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36協定の健康福祉確保措置はどう選ぶ?特別条項の9つの措置と、発動の手続・実施記録の残し方

36協定の健康福祉確保措置について、指針が示す9措置の選び方と、特別条項の手続・実施記録の残し方を整理する。

チェックの入った記録帳の横に、健康福祉確保措置と、特別条項で選び記録を残すの文字を置いた図
93採用・人材

36協定(サブロク協定)は、時間外労働や休日労働を命じるために、労働基準法36条にもとづいて会社と労働者側が結ぶ書面の協定です。限度時間は原則として1か月45時間・1年360時間で、これを超える見込みがあれば特別条項を付けます。特別条項を付けるときは、限度時間を超えて働く社員の健康と福祉を確保する措置(健康福祉確保措置)も協定に書きます。

自社が該当するかは、協定届の様式で見分けられます。様式第9号の2は、特別条項付きの36協定を労働基準監督署へ届け出る用紙です。2枚目に措置と手続の欄があれば、以下の内容が当てはまります。

措置は指針の9つを参考に選び、選ぶ決め手は実施した記録を残せるかです。限度時間を超える月は、協定で定めた手続を1か月ごとに行います。措置の実施状況の記録は、有効期間中と満了後3年間(規則の本文は5年で、当分の間3年)保存します。

特別条項では、限度時間を超える社員への措置を協定で定める

特別条項付きの協定には、措置と手続を必ず書きます。労働基準法施行規則17条1項が、そう定めているためです。

同項は、特別条項を定める場合に協定へ書く事項として、限度時間を超えて労働させることができる場合、措置、割増賃金の率、手続を挙げています。特別条項を定めない協定では、これらは不要です。根拠はe-Govの労働基準法施行規則です。

特別条項の範囲は、労働基準法36条5項が定めています。通常予見できない業務量の大幅な増加などで臨時的に限度時間を超える場合に、時間外労働は1年720時間以内、時間外と休日労働の合計は1か月100時間未満で定められます。月45時間を超える月は年6か月以内です。協定の範囲内でも、2〜6か月の平均は時間外と休日労働の合計で80時間以内です。条文は労働基準法にあります。

措置の選択肢は、厚生労働省の労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針(以下、指針)の第8条にあります。第8条は、9つの措置のうちから協定することが望ましい、という書き方です。9つをすべて協定する義務はありません。

協定届の書き方にも決まりがあります。様式の記載心得に番号①〜⑩が並び、該当する番号を記入して、右の欄に具体的な内容を書きます。⑩はその他です。記載例は①、③、⑩を選び、面接指導、11時間の勤務間インターバル、職場での時短対策会議を書いています。11時間は記載例の数字で、基準ではありません。

通達では、時間外・休日労働の上限要件(月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内)を確認するチェックボックスにチェックがない協定届は、法定の要件を欠き無効とされています。協定を結ぶ相手は、労働者の過半数で組織する労働組合です。ない場合は、過半数代表者(労働者の過半数を代表する人)と結びます。

指針では、「業務の都合上必要な場合」のように、恒常的な長時間労働を招くおそれがある定め方は認められません。

9つの措置は「働き方」「休み」「健康」の3グループに分けると選びやすい

指針第8条の9つは、記事の整理として3つのグループに分けられます。選ぶときの見通しをよくするための分け方で、公的な分類ではありません。

指針第8条の9つの措置を、働き方を変える、休みを増やす、健康を見るの3つの箱に分けて並べた図
図1 9つの措置を3つのグループに分けた記事の整理
  • 働き方を変える:深夜業の回数を1か月について一定回数以内にする。終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保する。必要な場合に適切な部署へ配置転換する。
  • 休みを増やす:勤務状況や健康状態に応じて、代償休日または特別な休暇を付与する。年次有給休暇をまとまった日数連続して取得することを含め、取得を促進する。
  • 健康を見る:労働時間が一定時間を超えた労働者に、医師による面接指導を行う。勤務状況や健康状態に応じて健康診断を行う。心とからだの健康問題の相談窓口を設ける。必要に応じて、産業医等の助言・指導を受けるか、労働者に産業医等による保健指導を受けさせる。

用語を補います。勤務間インターバルは、終業から次の始業までの、使用者の拘束を受けない休息時間です。医師による面接指導は、医師が対象の労働者と面談して健康状態を確かめることです。産業医は、事業場で労働者の健康管理を担当する医師を指します。

選ぶときは、記録・勤務の形・既存の仕組みの3点で決める

選ぶ基準は3つあり、最初に見るのは記録を残せるかです。次の3点は記事の整理で、公的な基準ではありません。

  1. 実施したことを記録に残せるか:記録のない措置は実施を示せない。
  2. 勤務の形に合うか:交替勤務の有無で、勤務に合う措置が変わる。
  3. 既にある仕組みと重ねられるか:新しい制度より、記録の取り方を決めるほうが続く。

1点目の記録は、措置ごとに残すものが違います。面接指導なら実施日と対象者、勤務間インターバルなら実際の終業時刻と始業時刻、代償休日なら付与日と取得日を残します。相談窓口なら、設置した日と社員への周知の記録です。

2点目の勤務の形で迷いやすいのは、深夜業の回数制限です。通達では、この回数制限の対象に所定労働時間内の深夜業も含まれると示されています。交替勤務で、所定の勤務に深夜帯が入っている工場では、毎月の深夜勤務がそのまま回数に数えられます。事業場の実情に合わせて、ほかの健康確保措置を講じることが考えられる、というのが通達の整理です。

日勤だけの部門であれば、回数制限も選べます。回数の目安として、同じ通達は、労働安全衛生法66条の2の自発的健康診断の要件にある「1か月当たり4回以上の深夜業」を参考に協定することも考えられる、と述べています。月4回は参考にできる目安であり、義務や基準ではありません。

勤務間インターバルを選ぶ場合、通達は時間数の目安を定めていません。事業場の実態を踏まえて、労使で決めます。交替勤務での決め方は交替勤務の勤務間インターバルの記事で整理しています。

3点目は、既に動いている仕組みの活用です。定期健康診断、産業医の面談、外部の相談窓口がある工場は、それらを措置に活用できるか検討します。健康診断を措置にする場合は、夜勤者の健康診断の対象と周期の記事で、対象者の範囲と周期を先に確かめてください。活用する場合も、協定する措置の対象・実施条件・内容に合うように設計します。

限度時間を超える月は、手続を毎月行い、措置と記録を残す

手続は1か月ごとに必ず行い、時期・内容・相手方を書面等で残します。これは通達に書かれた扱いです。

協定の手続欄には、たとえば「労働者代表者に対する事前申し入れ」と書きます。これは行政の記載例で、通告や協議などを定める場合もあります。定めた手続は、限度時間を超えて労働させる具体的な事由が生じるたびに行います。協定に書いてあっても、その月に行わずに限度時間を超えると、法違反になります。

手続を経て延長するときに、労働基準監督署への届出は不要です。その代わりに、手続の時期・内容・相手方を書面等で明らかにしておく必要があります。1か月ごとの運用は、次の表のとおりです。表は記事の整理で、公的な様式ではありません。

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時期すること残す記録
月の途中で限度時間を超えそうになったとき協定で定めた手続(例:労働者代表への事前申し入れ)をその月ごとに行う手続の日付・内容・相手方
月または年の限度時間を超えた労働者が出たとき対象者を特定し、協定した措置を実施する対象者・措置の種類・実施日・結果
年度末・更新時年6回以内に収まったか、年の限度時間(360時間)を超えた人がいないか、措置を実施できたかを見て、次の協定の措置を見直す記録は有効期間中と満了後3年間保存

結果の残し方は措置ごとに違い、面接指導なら実施の有無、勤務間インターバルなら実績の時刻です。

協定で定める、限度時間を超える月に手続を行う、措置を実施する、記録を残すという4段の流れを矢印でつないだ図
図2 協定から記録保存までの4段の流れ

記録の保存期間は、労働基準法施行規則17条2項が定めています。措置の実施状況に関する記録を、協定の有効期間中と満了後3年間保存します。規則の本文は5年ですが、附則71条で当分の間は3年と読みます。記録の様式は、表の3列目のように、誰に何をいつ実施したかが追える形にする案です。

年度末には、月の限度時間を超えた月が年6回以内か、年の限度時間を超えた人がいないかを勤怠で確かめます。措置を実施できたかも見て、次の協定では、記録を残せない措置を残せる措置へ入れ替えます。

2026年9月から、監督署は措置の実施状況を重点的に確認する

厚生労働省は、2026年9月1日から、監督指導の重点を措置の実施状況に移しました。2026年8月19日の報道発表で示された運用です。

報道発表によると、労働基準監督署は、時間外・休日労働の時間数だけに着目して月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直します。代わりに、各事業場が36協定で定める健康福祉確保措置の実施状況を重点的に確認し、状況に応じて必要な指導を行います。

過重労働による健康障害のおそれが高い場合は、引き続き必要な指導が行われます。発表は厚生労働省の報道発表「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」で読めます。

発表は「重点的に確認」と述べるにとどまり、確認する項目や頻度は示していません。措置を協定どおりに実施し、記録に残しておくことが、運用上の備えになります。

同じ発表で、全国の働き方改革推進支援センターに、36協定と特別条項の締結を支援する専門相談窓口が設けられました。窓口は監督署の労働時間相談・支援班と連携して訪問支援を行います。措置の選び方で迷う場合の相談先になります。

指針の第3条は、協定の範囲内で働かせる場合でも、労働契約法5条の安全配慮義務を負うと定めています。

明日からの確認は、現行の協定届を見る順に進める

最初の作業は、現行の協定届に何が書いてあるかを見ることです。次の順で進めます。これも記事の整理です。

  1. 現行の協定届(様式第9号の2の2枚目)で、措置の欄と手続の欄に書かれた内容を見る。
  2. 直近1年で月または年の限度時間を超えた人と月を、勤怠から拾う。
  3. 手続と、協定に沿った措置の実施記録があるか探す。
  4. 記録がなければ、次に超える月から残す形を決める。表の3列が使える。
  5. 更新のときに、記録を残せる措置へ入れ替える。

確認の相手は、勤怠を持つ総務・労務担当、協定の相手方(過半数組合または過半数代表者)です。産業医と契約している場合は、面接指導や助言・指導の実施方法を産業医に聞きます。協定の中身に迷ったときは、所轄の労働基準監督署か、働き方改革推進支援センターが相談先です。残業そのものが恒常化している場合は、工場の人手不足対策の記事で見直す先を整理しています。

ほかの記事は採用・人材の記事一覧が入口です。

補足:9つの措置の3グループ分け、選ぶ3点、1か月ごとの運用表、確認の順序は記事の整理で、公的な基準ではありません。参照した原典では、特定の組み合わせや最低個数は示されていません。①③⑩は記載例です。記録項目は記事の例であり、協定した措置の内容・実施時期に合わせて記録します。対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制では、限度時間は月42時間・年320時間で、年6か月の判定も42時間超で行います。過半数代表者は、協定締結のための選出であることを明示した投票・挙手等で選び、管理監督者は選べず、使用者の指名や意向に基づく選出は認められません。個別の判断は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。

よくある質問

特別条項を使わない年でも措置は要りますか

措置は特別条項の協定に書く事項です。労働基準法施行規則17条1項は、特別条項を定めない協定では措置の定めを不要としています。特別条項を付けた協定は、限度時間を超えた人がいない年でも、措置と手続が協定の内容として有効期間中は残ります。限度時間を超えて働かせる前に所定の手続を経て、措置は協定した内容・実施時期に従って実施します。

措置を協定したが、限度時間を超えた社員がいなかった年の記録はどうしますか

対象者の有無は、月の限度時間と年の限度時間の両方で判定します。月・年とも限度時間内なら、限度時間超過を条件とする個別措置の対象者はいません。記事の整理として、勤怠の集計で月・年とも限度時間内だったことを残しておくと、あとから説明できます。相談窓口のように継続的な措置は、協定内容に沿って実施し、設置日と周知の記録を残します。

交替制で所定内に深夜勤務がある工場は、深夜業の回数制限を選べますか

協定として書くことはできますが、実態に合いにくくなります。通達では、回数制限に所定労働時間内の深夜業も含まれるため、交替制勤務の事業場ではほかの健康確保措置を講じることが考えられる、と整理されています。実情に応じて、勤務間インターバルや医師による面接指導など、ほかの措置も検討します。

まとめ

  • 特別条項付きの36協定には、限度時間を超える社員への健康福祉確保措置と手続を書きます。
  • 指針第8条は、9つの措置のうちから協定することが望ましいとしています。
  • 選ぶときは、実施した記録を残せるか、勤務の形に合うか、既存の仕組みを活用できるかで決めます。
  • 限度時間を超える月は、手続を1か月ごとに行い、時期・内容・相手方を書面等で残します。
  • 実施状況の記録は、有効期間中と満了後3年間(規則の本文は5年で、当分の間3年)保存します。
  • #36協定
  • #健康福祉確保措置
  • #特別条項
  • #時間外労働
  • #勤務間インターバル
編

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