絶縁抵抗測定は、電線同士や電気の通り道である電路と大地の間に、電気が流れにくい状態が保たれているかを調べる検査です。工場の点検結果を読む際は、低圧と高圧で基準を分け、測定前の停電作業にも安全措置が必要なことを確認します。
低圧電路の下限は、使用電圧に応じて0.1・0.2・0.4メガオームの3区分です。メガオーム(MΩ)は抵抗値の単位です。測定が困難な場合の代替方法も、国の技術基準の解釈で条件が定められています。
低圧の区分、測れない場合の条件、高圧の基準、安全措置の順で説明します。実際の測定方法と自社への適用は、保安管理体制の下で確認してください。
電路を大地から絶縁することが法令で求められる
電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)第5条は、電路を大地から絶縁することを求めています。絶縁は、電気が本来の経路の外へ流れないようにすることです。
電気関係の火災を考える参考として、消防庁の令和6年(1〜12月)の確定値(令和7年11月25日公表)では、建物火災は20,972件です。原因別の件数を次の表に示します。
建物火災の主な出火原因別の件数(令和6年)
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| 出火原因 | 件数 | 建物火災に占める割合 |
|---|---|---|
| こんろ | 2,654 | 12.7% |
| 電気機器 | 2,051 | 9.8% |
| たばこ | 1,721 | 8.2% |
| 配線器具 | 1,461 | 7.0% |
| 電灯電話等の配線 | 1,133 | 5.4% |
単独の原因では、こんろが最多です。電気機器・配線器具・電灯電話等の配線を合計すると4,645件、建物火災の22.1%です。この合算は掲載値からの計算で、消防庁の分類そのものではありません。用途別の工場・作業場の火災は1,866件(8.9%)でした。
この統計は、電気関係の区分が一定の割合を占めることを示しています。ただし、原因区分だけでは絶縁劣化との因果関係を判断できず、絶縁抵抗測定の効果を示す数字にはできません。

低圧では使用電圧と対地電圧で下限を選ぶ
低圧の判定値は、同省令第58条の表で確認します。使用電圧と対地電圧の区分によって、次の値以上を満たす必要があります。
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| 電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 |
|---|---|
| 300V以下で、対地電圧が150V以下の場合 | 0.1MΩ |
| 300V以下で、上記以外の場合 | 0.2MΩ |
| 300Vを超えるもの | 0.4MΩ |
対地電圧は、第58条の定義では、接地式なら電線と大地の間の電圧、非接地式なら電線間の電圧です。表のMΩはメガオームで、抵抗値の単位を示します。
300V以下の回路は、接地式か非接地式かを確認して対地電圧を判断し、0.1MΩか0.2MΩを選びます。300Vを超える低圧電路の下限は0.4MΩです。
開閉器または過電流遮断器で区切れる電路ごとに判定します。開閉器は電路を開閉する機器、過電流遮断器は電流が過大になった場合に切る機器です。複数の分岐をまとめた測定だけでは、各電路の適合を確認できない場合があります。
第58条の対象は低圧です。参考に労働安全衛生規則第36条第4号を挙げると、同規則の低圧は直流750V以下・交流600V以下、高圧はそれを超え7,000V以下です。省令第58条の表は、電気設備に関する技術基準を定める省令で直接確認してください。
低圧か、接地式か、対地電圧はいくつかを確認する
自社の回路は、次の3つの問いで区分を確認します。
- 低圧電路か確認します。低圧の範囲で300Vを超える場合は、0.4MΩです。
- 300V以下では、接地式か非接地式か確認します。これにより対地電圧の意味が変わります。
- 対地電圧が150V以下なら0.1MΩ、それ以外なら0.2MΩです。
接地式か非接地式か、対地電圧がいくつかは、設備図面で確認します。不明な場合は、自社の保安管理体制の下で確認してください。
測定困難な低圧電路では、漏えい電流の判定を確認する
経済産業省の「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月20日改正)第14条は、低圧の絶縁性能について次の2つの適合方法を示しています。
- 省令第58条の方法では、前節の区分ごとの抵抗値以上を満たします。
- 絶縁抵抗の測定が困難な場合は、使用電圧を加えた状態の漏えい電流が1mA以下であることを確認します。漏えい電流は、ここでは電路から漏れる電流です。
1mAは電流の判定値で、mA(ミリアンペア)は電流の単位です。使用電圧が加わった状態を測ります。この方法を選べるのは、絶縁抵抗測定が困難な場合です。停電できるかだけで決めず、自社回路が当たるかを保安管理体制の下で確認します。

図2は電圧区分と適合の根拠条文を示すもので、日常点検でそのまま行う試験手順ではありません。
高圧には、低圧の0.1・0.2・0.4MΩを当てはめない
省令第58条の値は低圧だけが対象です。確認した省令と解釈の範囲では、運用中の高圧・特別高圧に一律に適用する絶縁抵抗の下限は見当たりません。
高圧側の解釈第15条は、抵抗値ではなく、電圧に耐える「絶縁耐力」を定めます。解釈第15条第1号・15-1表には、最大使用電圧7,000V以下の交流電路について、その1.5倍の交流電圧を連続10分間加える絶縁耐力の確認方法があります。これは抵抗を読む測定とは別の試験です。
点検報告書に並ぶ数値の読み方は、運営会社である恒電社のサイトにある点検報告書の読み方の解説にも整理があります。年次点検そのものの進め方は、キュービクル点検は誰が何を見るかの記事で扱っています。
停電作業の措置と、復電前の確認を守る
労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第339条は、電路を切り離す「開路」をして敷設・点検・修理・塗装等の電気工事をする場合に、事業者が講じる感電防止措置を定めています。
- 施錠・表示・監視人のいずれかで、作業中の通電を防ぎます。開路に使った開閉器を施錠するか、通電禁止を表示するか、監視人を置きます。
- 残留電荷の放電は、ケーブルやコンデンサーに残る電気の危険がある電路で、安全な方法により確実に行います。
- 検電と短絡接地は、開路した高圧・特別高圧電路で行います。検電器具で停電を確認し、短絡接地器具で確実に短絡接地します。
復電前は、作業者に感電の危険がないことと、短絡接地器具を外したことを確認します。第339条は、この確認をしないまま通電することを認めていません。
第352条の対象である検電器具・短絡接地器具・所定の絶縁用保護具は、その日の使用前点検が必要です。異常があれば直ちに補修または交換します。前回異常がなかったという理由で、今回の点検を省くことはできません。
実施方法・周期・記録は、自社の保安規程で確認します。電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号)第50条第3項は、自家用電気工作物の保安規程に巡視・点検・検査と記録などを定めることを求めます。この条文だけで、測定の具体的な方法や周期を一律には示せません。
記録は、測定日・回路名・分電盤名・使用電圧区分・測定値・判定を1行にまとめます。低圧の第58条の抵抗値で判断する場合は、前節の3つの問いで区分を決めます。同じ表に次回の値を追記すると、推移を確認できます。
よくある質問
絶縁抵抗計の測定電圧はどう決めるか
省令第58条と解釈第14条は、満たす抵抗値と、測定困難時の漏えい電流を定めています。測定に使う電圧の指定はなく、この2条の原典だけでは特定できません。主任技術者か保安管理の委託先に、自社の測定手順を確認してください。
基準未満なら、すぐ停止するか
第58条の下限だけでは、継続使用の可否や対応期限まで判断できません。未満と分かったら、その場で通電を続けてよいと自己判断せず、保安規程にもとづく判断へつなげてください。
基準以上でも、値が下がり続ける場合はどうするか
省令は下限を定めていますが、確認した原典には、低下の傾向から補修・更新を決める基準はありません。時系列で値を残し、保安規程と保安管理体制の下で判断してください。更新の判断材料は設備は修理か更新かの記事、ほかの保全の論点は設備保全のテーマページで確認できます。
電路の区分と測定条件を確認して判定する
- 低圧の下限は第58条の3区分です。300V以下・対地150V以下は0.1MΩ、300V以下のその他は0.2MΩ、低圧で300V超は0.4MΩ以上です。
- 開閉器や過電流遮断器で区切れる電路ごとに判定します。
- 測定困難な場合は解釈第14条の漏えい電流1mA以下の方法があります。停電の可否だけで選びません。
- 第58条は低圧が対象です。確認した省令・解釈では、運用中の高圧・特別高圧に一律の絶縁抵抗下限は見当たりません。解釈第15条は絶縁耐力を定めています。
- 開路して敷設・点検・修理・塗装等の電気工事をする場合は、第339条に従い施錠・表示・監視人のいずれかを講じます。電路の条件に応じて放電と検電・短絡接地を行い、第352条の対象器具等は使用前点検します。
- 周期と記録方法は、第50条第3項だけで一律には決まらず、自社の保安規程と体制で確認します。
この記事の確認方法
株式会社恒電社 編集部
受変電設備の更新・保全に携わる立場から、実務上の誤解を招かないかを確認しています。生産設備の保全に関する記述は、公的資料と公開情報にもとづきます。