になります。

必要数400個の工場に当てはめると、480分ならタクトタイムは72秒、464分なら69.6秒です。前提が16分違うだけで、1個あたり2.4秒の差が出ます

約464分は全国平均で、個別の工場の適正値ではありません。自社の値は就業時間と計画上の停止時間から算出します。

同じ統計で、製造業の所定外労働時間は月14.7時間でした。出勤日数19.1日で単純に均すと、1出勤日あたり約46分に相当します。

これは毎日46分の残業があるという意味ではありません。

月間の実労働時間の内訳(一般労働者・2025年)

事業所規模5人以上

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」第2表

所定内労働時間所定外労働時間
月間の実労働時間の内訳(一般労働者・2025年)所定内労働時間:製造業 147.6 時間、建設業 150.8 時間、運輸業,郵便業 151.2 時間、情報通信業 144 時間、調査産業計 147.3 時間。所定外労働時間:製造業 14.7 時間、建設業 13.5 時間、運輸業,郵便業 24.1 時間、情報通信業 16.5 時間、調査産業計 13.2 時間所定内労働時間、製造業:147.6 時間所定外労働時間、製造業:14.7 時間所定内労働時間、建設業:150.8 時間所定外労働時間、建設業:13.5 時間所定内労働時間、運輸業,郵便業:151.2 時間所定外労働時間、運輸業,郵便業:24.1 時間所定内労働時間、情報通信業:144 時間所定外労働時間、情報通信業:16.5 時間所定内労働時間、調査産業計:147.3 時間所定外労働時間、調査産業計:13.2 時間製造業の所定外

※ 所定内と所定外の合計が総実労働時間

データを表で見る

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月間の実労働時間の内訳(一般労働者・2025年)
産業所定内労働時間(時間)所定外労働時間(時間)
製造業147.614.7
建設業150.813.5
運輸業,郵便業151.224.1
情報通信業144.016.5
調査産業計147.313.2

製造業の所定内は147.6時間で、比較した5区分の中では中位です。所定外は14.7時間あり、運輸業,郵便業と情報通信業に次ぐ長さでした。

サイクルタイムとの違いは「置く値か、測る値か」

タクトタイムは必要数と使える稼働時間から置く基準、サイクルタイムは工程の実績から把握する時間です。ここが2つの言葉の分かれ目になります。

サイクルタイムは、工程が製品を繰り返し完成させる実際の時間間隔です。1個ずつ測るほか、一定期間の実稼働時間を生産数で割って求める場合もあります。

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項目タクトタイムサイクルタイム
決めるもの必要数と使える稼働時間工程の実力
求め方稼働時間 ÷ 必要数の計算実績の測定、または実稼働時間 ÷ 生産数
動く理由受注量・稼働日数が変わったとき作業手順・設備・人が変わったとき

2つを比べると、工程の状態は3つに分かれます。

  1. サイクルタイムが短い:停止や不良を計画に織り込めていれば、必要数を満たせる目安です。差が大きすぎる場合は、作りすぎや手待ちが起きていないかを見ます
  2. ほぼ等しい:必要数と実力がそろった状態です。ただし余裕が小さいため、停止が起きると当日中の挽回が難しくなります
  3. サイクルタイムが長い:そのままでは必要数に届きません。残業、人の追加、工程改善、生産計画の調整などを検討します
タクトタイムを示す縦の基準線を1本引き、サイクルタイムの帯が基準線の手前で終わる場合・ちょうど届く場合・越える場合の3つを、短い・ほぼ等しい・長いと並べて示した図
図2 タクトタイムとサイクルタイムの3つの関係

3番目の状態でまず見るのは、作業そのものより停止と段取りです。短時間の停止の数え方はチョコ停とは?記録の仕方から原因の型・優先順位まで見える化の手順で、段取り替えの時間を短くする手順は外段取り・内段取りとは?段取り時間を短縮する4つの手順と金額換算で扱っています。

置き直すのは「必要数か、使える稼働時間が変わったとき」

タクトタイムは一度決めて終わりではありません。受注量、稼働日数、シフト、計画停止などが変わり、必要数か使える稼働時間が動けば計算し直します。

月次で生産計画を組む工場なら、月ごとに置き直す方法があります。受注変動が大きい場合は、週や日の単位でも見直します。

連休のある月は稼働日数が減るため、受注量が同じでもタクトタイムは短くなります。

月700個の注文を19日で作るなら1日あたり約37個、同じ700個を16日で作る月は約44個です。

稼働時間を464分とすると、19日の月は1個あたり約12.6分、16日の月は約10.6分です。連休のある月は、同じ注文でも約2分きつくなります

置き直したあとに動かすものは3つです。

  • 人の配置:工程ごとの作業時間をタクトタイムに収めるための人数と担当
  • 設備の停止の許容量:余裕が減る月は、点検と部品交換の前倒しを検討する
  • 残業の見込み:計算上足りない分を、どの工程でどれだけ見込むか

誰に聞くかも決めておきます。受注量は営業と生産管理、稼働日数と休憩は労務、設備の停止見込みは保全の担当者が持っています。

設備側の余裕を数値で確かめたい場合は、OEE(設備総合効率)とは?計算式の3要素とデータの取り方・使い方が使えます。生産性のほかの論点は生産性・省人化のテーマページにまとめています。

よくある質問

タクトタイムに残業時間を入れてよいですか

入れる場合は、常態としない前提で分けて置きます。残業を含めた時間で計算すると、平常時に必要な速さが見えなくなります。

所定内の時間と、残業を含めた時間で、それぞれタクトタイムを試算する方法があります。必要な残業時間そのものは、不足する生産数と工程の能力から別に算定します。

なお法定労働時間を超える時間外労働や法定休日労働をさせるには、原則として労使協定(36協定)の締結と届出が必要です(労働基準法第36条)。

タクトタイムより速く作ってはいけないのですか

禁止ではありません。ただし後工程や出荷の必要量を超えて作り続けると、仕掛品や在庫が増える可能性があります。

製品が何種類もある場合はどう計算しますか

同じラインから流す総必要数を使って、共通のタクトタイムを置ける場合があります。品種ごとの作業負荷が大きく違う場合は、品種別のタクトタイムや換算数量を併用します。

切り替えの段取り時間を控除するか、タクトタイムに含めて管理するかは、あらかじめ決めて全計算でそろえます。

まとめ

  • タクトタイムは「1日に使える稼働時間 ÷ 1日に必要な生産数」で求める。式は1つだけで、難しいのは稼働時間の置き方
  • 人の休憩により製造を止める時間は控除する。着替えや研修など計画上製造に充てない時間も控除し、手待時間の扱いは社内で決める
  • 1日480分は前提の一例。毎月勤労統計調査の2025年分では、製造業の一般労働者の所定内労働時間は1日あたり約464分(全国平均)。自社の値は就業時間と計画停止から出す
  • サイクルタイムは測る値、タクトタイムは計算して置く値。どちらが長いかで、次に見る対策が変わる
  • 必要数か使える稼働時間が変わったら計算し直し、人の配置・点検の前倒し・残業の見込みを合わせて動かす
  • #タクトタイム
  • #サイクルタイム
  • #生産計画
  • #労働基準法

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